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新型コロナで「天気予報が不正確になる」意外な理由とは
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.04.11 16:10 最終更新日:2020.04.21 22:05
新型コロナウイルスは、思わぬところにも悪影響を及ぼしている。
WMO(世界気象機関)は4月9日、パンデミックにより気候変動や天気予報の元となるデータが不足し始めていることを明かした。
気象データは、世界中に1万以上ある観測地点や、航行中の船や飛行機、海洋に浮かべられたブイ、気象衛星などから情報を集めている。さらに世界中およそ1000カ所で、ラジオゾンデと呼ばれる風船を高さ30キロほどまで同時刻に上げて、上空の大気観測をしている。
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こうした共同作業によって得られたデータをコンピューターに入力し、天気予報を作成するのだ。予報精度を上げるためには、最初の観測データをなるべく正確に大量に集めることが重要だ。だが、新型コロナの影響で風船を上げる余裕がなくなり、中南米やアフリカなどのデータが減少しているという。また、機械に不具合が出た際の修理スピードにも影響が出そうだと危惧されている。
そして、いま最も深刻なのが、世界的な飛行機の減便によるデータ不足だ。
気象予報士の白戸京子さんがこう話す。
「飛行機では主に、風や温度の情報を収集します。時には湿度や機体の揺れの原因になる乱流の情報も報告されているんです。飛行機は、天気の解析に重要なジェット気流の近くを飛びますし、地上に観測点のない空白域のデータを埋めるのに大きく役立っているんです。WMOでは1日に80万もの航空データを集めていたのですが、ここ2週間でその数が激減しているようです」
飛行機を追跡するアイレオン社がCANSO(民間航空交通管制業務提供機構)と共同発表した資料によると、1月には1日平均10万便だったのが、4月4日には3万2000便に減っている。顕著に減ったのは、大胆な移動制限をしているヨーロッパだ。
「ヨーロッパの気象機関・中期予報センターは、飛行機の減便が予報精度に悪影響を及ぼしそうだと異例の発表をしています。特に1週間予報の影響が大きく、24時間先の風と気温の予報精度は、最大で15%落ちるとしています。
一方、アメリカは、911テロ直後、飛行機が飛ばなくなって苦労した経験を持っていますが、必要であれば空軍のパイロットなどによる情報収集ができるため、今のところ予報に大きな影響はないとコメントしています。レーダーや衛星からの情報でカバーできる部分も多いのでしょう」(白戸さん)
日本もこうしたデータを予報に活用している。特に台風や梅雨前線の予報は海上データが重要となる。パンデミックによる影響が長期に渡れば、日本の天気予報にも影響が出るかもしれない。