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海自最速「はやぶさ」は北朝鮮の不審船を追う最終兵器
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2016.07.17 10:00 最終更新日:2016.07.17 10:00
6月15日未明、中国海軍の軍艦が、鹿児島県口永良部島周辺の日本「領海」に侵入した。尖閣周辺の接続水域への「無法侵入」に続き、緊張が高まった。日本の海の守りは万全なのか。
「日本近海における警戒と監視、不審船などへの対処がおもな任務です」
海上自衛隊・舞鶴地方隊第2ミサイル艇隊の鳥羽弘太郎艇長が誇らしげに語る。艇長が指揮するのは、「不審船キラー」の異名を持つミサイル艇「はやぶさ」だ。
最大の特徴は、時速44ノット(約81km)という海自保有艦船では最速のスピード。加えて、艦対艦ミサイル、76mm速射砲、12.7mm機関銃2門という火力を持つ。 「はやぶさ」の抑止力を確かめるべく、本誌女性記者・写写丸子は母港の京都府・舞鶴港に向かった――。
「うわ、狭い!」
艇内に「潜入」した写写丸子は思わず口にした。「はやぶさ」はスピード重視という任務の性質上、小型であることが宿命づけられている。
そのため、艇内も驚くほどコンパクト。ステルス性に配慮したため、外壁が傾斜した部分があり、なおさら狭く感じる。風呂はなく、シャワー室で汗を流すだけ。ベッドも狭い。
積める物資に限りがあるため、食料も多くは積めない。長期間洋上に出ることは想定していないのだ。食事は、真空パックのご飯と冷凍食品のみ。電子レンジとポットのお湯で調理する。
44ノットの高速になると、船体の揺れは激しくなる。護衛艦のベテラン乗員でも、初めて船酔いを経験するほどだ。
「停止状態から急発進させると、シートに押さえつけられるようなG(重力)を感じる。ほかの船では経験できない感覚です」(鳥羽艇長)
「はやぶさ」は、高速で移動する北朝鮮の不審船対処能力を付与されて建造された。とはいえ最近では、伊勢志摩サミットの海上警備に出動することもあった。緊張が解けない東アジア情勢。「はやぶさ」の出番はあるのか。
「尖閣諸島が侵攻されるとしたら、攻略部隊とは別に佐世保、九州方面に攪乱部隊が来るだろう。もしそうなれば、ミサイル艇がいち早く赴き、敵部隊の接近を阻止する。このときに、艦対艦ミサイルの有効性が出るわけです」(軍事ジャーナリスト・柿谷哲也氏)
だが、「はやぶさ」が敵に向けてミサイルを撃つということは、自衛隊が「防衛出動」というもっともハイレベルの行動を取っていることを意味する。そうした局面では、乗員の責任も重大だ。
「乗員数が限られるので、乗員は少数精鋭。みな一人で何役もこなせる知識と技量があります。艇内の環境は非常に厳しいですが、『はやぶさ』に乗船することは名誉なこと。乗員の団結力も非常に高いです」(鳥羽艇長)
有事に「一番槍」となる「はやぶさ」。海の向こうから忍び寄る脅威を韋駄天となって打ち砕く!
(週刊FLASH 2016年7月5日号)