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【下川裕治の隣のアジア】バングラデシュ世界最大の難民キャンプ

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2019.08.14 16:00 最終更新日:2019.08.14 16:00

【下川裕治の隣のアジア】バングラデシュ世界最大の難民キャンプ

「写真・阿部稔哉」

 

 バングラデシュ南部。コックスバザールから車で4時間ほどのクトゥパロンに、世界最大の難民キャンプが出現している。収容されている難民は少なくとも60万人。バングラデシュ軍の発表では100万人を超えている。

 

 ミャンマー西部のラカイン州。そこに暮らす仏教徒ラカイン族とイスラム教徒のロヒンギャが衝突。そこにミャンマー軍が介入し、多くのロヒンギャ難民が、隣国バングラデシュへと逃れた。

 

 

 今年の2月、このキャンプに入った。キャンプ内で活動するNGOの車でまわった。とんでもない広さだった。丘陵地帯を車で走ったが、延々と竹を編んだ急ごしらえの仮設住宅が続く。難民キャンプというより、街がつくられつつあるようにも見えた。

 

 キャンプ内には大きなマーケットがいくつもある。多少の資金をもっていた難民たちが開いた店がひしめいている。彼らはキャンプの外から品を仕入れる。キャンプの外側にあるクトゥパロンの村にも、巨大な問屋街が誕生していた。

 

 難民キャンプは儲かる……そんな噂がバングラデシュを駆け巡り、問屋街は増殖していた。

 

 キャンプ内の診療所の医師は、生まれる子供の多さを危惧する。1日約60人。年間2万人を超える。仮にキャンプの人口を60万人とすると、鳥取県の人口に相当する。同県で生まれる子供は年間4400人ほどだ。

 

 性的暴力を受けても、イスラム教では中絶は禁止されている。一方で、厳しいキャンプ暮らしの支えに子供を欲しがる女性も少なくないという。

 

 難民キャンプは通常、母国の政権が変わると収束していく。しかしロヒンギャ難民問題は、ミャンマーというより、ミャンマーの一地方の問題だ。最短でもあと5年はいまの状態が続くといわれている。

 

◯下川裕治
 旅行作家。1954年、長野県生まれ。慶應義塾大学を卒業後、産経新聞の記者を経てフリーに。近著に『新版「生きづらい日本人」を捨てる』(光文社知恵の森文庫)。

 

※下川氏が、クラウドファンディングでバングラデシュの小学校校舎修繕プロジェクトを進めています。詳細は以下で。
「バングラデシュのこどもたちに安全な教育環境を コックス・バザールの校舎修繕プロジェクト」

https://a-port.asahi.com/projects/sazanpen/

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