「停電と断水が続いているときに組閣があって、ニュースのトップはいつも小泉進次郎。こんな大変な時にまた進次郎か……と嫌気が差しました」
そう語るのは、2週間近く停電と断水が続いている千葉県君津市鹿野山地区の住民だ。
9月9日に千葉県に上陸した台風15号は、同県南部を中心に深い爪痕を残した。君津市にある「日本製鉄」の君津製鉄所の第一製鋼工場では、75mある煙突の、上部50mが折れて倒れた。
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君津製鉄所の担当者は、「鋼鉄製で、風速40メートルにも耐えられる計算なのですが……」と驚きを隠さない。折れたのは、「(生産過程で)出てくるガスを、無害化して大気に放散するための煙突です」(日本製鉄広報部)という、君津製鉄所第一製鋼工場の燃焼放散塔だ。
同工場は自動車などに使われる製品を生産しているが、いまだに復旧の目途は立たないという。世界屈指の鉄鋼メーカーに与えた影響は大きく、「今後の業績への影響は不可避」(経済部記者)というほどで、すでに経済界への影響も出始めている。
布良地区では、住民とボランティアで瓦礫置き場を設置
とくに復旧の遅れが目立つのは山間部だ。倒木により、道路の寸断、電線の切断が発生していることが大きい。本誌記者が訪れた館山市布良(めら)地区では、いたるところに倒壊した家屋があるが、自衛隊の隊員や車両は見られない。住民の50代女性が、途方に暮れていた。
「自衛隊の人も車も、来やしないねえ。台風が来て、その次に雨が何度か降って……。3回めの雨で、家の中が水浸しになった。テレビでも、布良のことを全然やらない。避難先で『大丈夫かな』と思っていて、戻ってみたら大変なことになっていました」
同地区の別の家屋では、「ブルーシートを張っても、風や雨が流れ込んでしまう」(家主の親族)という。畳はカビだらけだった。
まさに、“見捨てられた地” となっていたのだ。
本誌は続けて、房総半島の最南端・南房総市に入った。上の写真は、南房総市白浜町の女性宅。柱材に鉄筋が使われていたにもかかわらず、倒壊してしまった。
また同町で、自宅を片づけていた70代男性はこう嘆く。
「台風で屋根や壁が崩れて、うちは半壊状態。これなら地震で潰れたほうが、まだ片づけようがある。
自宅の撤去作業を市に相談したら、『費用は出せない』と。県もだめ。森田(健作)知事は、3期もやっているのに、なにもしてくれやしないんですよ」
地元住民の不安をよそに、小泉進次郎環境相(38)が南房総市の災害廃棄物仮置き場の視察をおこなったのは、9月16日のことだった。
「被災地を忘れず、住民から『もう大丈夫です』と言われるまで仕事をする」
こう殊勝に述べ、廃棄物の広域処理を進めるなどの方針を示した。しかし、南房総市に住む男性は、こう憤激する。
「進次郎は、SPを4、5人も引き連れていたらしいね。でも、来たからってどうってことはない。こんな時期に来るなんて、たんなるパフォーマンスでしょ。お年寄りと握手したりしてさ。あれじゃ、千葉を見捨てて内閣改造した安倍(晋三)首相以上にひどい」
進次郎氏の早期の被災地入りには、自民党内部からも疑問の声が上がっている。
「電力や水道などのライフラインの復旧が先なのに、環境相がいま行っても仕方がない。災害廃棄物の問題は、まだ先の問題。被災地の方に『頑張って』と声をかけていましたが、災害を政治利用していると言われても無理もないでしょう」(自民党中堅議員)
さらに9月19日、当選1回にして “スピード出世” した今井絵理子・内閣府政務官(36)も、遅ればせながら動き出し、富津市の被災地を視察。だが、「派閥の論理で起用されただけだ」と指摘するのは、政治アナリストの伊藤惇夫氏だ。
「今井さんが所属する麻生派の参議院議員で、副大臣と政務官をやってないのは彼女だけ。『派閥の割り当て枠』で起用されたにすぎません」
身内からも「経験が浅い今井が行ってもしょうがない」 (自民党幹部)と声が上がる始末で、被災地を舞台にした “政治ショー” 化もはなはだしい。10月には、国民生活を大きく左右する消費増税が控えている。
前出の白浜町の70代男性は、こう肩を落とした。
「組閣をやったって、その間にこっちは電気が消えて、暗闇で懐中電灯つけて、水も出ない。食えるか食えないかでやっているのに……。(消費税が)2%上がったって、助けてくれやしない」
怒りの声は、安倍政権の閣僚たちに届いているのか。
(週刊FLASH 2019年10月8日号)