社会・政治
【本当の金持ちを探せ】北海道経済界のドンの自宅はまるで公園
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2016.04.08 22:16 最終更新日:2016.04.08 22:16
2005年を最後に、「高額納税者公示制度(長者番付)」が廃止されて10年以上。
米経済誌「フォーブス」などが毎年ランキングを発表してはいるが、上位に挙がるのは柳井正氏(ユニクロ)、孫正義氏(ソフトバンク)、佐治信忠氏(サントリー)など、同じ顔ぶればかりになってしまった。
しかし、そんな世界レベルの金持ちの話はピンとこない。むしろ気になるのは、地元や故郷に豪邸を構える“おらが町の孫正義”ではないだろうか。
そこで本誌は、各都道府県の「№1長者」を捜して取材行脚。証券会社や信用調査会社、企業が発表する有価証券報告書、税務統計などを精査し、大富豪たちをリストアップした(年収、資産の金額は本誌推定)。
では、さっそくリストを見ていこう。
北海道の№1長者は、言わずと知れたニトリホールディングスの似鳥昭雄氏。29期連続の増収増益を達成した家具チェーンで、シャープ本社の土地取得を発表したことでも話題になった。資産管理会社を含めれば、保有株の配当収入だけでも約13億円に上る、全国指折りの大富豪だ。
しかし最近、地元・北海道財界でもちきりなのは、伊藤組土建名誉会長・伊藤義郎氏邸の売却報道だ。現地を取材した経済ジャーナリスト・松崎隆司氏が語る。
「伊藤氏は、テレビ北海道の初代社長や札幌大学理事長、札幌証券取引所社長、NHK経営委員などを歴任した『北海道経済界のドン』。自宅は札幌駅前の約4000坪(1.4ヘクタール)で、隣接する京王プラザホテルよりも広大な、公園のような邸宅です」
その敷地のうち0.5ヘクタールを2014年12月に住友不動産に売却したと報じられたのだ。
「売却益だけで25億円はくだらない。住友不動産はその土地に地上30階、高さ100メートル級のマンションを建設する予定です」(地元不動産業者)
東北に目を向ければ、岩手県で薬王堂を創業した西郷辰弘氏、そして青森県では横浜ファーマシー前社長・松山稔氏など、地域に根ざしたドラッグストア勢の強さが目立つ。
「松山氏は北海道や東北で数十店舗展開する『スーパードラッグ アサヒ』の創業者。アイデアマンで、業界に先駆けて生鮮食品の品揃えを充実させた。1店舗あたりの売上高で日本一を達成したこともあります」(業界紙記者)
2013年にカワチ薬品(栃木県)に全株式を約40億円で売却した松山氏。現在も子会社社長として指揮をとる。
一方、資産120億円のみちのくコカ・コーラボトリング会長・谷村邦久氏は、岩手県の盛岡商工会議所の会頭だ。
「コカ・コーラの販売会社は、その地方の名士が経営していることが多いんです。宮城県の亀井家やリコー創業家の市村家もかつてはボトリング会社を持っていた。谷村家は岩手県を代表するコンツェルンで、新興製作所、谷村電気精機、みちのくキャンティーンなどの企業群を形成しているほか、邦久氏は大株主である岩手放送の相談役でもあります」(地元紙記者)
秋田県で学生服や制服を販売する辻兵の辻良之社長も、いすゞ自動車やゼロックスの販売代理店などを多数傘下に収める、地元では知らない人のいない名門。当主は代々「辻兵吉」を名乗り、良之氏も6代目を近々継ぐとみられている。
1990年代に「北関東YKK戦争」と呼ばれたヤマダ電機、コジマ、ケーズデンキの熾烈なシェア争い。1998年には日本一だったコジマ(栃木県)は、いまやビックカメラの傘下だ。
残る2社のうち、年収、総資産でケーズホールディングス・加藤修一氏を凌駕するヤマダ電機・山田昇氏の逸話は豪快だ。宮崎県出身の山田氏は、1973年、前橋市にナショナル製品を扱う町の電気店、ヤマダ電化サービスを開いた。
「アルバイトを雇い、近隣の住居すべてに定期的に手書きのチラシを投函。激安の限定商品を目当てに朝には行列ができていました。当時、山田さんはナショナル店会に所属していましたが、安売りを始めた山田さんに対し、ほかの店主が反発して、店会から抜けざるをえなくなったのです」(地元の同業者)
大型ディスカウント店へと変貌したヤマダ電機は、コジマとの競争に勝利し、満を持して東京に進出。全国区になったいまも、山田氏は前橋市に住む。
「奥さんは気さくな方で、越してきてすぐに自ら『(町会の)班長をやらせてください』と申し出て、町会費の集金や掃除などを積極的になさっていました。会長さんも会えば挨拶してくれる普通のおじさんです」(地元住民)
(週刊FLASH 2015年10月27日号)