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野村監督、インタビューで「目を開けたまま寝た」“御用”アナウンサーに…

スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2021.02.09 11:00 最終更新日:2021.02.09 11:00

野村監督、インタビューで「目を開けたまま寝た」“御用”アナウンサーに…

 

 2020年2月11日に惜しまれつつ亡くなった、野村克也さん(享年84)。1周忌にあたり、15年間近くマネージャーを務めた小島一貴さんが、短期集中連載で「ノムさん」の知られざるエピソードを明かす。今回は、第9回だ。

 

 

 監督は楽天を退任したあと、再び野球評論家となった。年間を通してメディアの取材を受けるようになり、依頼は殺到。監督退任直後は、講演やテレビ出演を除けばほぼ毎日、取材をこなしていた。2015年に体調不良で長期療養を余儀なくされたのも、働きすぎだったのだと思う。

 

 

 多くの取材を受けていたので、ひとつひとつを詳細に覚えているわけではないが、印象に残っている取材はいくつかある。

 

 あるテレビ局はひところ、朝の番組のスポーツコーナー向けに監督のインタビューをすることが多かった。多いときは2~3カ月おきくらいに、この番組の取材を受けていた。

 

 監督は朝に弱いので生出演は不可能であり、収録で対応するほかない。しかも取材は、17時か18時スタート、早くても16時くらいから、というのが監督のルールだった。

 

 大変だったのは、インタビュアーを務めるアナウンサーだったと思う。ほぼ毎回、同じ方だった。朝の番組を担当しているから、夜中に起床して出社していたはずだ。しかし監督のインタビューは、遅ければ18時スタートで、長ければ2時間ほど。ふだんなら寝ていなければならない時間帯に、まだインタビューをしていることになる。

 

 それでも当初は、このアナウンサーも頑張っていた。眠い時間帯に、監督の語り口調を聞くのだから、かなりの睡魔に襲われていたはずだ。にもかかわらず目をパッチリと開き、役割を果たしていた。監督を相手に、緊張感もあったのだろう。

 

 しかし、人間誰でも慣れが来る。取材を重ねて、監督ともすっかり顔馴染みになったころ、インタビュー中にかなり眠そうな顔になることが増えた。目を開けたまま眠っているように見えたこともある。

 

 帰りの車の中などで、監督が「あの人、寝てたぞ」などと言うのではないかと思っていたが、そういうこともなかった。観察眼に優れた監督のことだけに、気づいていないはずはない。自分から言及しなかったのは、監督の優しさだったのだろうか。

 

 もうひとつ、印象深い取材がある。いわゆる地方局の収録インタビューで、わざわざ東京にクルーを派遣してくれていた。異色だったのは、当時かなり売れっ子だったお笑い芸人をインタビュアーに起用したことだった。

 

 事前の打合せで、「失礼なことのないように気をつける」とは言われていたが、この芸人さんはしゃべり方に特徴のあるキャラを売りにしている。そのしゃべり方で取材をされては馴れ馴れしすぎるし、かといって封印してしまっては、この芸人さんを起用した意味がないだろう。不安のある取材だった。

 

 当日、監督と初対面の芸人さんは、かなり緊張していた。監督が話しかけると、高校まで野球をやっていたという。それなら無理もない。

 

 収録が始まっても、芸人さんの話し方はいたって普通で、芸風はいっさい出なかった。これはこれで番組的には困るのではないかと思っていたら、最後のほうで1回だけ、かなり控えめではあったが、芸風に即したしゃべり方で質問をした。監督は普通に答えていた。芸人さんのしゃべり方の変化に、おそらく監督は気がついていなかっただろう。

 

 取材が終わって、「この芸人さんは、とてもいい人なんだろうな」と思った反面、もしかしたら勢いが衰えるかもしれない、と心配になった。芸人として売れ続けている方は、オレがオレがで自分をどんどん前面に出すタイプだと思っていたからだ。

 

 はたして私の心配は当たり、以後この芸人さんのテレビでの露出は少なくなっていった……。それでも時折テレビで見かけると、「テレビの仕事は減ったがライブの仕事は十分にあるので、生活には困っていない」と話していた。野村監督に敬意を表してくれた方なので、今後の活躍を心から願う。

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