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川崎で歌舞伎町で…止まらぬ発砲事件にヤクザも困惑
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2019.01.31 06:00 最終更新日:2019.01.31 06:00
1月21日の午後6時30分ごろ、人でごった返している新宿・歌舞伎町の中心街にあるカラオケ店で、発砲事件が起こった。
「カラオケ店で男性客が慌てて階段を下りてきた。不審に思った店員が様子を見に行ったところ、血まみれの男性が倒れているのを発見し、通報しました」(警察関係者)
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腕や胸などに数発の銃弾を受けて死亡したのは、指定暴力団住吉会系の元組幹部・香山興宗さん(65)だった。
撃ったのは住吉会系三次団体組員の阿部勝容疑者(56)。犯行後、現場からバイクで逃走し、24日には警視庁が全国に公開手配した。犯行に使った拳銃も見つかっていない。事情を知る都内在住の暴力団関係者は、こう話す。
「被害者の香山さんは、10年以上前に極道の世界から引退している。阿部容疑者は、この世界に長くいる組員。覚せい剤取締法違反で逮捕され、保釈中だった。
顔見知りだった2人の間に、なんらかのトラブルがあったようだ。カラオケの部屋には、2人の話し合いを取り持つため、別の組織の組員もいたと聞いている。今回は抗争ではなく、身内同士の事件。引退した人物を撃つのは、ヤクザとしてはあり得ない行為だ」
関東で、発砲事件が相次いでいる。歌舞伎町発砲事件の数日前である1月17日、川崎市川崎区の路上で、指定暴力団稲川会系団体組員(51)と組幹部の親族女性(47)の2人が銃撃を受け、重傷を負った。現場は飲食店の目の前で、上階がマンションになっていた。
じつは、発砲の瞬間をとらえたとされる防犯カメラの動画が暴力団関係者の間に出回っていた。
動画には、組長の自宅前の路上に黒いワゴン車が停まり、先に組長が降りた後、組員と女性が、待ち伏せしていたとみられる男ともみ合いになり、男が発砲する様子が映し出されていた。組員は首の左側を撃たれ、女性は右脇腹を撃たれている。銃声は5発で、撃たれた組員が倒れ込む様子も記録されていた。
発砲した男はスーツに帽子、マスク姿で逃走。25日現在、逮捕に至っていない。ある暴力団幹部はこう話す。
「発砲事件が起こると、抗争に発展することを警戒して組から待機命令が出る。だが、川崎の事件後は命令が出なかった。稲川会内部の揉め事が原因となっているとしたら、組の内部で犯人が誰なのか、おおよその目星はついているのかもしれない」
2件の発砲事件以外にも、2018年12月6日に歌舞伎町で、住吉会系三次団体の関係先に、銃弾が撃ち込まれる事件が起きている。この事件の犯人も見つからないままだ。警視庁は焦りを感じている。
「12月の発砲事件の犯人も逮捕しておらず、1月の事件も犯人は逃走したままです。2020年の東京五輪を前に、歌舞伎町の暴力団一掃作戦は、よりいっそう拍車をかけてやらざるを得ません」(捜査関係者)
だが、暴力団関係者も困惑を隠せないという。
「身内での揉め事に道具(拳銃)を使えば、組のトップや幹部にまで責任が及ぶ。組員には、生活が厳しく鬱積した思いがある。こんなことで道具を使えば、警察がより厳しく締めつけてくるだろう。なんてことをしてくれたんだと思っている」(前出・暴力団幹部)
銃は、市民だけでなくヤクザをも困らせている。
(週刊FLASH 2019年2月12日号)