●2020年セ・リーグは森下優勢……新人王の分岐点は?
1990年代までは、先発とリリーフを兼ねるルーキーも珍しくなく、その場合は防御率で負けても、両方をこなした投手が選ばれている。1989年のパ、1997年のセは以下のようになる。
《1989年のパ・リーグ》
●酒井勉(オリックス) 36試合9勝7敗9S 154.2投球回 5完投0完封 防御率3.61
●渡辺智男(西武) 19試合10勝7敗0S 138投球回 7完投1完封 防御率3.52
《1997年のセ・リーグ》
●澤崎俊和(広島) 38試合12勝8敗0S 156.1投球回 2完投1完封 防御率3.74
●川村丈夫(横浜) 26試合10勝7敗0S 151.2投球回 2完投2完封 防御率3.32
渡辺は19試合中17試合、川村は全26試合に先発しているのに対し、酒井は36試合中16試合に先発で、リリーフのほうが多かった。澤崎は38試合中21先発。中継ぎからスタートし、コマ不足のため先発に回った。白星の内訳は先発9、救援3だった。
過去11例のうち、規定投球回に届かなかった新人王は、1986年の長冨浩志(広島)、1993年の伊藤智仁(ヤクルト)、2007年の上園啓史(阪神)の3人。だが、ライバルの遠山昭治(阪神)、鶴田泰(中日)、金刃憲人(巨人)も達しておらず、不利にならなかった。
このような例を見ても、今年の新人王は、試合数以外ですべて戸郷を上回っている、森下で決まりだろう。戸郷は規定投球回を上回れなかった。10月4日の阪神戦で2回71球、20日のヤクルト戦で6回134球と球数が多く、イニングを稼げないという弱点があった。
四死球を見ると、森下36、戸郷48。まだ結果は出ていないが、新人王の分岐点は制球力にあったのかもしれない。
写真・朝日新聞