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外出禁止のアメリカで奮闘する、日本人レストラン経営者たち
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.03.25 11:00 最終更新日:2020.03.25 11:00
アメリカの新型肺炎の患者数が4万人を超え、中国、イタリアに次ぐ規模となっている。
トランプ大統領はニューヨーク州やカリフォルニア州などに州兵やFEMA(緊急事態管理局)を派遣、1000の病床を持つ世界最大の海軍病院船の配置も決め、まるで戦争のような様相を呈してきた。
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外出禁止令の範囲も拡大し、様々なビジネスが急激な変更を余儀なくされている。
生活に必要なサービスのみが営業を許され、スポーツ関連や美術館、小売店などは閉鎖せざるを得ない。そんななか、テイクアウトのみの営業を許可されているレストランで話を聞いてきた。
シリコンバレーで5店舗の人気店を経営する小澤邦子さんは、今回100名近くの従業員の解雇を余儀なくされた。
日本では1人のウェイトレスがオーダーを取ってから配膳、片付け、他の担当者テーブルの注文まで受け付けたりするが、分業が基本のアメリカでは、シェフ、会計係、汚れた皿の片付け役とそれぞれ複数の人間で分担する。ウェイトレスも自分が担当しないテーブルの用事は基本的に受け付けない。
大規模なレストランになると全体を見回してスタッフに指示を送るフロアマネージャーなどの役職が加わり、それぞれがサービスを提供する。今回のように客が店内で食事できなくなると、フロアマネージャーなどの役職は即失業だ。
小澤さんは、外出禁止令がいつまで続くか先行きが見えないなか、「従業員を足止めするわけにはいかない。早めに失業保険の申請をし、次の職を探してもらった方が彼らのため」と話す。日本から呼んでビザのサポートをしている料理人8名だけを残し、今は4店舗で営業を続けている。
テイクアウト用に調理法を一部変えたりしながら対応しているが、売り上げはかつての5〜10%だという。現在は家族総出の週7日勤務で乗り切ろうとしている。
レストランが一斉にテイクアウトになったことから、持ち帰り用の容器も品薄となり、購入が困難になってきた。それでも、今後の経済や顧客の動向などを予想しながら、将来を見据えた店舗やメニューを考えている。
バークレーで和食店を経営する斎藤大樹さんは、違ったアプローチで対応している。
急な外出禁止令で、寿司屋などに魚を卸す中間業者が大量の在庫を抱えているのを見て、あえて大量に仕入れ、採算度外視で弁当販売を始めたのだ。海鮮丼は上からご飯が見えない刺身の量で、1日に切る刺身の数は1万を超えた。
SNS時代だけに情報は広く拡散し、彼の想いを汲んだ人たちが遠方からも弁当を購入しに来てくれている。従業員も弁当の対面販売を支持。店の家賃の支払いもなんとかなりそうだとのこと。ただし、今後は周辺の漁師が漁に出なくなることも予想され、不確定要素が多い。
アメリカのレストランの賃貸契約は5年、10年と長期なものが多い。営業する際に取得しなくてはならない許可も多く、時間と手間がかかるうえ、店を借りたテナントは改装費に数十万ドル以上の投資をする傾向にある。すでに都市部の賃貸料は高騰しきっており、不景気だからとすぐに店を閉めるわけにもいかない。
最初の外出禁止令は先週出されたばかりで、失業者の数や経済への影響はまだはっきりとしない。先週木曜に発表された全米の失業者の数は28万人強、前週より7万人の増加で、リーマンショック以来の伸びとなっている。
その後、ワシントン、ルイジアナやニューメキシコ、ウェストバージニアと外出禁止令が広がり、1億5800万人が影響を受け始めた。経済への影響も計り知れない。(写真・文/白戸京子)