公園には、「新型肺炎が問題化したあとに個人旅行でやってきた」という、中国人観光客が複数いた。北京から家族3人で来た30代男性は、こう話す。
「春節休みに娘の誕生日を祝うため、中国国内を旅行するつもりでした。でも、国内の移動が制限されたので、やめました。娘は日本の文化が大好きだし、急遽日本に来ることにしたんです。日本に向かう飛行機は、すいてましたが」
また、上海在住の30代女性は、武漢市内に残った友人から聞いた話をしてくれた。
「少し前までその友人は、『買い物以外は、ずっと家にいるしかない』と話していました。ですが、1月29日には、店も開いて、食料品も買えるようになったそうです。政府が事態をコントロールできるようになったみたい。
でもまだ、病院はいっぱい。『友人の父が体調を崩して病院に行ったら、受診を希望する人でごった返していて、諦めた』と。『とにかく、医療機関をなんとかしてほしい』と話していました」
2002年から2003年の「SARS(重症急性呼吸器症候群)」流行時に、後手後手の対応が世界から批判された中国政府。民主化デモが続く香港の人々も、中国政府への警戒感を強めている。
「SARSのときは、香港を中心に8000人以上が感染しました。当時、『中国政府の情報隠蔽が事態を悪化させた』と多くの香港市民は思っていて、今回も激しい不信感をあらわにする人が多い」(香港に駐在する日本人ビジネスマン)
内科医で医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏は、「今回の中国政府の対応は、従来と異なる」と指摘する。
「決定的に違うのは、情報公開のスピードが早いこと。中国疾病対策予防センターが、12月中旬の時点で、新型コロナウイルスが『ヒト―ヒト』間で感染することを認め、『肺炎の蔓延は政府の問題』とした論文を、アメリカの医学誌にも出しているんです」
日本国内では、すでに3次感染の可能性が浮上。国外からのウイルス封じ込めに、限界が見え始めている。
「日本政府は、『国内にウイルスが入っていない』という前提で、“水際” で食い止めようと対策を取っていますが、もう遅い。治療法がない現状では、感染者を早期に見つけられる検査体制を整えたうえで、感染者への対症療法を取るほかありません」(上氏)
日本社会が隠していた亀裂が次々に露呈している――。
(週刊FLASH 2020年2月18日号)