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北朝鮮のミサイルよりはるかにすごい日本のミサイル技術

社会・政治 投稿日:2016.04.03 06:00FLASH編集部

北朝鮮のミサイルよりはるかにすごい日本のミサイル技術

 

 北朝鮮が立て続けにミサイルを日本海に打ち込んでいる。では、日本のミサイル開発の現状はどうなっているのか。現在、JAXA(宇宙航空研究開発機構)で、強化型イプシロンロケットの開発が進んでいる。強化型イプシロンロケットは軍事転用可能である。その現状について、防衛ジャーナリストの桜林美佐氏が徹底取材した!

 


 

 

 イプシロンロケットは、一部メディアで「軍事転用可能」と書かれていたが、実際そのとおりである。それはけっして後ろめたいことではなく、可能性を秘めていることこそ抑止力となる。

 

 このイプシロンロケットの肝となる固体液体燃料の技術を持つのは、IHIエアロスペースだが、プロジェクトには三菱重工も参加している。

 

 わが国のミサイル(誘導武器)技術が世界的にも優れているということは、意外に日本人には知られていない。むしろ北朝鮮の「テポドン」「ノドン」といったミサイルの知識のほうが豊富なのではないだろうか。

 

 いま、喫緊の課題と考えられる島嶼防衛において、ミサイルの必要性は高い。島嶼防衛において、まず重要なのは「上陸させないこと」だ。

 

 そのためには陸地から敵艦隊を撃つ能力が重要となる。その役割を担うのが、陸上自衛隊の88式地対艦誘導弾(SSM−1)である。

 

 宮古島や石垣島などが所在する八重山列島に射程が百数十キロ近くあるとされるSSM−1があれば、尖閣諸島に敵艦隊が大挙してやってきても制圧可能だ。これこそが抑止力となる。

 

 富士学校の関係者の説明には、ごく当たり前のようにこんな言葉が出てきた。

 

「SSM−1は山の向こう側から発射され、障害物を避けて目標を目指します」

 

 対艦ミサイルでありながら、このミサイルは、山あり谷ありの複雑な日本の島の地形をかいくぐるように洋上に進出するのだという。そして目標位置を設定すれば、障害物を回避しながら最短距離でターゲットに命中する。

 

 しかも多数のミサイルが一つの目標に集中しないように、分散してロックオンする頭脳を持つのだ。

 

「米国でおこなわれた試射では100キロ先の目標に百発百中して、米軍からとても驚かれました」

 

 と関係者は振り返る。これは、開発・製造において必ずしも100%を求めず、むしろ多少のエラーは付き物という考えの外国と、絶対に失敗が許されない日本との違いがあるかもしれないが、いずれにせよ、わが国のミサイル技術は相当な信頼を得ている。

 

●着実な技術開発の先に見えてきた巡航ミサイル

 

 そもそもSSM−1は、航空自衛隊の80式空対艦誘導弾(ASM-1)の推進部を固体ロケットモーターからターボジェットへ変更し、射程を大幅に伸ばしたもので、三菱重工による日本独自の技術だ。

 

 じつは、ASM−1から派生したものは数多く、海自のP−3C哨戒機に搭載されている91式空対艦誘導弾(ASM−1C)、空自のF−2戦闘機に搭載されている93式空対艦誘導弾(ASM−2)も派生型だ。

 

 そして、SSM−1からは、イージス艦など多くの護衛艦に搭載されている90式艦対艦誘導弾(SSM−1B)などが派生している。こうした着実な技術進歩により、近いうちにトマホークのような巡航ミサイルに発展する可能性も期待されている。

 

 だが、日本では防衛費の縮小が続いてきたことから、研究開発への予算がなかなかつかない状態が続いている。

 

 もちろん、防衛省やメーカーも努力は続けている。陸自の11式短距離地対空誘導弾と空自の基地防空用地対空誘導弾の共通部分を一括調達することで約9億円のコストを削減するなど、効率化の取り組みも順調に進む。

 

 とはいえ、防衛予算の拡大には国民からの大きな反対も予想されるため、現実には一進一退が続いているのが実情だ。足踏みしているうちに、日本の防衛産業は瀕死の状態まで追い込まれ、安全保障も脅かされる事態になってしまった。

 

 こうした状況を打破するには、国民の理解をゆっくりでも着実に得ていくしかない。

 

(週刊FLASH 2013年9月17日号)


 

桜林美佐 1970年、東京生まれ。テレビディレクターなどを経て、防衛ジャーナリストに。近著に『武器輸出だけでは防衛産業は守れない』『海をひらく - 知られざる掃海部隊 -(増補版)』 『自衛隊の経済学』ほか多数

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