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【本当の金持ちを探せ/西日本編】 ギリシャ海運王なみのエヒメオーナー

社会・政治 投稿日:2016.05.27 15:43FLASH編集部

【本当の金持ちを探せ/西日本編】 ギリシャ海運王なみのエヒメオーナー

写真:AFLO

 

 日本電産会長兼社長の永守重信氏はある講演で「京都の経営者はみんなケチでっせぇ」と笑わせ、「ムダなことには金を使わんけど、企業の経営には大金をかけなあかん、『ここぞ』というところが必ずあります。その勘どころに備えて、どうでもええことでは金を惜しめということでんな」と締めた。

 

 買収した企業の社員寮があまりに貧相なので、10億円を拠出し、建て替えたことも。自社製品であるモーターの効率を1パーセント上げるためには、「クーラーなんか、がんがんかけてもええ」。「世界の電力の半分はモーターが消費している」が持論だ。

 

 古くから海運業が栄えた瀬戸内海のなかでも、愛媛県今治市は別格だ。

 

「『エヒメオーナー』と呼ばれる家族経営の船主会社が70社以上あり、その規模は香港やギリシャの海運王とも肩を並べるほどです」(経済ジャーナリスト・松崎隆司氏)

 

 その多くが従業員数人の零細企業だが、タンカーや貨物船など約900隻の船主となり、日本郵船や商船三井などにレンタルしている。その資産総額は2兆円を上回るという。

 

「なかでも、従業員わずか29人で、6350個積みの大型コンテナ運搬船やLNG(液化天然ガス)運搬船など数十隻の大型船を保有する正栄汽船がリーダー的な存在です。じつは、正栄汽船の社長である檜垣幸人氏は、日本最大の造船メーカーである今治造船の社長を兼務しているのです」(同)

 

 今治造船は年間89隻を造船し、売上高は3783億円(いずれも2015年3月期)だ。幸人氏は創業者の孫。各国の大手海運会社幹部たちは、今日も幸人氏への面会のため今治を訪れる。

 

 今治の対岸にあたる広島県福山市も造船の町だ。なかでもツネイシホールディングスは造船、海運のほかホテルや遊園地、エネルギー事業も展開する名門だが、その常石一族に勝るとも劣らない大富豪が、同じ福山市にいる。「スーツ販売着数世界一」のギネス記録を持つ青山商事の一族だ。

 

「1964年、広島県府中市の自宅を改装し、現社長の青山理氏の父、五郎氏が紳士服店を開業しました。その後5年で売り上げ1億円を達成。モータリゼーションの時代を予期し、郊外に進出してから快進撃が始まりました」(同)

 

 1991年3月期には、それまで首位だったタカキューを抜き、日本一に。そこから世界一まで、わずか7年で駆け上がった。

 

 三重の諸戸一族と並び称せられるのが、島根県の田部家。田部長右衛門の名前を25代にわたって引き継いできた山陰地方の名家で、23代目は竹下登元首相最大の支援者としても知られた。現当主の真孝氏も2015年11月に襲名している。

 

 幕末から明治にかけ、2万5000町歩(東京ドームの5300倍以上)の山林を所有。「田部家の山林を通らなければ、日本海から瀬戸内海へは出られない」といわれる、山陰最強の一族だ。

 

 九州でいちばん有名な経営者といえば、今年、社長の座を長男の旭人氏に譲ったジャパネットホールディングス創業者の高田明氏だろう。退任が報じられた2014年11月、アポなしで訪れた本誌記者の携帯電話が鳴った。高田氏だった。

 

「わざわざ佐世保まで来てくれて、会わんわけにはいかん」と、取材に応じてくれたのだ。

 

「後継者が育ったら経営を譲ることはずっと考えていました。そして長男の旭人も社員も大きく育ったいま、退任することを決めたんです」(高田氏)

 

 現在も同社の大株主で、約3億円の配当金を得ていると推定されるが、飾らない人柄は街中から聞こえてきた。毎年8月に高田氏の故郷である平戸市で花火大会が開催される。

 

「高田君はポケットマネーで100万円ほど寄付してくれます。そして時間があれば平戸まで来て、同級生たちと酒を酌み交わすんですよ。偉ぶることがなくて、ポロシャツにスラックスという軽装で丸椅子に座ってワイワイやっています」(同級生)

 

 47都道府県の「№1長者」は、いわば“おらが町の代表選手”。なんとなく誇らしい気持ちになるものだ。

 

(週刊FLASH 2015年10月27日号)

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