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広島・緒方元監督が振り返る25年ぶりの優勝「なぜ2016年に“神った”のか?」

スポーツ 投稿日:2021.02.06 16:00FLASH編集部

広島・緒方元監督が振り返る25年ぶりの優勝「なぜ2016年に“神った”のか?」

写真・中野章子

 

 広島カープが初優勝した2016年のシーズン、私もそうだが、選手たちにも期するものはあったと思う。チームは3〜4月が16勝12敗、5月が13勝12敗1分けと良好なスタートを切ったが、「今年のカープは違う!」と感じさせたのはやはり6月の交流戦だろう。

 

 6月14日の西武戦は、この年から採用されたコリジョンルールの適用で勝利したことで話題になった。これは同点で迎えた9回裏、赤松真人の本塁突入が一度はアウトと宣告されたものの、私が抗議したことでビデオ判定となり、捕手の走塁妨害がとられてセーフに覆ったものである。

 

 

 これはコーチ時代、野球のルールをイチから勉強し直す習慣を付けたことが効いている。劇的なサヨナラコリジョンをきっかけにチームは波に乗り、その試合を皮切りに11連勝を飾ることになる。

 

 オリックス3連戦では「神ってる」発言が注目された。

 

 オリックスとの初戦、鈴木は延長12回、サヨナラ2ランを放ち、2戦目は2点ビハインドの9回裏、逆転のサヨナラ3ラン、3戦目も同点の8回に勝ち越しホームラン──1試合決勝ホームランを打つだけでも難しいのに、3試合連続でそういうタイミングで打席が回ってきて、しかも期待に応えてしまうのはそれこそ神がかり的である。

 

 これは鈴木誠也という男が理論や理屈を超えた “星” を持っているとしか言いようがない。


 この試合後の会見で、私は「いまどきの言葉で言うと “神ってる” ってことだよな」と話し、それがこの年のカープの躍進と結び付いて年末に流行語大賞に選ばれた。この2年前には「カープ女子」が流行語大賞でトップテン入りしたが、この時期どれだけカープが社会現象になっていたかがよくわかる出来事である。

 

 ちなみにこの “神ってる” は私が家族と食事をしているとき、息子や娘がそれに似た言葉を話していたのだ。おそらく “神曲” とか “神セブン” とかそういうものだったと思うが、それを耳にしていた私は誠也の快挙に対し「神がかり的だな」と言おうとして、ああいう言葉になってしまった。

 

 それがテレビやスポーツ新聞などで大々的に取り上げられ、いっそうチームに追い風を吹かせた。 “神ってる” という言葉は独り歩きし、カープの快進撃を象徴するフレーズとして定着したのである。

 

 この年、誠也の成長は大きかった。前年が97試合出場、打率.275、5本塁打だったのに対し、129試合出場、打率.335、29本塁打と大きく数字を伸ばした。

 

 こうした若手の成長はチーム全体に勢いを持たせる。誠也がその牽引役になったことは間違いない。

 

 そして野手ではなんといっても “タナ・キク・マル” の誕生である。私は前年までの “キク・マル” コンビに田中広輔を加え、これがハマった。

 

一番 ショート 田中広輔

二番 セカンド 菊池涼介

三番 センター 丸佳浩

 

 この組み合わせを固定できたことで、3人の役割が明確になった。田中は一番としてとにかく出塁する。菊池は走者を進塁させて得点圏に送る。そして丸はその走者をホームに返す──ひとりひとりの役割が明確になったことで、選手に迷いがなくなった。打線が文字通り “線” になり、課題だった1点を取りにいく攻撃ができるようになった。

 

 役割の明確化はキク・マルの復活ももたらした。前年2人はチームの主力としての重圧もあって大スランプに陥ってしまった。しかしこの年、私は2人に「自分の役割を果たしてくれればそれでいいから」と伝えるに留めた。菊池であれはバントを決めてくれればいい。ホームランなんて狙わなくていい。丸に対しても、別にヒットを打たなくていい。外野フライで十分──。

 

 それが余計な力を取り除いたのだろう。菊池は.254から.315に打率を上げ、丸は63打点から90打点とチームの勝利に貢献した。2人は自分に課された仕事に集中することで、輝きを取り戻すことに成功したのである。

 

 そもそも私は前年から広輔を一人前に育てたいという想いを持っていた。広輔は社会人からの入団なので、菊池や丸に比べてプロとしてのキャリアが浅い。

 

 しかし3人は同い年であり、広輔が伸びてくれれば間違いなく菊池、丸を刺激して、いいライバル関係ができる。そんな3人がショート、セカンド、センターというセンターラインを形成することになればチームは確実に強くなる。私にはそういう読みがあった。

 

 言うまでもなく、このタナ・キク・マル結成のベースにあるのは、三村監督時代、野村謙二郎さんや江藤、前田智、金本ら同世代と切磋琢磨することで個人としても成績を伸ばし、同時にチーム力もアップしていったときの経験である。私は同年代だからこそ「こいつらには負けたくない」と思ったし、同年代だからこそお互い気兼ねなく話し合い、特別な絆を作ることができた。

 

 この頃からカープは勝利した試合の直後、選手同士がジャンプして尻をぶつけ合う “ヒップタッチ” というコミュニケーションが恒例になるが、その中心にはタナ・キク・マルの3人が常にいた。

 

 この年、彼らは27歳。ここにさらに安部友裕、野村祐輔らが加わった “89年組” がドンと中心に居座ることで、その上に黒田や新井といったベテラン陣、その下に誠也や野間や西川龍馬といった若手がいるという理想のチームバランスをカープは手に入れることになった。

 

 後方が安定したことはチームをさらに勢いづけることになった。終盤でひっくり返す試合が増え、いつしか “逆転のカープ” と呼ばれるようになったのである。

 

“逆転のカープ” という代名詞は3連覇の間ずっと言われてきたことだが、データで振り返っても、2016年は89勝中45試合が逆転勝利、2017年は88勝中41試合が逆転、2018年も81試合中41試合が逆転で勝っている。これは先行逃げ切りがセオリーの野球というスポーツにおいて、非常に珍しい現象だ。

 

 ただ、これに関しては少し誤解されているように感じる。 “逆転のカープ” については「終盤打ってひっくり返す打線がすごい」とよく言われる。打力で勝っていると捉えられることが多い。でもわれわれが目指したのは “守り勝つ野球” なのだ。

 

 先発が崩れて先行されても、中継ぎ陣が踏ん張って追加点を与えない。守備陣がミスなく守って、相手に流れを渡さない。そのうちに流れがこっちにやって来る。そして得たワンチャンスをきちんと活かす──つまり投手を中心とした守りの野球、ミスの少ない緻密な野球を徹底した結果、 “逆転のカープ” というカタチが転がり込んできた格好なのだ。

 

 

 以上、緒方孝市氏の新刊『赤の継承 カープ三連覇の軌跡』(光文社)をもとに再構成しました。徹底的な戦力分析や一球ごとの緻密なベンチワークといった采配の裏側、そして到達できなかった日本一について、リーダーの素直な思いを明かします。

 

●『赤の継承』詳細はこちら

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