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ハロウィンで盛り上がる「スティーブ・ジョブズ邸」に行ってみた

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2019.11.02 16:00 最終更新日:2019.11.02 16:00

ハロウィンで盛り上がる「スティーブ・ジョブズ邸」に行ってみた

ジョブズ邸のテーマ

 

 山火事で、カリフォルニア全州に非常事態宣言が出されてから5日目、今年もハロウィンがやってきました。

 

 強い季節風が南下するとともに、州内の大規模な火事は南部が中心となり、北部は煙の流入も減ってきたため、シリコンバレーの子供たちは例年どおりにハロウィンを楽しみました。

 

 

 アメリカで、ハロウィンは子供たちの大祭典。一番の目玉は夜に近所を回ってキャンディをもらうトリック・オア・トリートです。

 

 それぞれの街に、地元で有名な家やストリートがあって、日が落ちる頃にバスケットを持ってキャンディをもらいに行きます。キャンディをもらうのはほとんどが中学生以下。

 

 バージニア州には15歳以上がトリック・オア・トリートをすると250ドルまでの罰金という条例の残っている市もあるほどです。

 

 子供たちはといえば、朝は幼稚園や学校でハロウィンパレード。コスチューム姿で登校する子が多く、先生はもちろん、送り迎えの親も仮装していることがあるので、学校は動物園のような風景。

 

 パレードの後は、多くのクラスでパーティーをします。そして、学校が終わり帰宅すると、夕方はまたパーティーを開催する家庭も。

 

 日の落ちる頃から、子供たちはバスケットを持ってトリック・オア・トリーティングで家々を回ります。「トリック・オア・トリート(もてなさないといたずらするぞ)」と言うと、家の人がキャンディをひとつくれるのが典型的なパターン。

 

 小さな子供たちにとって、ふだん出歩かない暗い道を歩き、不気味に装飾された家の玄関をノックしたり、知らない人に話しかけたりするのは勇気がいります。キャンディをもらうことで達成感を得て、またきちんとお礼を言う習慣が身に付くのです。

 

 キャンディをあげる方も自分たちがそうやって育ってきたので、コミュニティ全体で育児をするような感覚で楽しみます。しかし、 最近のシリコンバレーでは、その風景がどんどん変わってきました。

 

 IT長者が増え、家の装飾や配るキャンディが豪華になり、アトラクション化してきているのです。

 

ジョブズ邸で配られるキャンディ

 

 ヤフー元CEOのマリッサ・メイヤーの自宅はハロウィン名所のひとつ。大型の箱入りキャンディやぬいぐるみが配られます。出産直後には本人が赤ちゃんを抱きながら、押し寄せる子供たちにキャンディを配ってくれたこともあります。

 

 数年前ならちょっと並べば入れたところが、今年は列がブロックの端まで伸び、新記録を更新。車で15分ほどのレッドウッドシティから来た家族は1時間半待ったそうです。

 

 フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ宅に派手な装飾はありませんが、人々が押し寄せるため、夫婦で直接キャンディを配った年もありました。ただし、写真撮影は固くこばんでいたようです。今年は家の前に10メートルほどの列ができていました。

 

 その他にも、大きな板チョコをくれるCEOの家、簡単なおばけ屋敷を作っている家、個性的なもてなしをする家などがあり、地元の子供たちは要領よく回って楽しんでいます。食べきれないほど集めてしまったキャンディは、学校などで集めて軍隊等に寄付するシステムがあります。

 

 ここ数年、派手になり多くの人を惹きつけているのがスティーブ・ジョブズの家です。ジョブズは生前、自ら玄関先で子供たちをもてなし、小さなぬいぐるみなどを配っていました。

 

 彼の亡き後も家を訪れる子供たちは減らず、むしろ増え続けたため、このあたりは警察が車を通行止めにして歩行者天国にするようになりました。

 

 庭はテーマパークのように飾り付けられ、劇団員を雇い、並んでいる子供たちを飽きさせないような仕掛けがあります。それもハロウィン当日に作り上げ、翌日には撤収してしまうという一晩だけの饗宴です。

 

劇団員

 

 噂を聞きつけたトリック・オア・トリーターが遠くから駆けつけ、あたりが暗くなる前から列ができ、キャンディを手に入れるまで1時間以上かかります。何組かに話しかけましたが、英語を話さない家族も多数。日本人もけっこういます。もちろん近所の子供たちも列を作っていました。

 

 目と鼻の先にあるグーグル創業者ラリー・ペイジの家は、以前マジシャンを呼ぶなど派手に演出していたのですが、今年はアトラクションをやめ、敷地の外でキャンディを配るにとどめたようです。

 

ジョブズ邸に毎年作られるタワー

 

 ジョブズの隣の家は庭先にステージを作り、バンドが生演奏。向かい側の家の前ではストリートダンスが時おり披露され、このエリアだけ、まるで遊園地かコンサート会場のような音と熱気です。

 

 以前は子供もいないのにバスで駆けつけて、キャンディだけもらって帰る人たちに批判が出ていたものですが、ここまで来ると、キャンディよりアトラクション、大人も十分に楽しめます。

 

 人の集中するエリアができる一方で、少し離れた近所の家は訪れる子供たちがめっきり減り、勢力図が変わってきました。

 

 スティーブ・ジョブズの近所の家では、1000個単位でキャンディを揃えなくてはならないのと対照的に、少し離れると訪れる人もまばら。以前は何百個とキャンディを用意した家も、1袋用意すれば十分という声もあります。

 

 変化の早いシリコンバレーの経済状況と同様に、トリック・オア・トリートもその年ごとの状況を考えた戦略が必要になっているのです。

 

(取材・文/白戸京子)

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