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北朝鮮の不法侵犯と対峙「海上保安庁」超過酷部隊に密着
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.01.07 11:00 最終更新日:2020.01.07 11:00
やむことがない北朝鮮の不法侵犯。その最前線で警戒活動を続けるのが、「海上保安庁第九管区 海上保安本部(以下・九管)」だ。洋上で長期間の任務遂行が求められる過酷な職場だが、現場にはひたむきに訓練、任務に取り組む男たちがいた――。
12月初旬。例年なら、この時期は荒れることが多い新潟港だが、この日は、風も波も穏やかだった。記者が乗り込んだ巡視艇「ゆきつばき」(全長約20m、総トン数約26トン)が、港内をゆっくりと航行していた。
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海上にすさまじいモーター音が響き渡る。九管による、海上訓練が始まったのだ。黒い2艘の高速警備用ゴムボートが、猛スピードで接近してくる。高速で逃走する容疑船を追跡、捕捉する能力をもった警備艇である。接近と旋回を繰り返し、そして、「ゆきつばき」に接舷して停まった。
「実際の警備活動は、武器を携行した警備隊員が容疑船に乗り込み、犯人を制圧します」(九管・警備課課長補佐、以下同)
海上保安本部は全国に11管区あり、九管は、新潟県、富山県、石川県の総延長約1280kmの沿岸と、その沖合海域などを管轄する。
管内では、1999年に能登半島沖不審船事件が発生し、過去には北朝鮮による拉致事件が相次いで発生した。近年は、新潟港から約500kmにある「大和堆」周辺で、北朝鮮漁船の違法操業が問題となっている。
北朝鮮漁船の取り締まりにあたっているのが1000トン型巡視船「さど」(全長約92m、総トン数約1250トン)である。
「これから放水を開始します」
巡視船「さど」からの船舶無線が告げた。外国漁船に警告しても応じない場合、放水銃が威力を発揮する。山なり放水が始まった。離れた場所で撮影するカメラマンに、水しぶきが降りつけた。
「水量は申し上げられませんが、たとえれば、25mプールがすぐに満杯になるようなものだと考えてください」
直接放水の威力は、さらに強力だ。放水が直撃した海面が泡立ち、高く盛り上がった。
「直接放水が、北朝鮮の木造船に当たれば、船が破壊されるほどの威力があります」
「さど」には火力となる30mm機関砲も装備されている。
「実弾を入れた状態で、待機することもあり得ます」
機関砲はまだ使用されたことはない。だが、今後も使用されないという保証はない。
海上訓練を終え、港内に停泊した巡視船「さど」は、海上にいるよりもずっと大きく見えた。同船の航海長による案内で船内をまわる。
「さど」の心臓部が操舵室だ。船を操舵する舵を真ん中に、電子チャート(海図)、赤外線監視装置、レーダーなどの機器が並ぶ。
「操舵室には、遠くの対象船などを監視することができる装置が設置されています。放水銃の操作も、船内から遠隔でおこなうことができます」(航海長、以下同)
出航すれば乗員36名が、ときには数週間にもおよぶ洋上生活となる。船内には乗員の居室のほか、食堂、浴室、洗濯室などの生活空間がある。なかでも、目を引くのは制圧術(逮捕術)訓練場だ。
「海上保安官にとって、制圧術の訓練は怠ることができません。ここで日々、訓練をおこないます。訓練場は、多目的災害対応室を兼ねていて、災害が発生すれば天井が開き、支援物資を置くスペースになります。災害支援も、海上保安庁の重要な使命なのです」
(週刊FLASH 2019年12月31日号)