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【下川裕治の隣のアジア】カシミールで見た国旗セレモニーの愛国心社会・政治 投稿日:2019.08.19 16:00

【下川裕治の隣のアジア】カシミールで見た国旗セレモニーの愛国心

 

 インドとパキスタンの領土紛争が続くカシミール地方。インドがジャム・カシミール州の自治権を剥奪したことから、再びきな臭くなってきている。

 

 インドとパキスタンの間には、ひとつの越境ポイントがある。インドのアムリツァルとパキスタンのラホールを結んでいる。

 

 

 この国境では、毎夕、フラッグセレモニーが行われている。
フラッグセレモニーとは、両国の国境警備兵が、夕方、国境が閉まるときに、掲げた旗をおろす儀式だ。このイベントが中止になったという情報は入ってないが、実はこの儀式、大変な盛り上がりを見せるのだ。

 

 2018年6月、パキスタン側からこの国境を越えた。パキスタン時間の15時少し前にイミグレーションに着いた。すると職員から、「あと2分で国境が閉まる。急ぎなさい」といわれた。出国書類もそこそこにスタンプを捺してもらった。

 

 妙な通路を歩いた。そこはスタジアムのようになっていた。左右に30~40段のスタンドがある。あとでそこがフラッグセレモニーの会場だとわかった。

 

 インドに入国し、すすめられてセレモニーを見た。とんでもない数の観客がスタンドを埋めている。話では8000人を超えているとか。パキスタン側にもかなりの人がいる。

 

 インド時間の夕方18時、セレモニーがはじまった。隣との話ができないほどの大音響が会場を包む。そして観客はみな「ヒンドゥスタン、ヒンドゥスタン」と大声で叫ぶ。ヒンドゥスタンとはインドのことだ。僕が歩いた通路を、インドの旗をもった女性が走る。

 

 やることはそれだけだった。兵士は隊列を組んでセレモニーをこなしていく。いってみれば、インドとパキスタンのサッカーの試合に熱狂するようなものだった。

 

 しかしサッカーの試合がない。ただ叫ぶだけ。ものすごく単純なナショナリズム……。同じことがパキスタン側でも行われているわけで、それを考えると頭が痛くなってくる。

 

 暑い時期だった。気温は40度を超えている。そのなかでただ叫び続ける。インドではこのセレモニーの人気が高まり、遠くからツアーバスを仕立ててやってくるのだという。

 

◯写真・文/下川裕治
 旅行作家。1954年、長野県生まれ。慶應義塾大学を卒業後、産経新聞の記者を経てフリーに。近著に『新版「生きづらい日本人」を捨てる』(光文社知恵の森文庫)。

 

※下川氏が、クラウドファンディングでバングラデシュの小学校校舎修繕プロジェクトを進めています。詳細は以下で。
「バングラデシュのこどもたちに安全な教育環境を コックス・バザールの校舎修繕プロジェクト」
https://a-port.asahi.com/projects/sazanpen/

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