濱田浩一郎(はまだ・こういちろう)
1983年生まれ、兵庫県相生市出身。歴史学者、作家、評論家。現在、大阪観光大学観光学研究所客員研究員。現代社会の諸問題に歴史学を援用し、解決策を提示する新進気鋭の研究者。著書に『日本史に学ぶリストラ回避術』『現代日本を操った黒幕たち』ほか多数
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2016.05.20 17:38 最終更新日:2016.05.20 17:38
大阪観光大学観光学研究所客員研究員の濱田浩一郎氏が、AKB48総監督だった高橋みなみのリーダー力について考える。
5月19日、元AKB48の高橋みなみが、パーソナリティーを務めるラジオ番組で「本日発売の週刊誌や新聞でお騒がせしてすいません。きょうも頑張ります!」と話した。
お騒がせの内容とは、この日発売された週刊誌で15才年上の男性とのデートが報じられた一件。
御存知のとおり、AKB48は「恋愛禁止」。だが、4月8日に卒業した高橋が恋愛するのはもちろん自由である。
高橋がAKB48に在籍したのは14歳から24歳まで。在籍中は言うまでもなく、それ以前も彼氏はおらず、「目黒川ぞいを手をつないで歩きたい!」と恋愛へのあこがれをテレビで語ったこともある。
私が見るところ、総じて世論は恋愛報道に好意的だった。「あれだけ総監督として頑張ったんだから、全然問題なし!」との反応が多いように感じられる。
高橋は、2015年末、『リーダー論』という本を刊行している。リーダーとしての考え方、立ち居振る舞い方を書いた自伝的な本で、そこにはビジネスや政治の世界でも十分に役立つ情報がてんこ盛り。
たとえば、高橋は、総監督になる前からグループ全体をよく見ていた。そのことを「あの頃は、ずっと計算式を解いていた感覚」と表現している。
「あの子とあの子が喧嘩している」「あの子とあの子が仲がいい」ということを、楽屋を見ながら把握し、どうすればみんなが仲よくまとまっていけるかを考えていたのだ。
本人はそれを「自己満足」と書くが、正直、凄いとしか言いようがない。
また、コミュニケーションの仕方も意識的に変えていった。具体的には挨拶の仕方だ。楽屋に入ったとき、一人一人、その人に向けて挨拶をしたという。まさに気配りにあふれた行為である。
AKB48のなかで“歴女”として名高い田名部生来が、卒業したばかりの高橋みなみを「野心家でもあると思いますし、みんなが目指すところの人という存在でもある徳川(家康)かな」と評していた。
家康は、長らく人質生活で辛酸をなめていただけに、人材の評価に細心の注意を払ってきた。その家康に、こんな名言がある。
「主人に諫言するのは、一番槍よりも難しい」
合戦で一番槍を果たせば、それはもっとも単純な評価となる。しかし、戦国時代とはいえ、それだけで評価するわけではない。
間違った道に進もうとする主君(や組織)をどういさめ、どう正しい道に導くのか。下手なことを言えば自分が殺されるわけだから、部下も真剣になる。とはいえ、もしかしたらその言葉には、私利私欲が隠されているかもしれない。
組織の運営で、もっとも重要なのは「耳が痛い言葉」だが、それは言う方も言われた方も、いちばん難しい判断を迫られるのだ。
大人数のAKB48でも、さまざまな衝突があったことは想像に難くない。そうした状況をうまくまとめ上げた高橋みなみの手腕は、やはり恐るべし、と言わざるをえない。
高橋は、リーダーの仕事を、メンバー同士やメンバーとスタッフを結びつける「つなぐ人」と言っている。
リーダーとしてではなく、1人のアーティストとして新たなスタートをきった高橋みなみ。今後、ファンとどのような関係をつないでいくのか、楽しみである。
(著者略歴)
濱田浩一郎(はまだ・こういちろう)
1983年生まれ、兵庫県相生市出身。歴史学者、作家、評論家。現在、大阪観光大学観光学研究所客員研究員。現代社会の諸問題に歴史学を援用し、解決策を提示する新進気鋭の研究者。著書に『日本史に学ぶリストラ回避術』『現代日本を操った黒幕たち』ほか多数