スポーツ
【4月17日の話】イチローが最多安打を更新…張本勲も現地で拍手喝采していた
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2021.04.17 09:20 最終更新日:2021.04.17 09:23
2009年4月17日、シアトル・マリナーズのイチロー(当時)が日米通算安打を「3086」とし、張本勲が保有していた日本選手最多安打記録を更新した。
日本で圧倒的な実績を残したイチローが、メジャーリーグに挑戦したのは2001年のことだ。シアトル・マリナーズでメジャーデビューを果たすと、1年目からシーズン242安打を放ち、メジャーリーグの新人最多安打記録を更新。それと同時に、首位打者・盗塁王・シーズンMVPなどを獲得し、アメリカでもスター選手となった。
【関連記事:イチロー「国民栄誉賞」4度目の辞退に安倍首相青ざめる】
迎えたメジャー8年目、2009年4月17日のエンゼルス戦の第4打席でヒットを放ち、張本を抜いて日本選手最多安打記録を達成。多くの記録をもつイチローにとって、この数字はどのような意味を持つのだろうか。
2001年からメジャーリーグを取材しているライター・小西慶三さんが、本誌の取材に応じてくれた。
「イチローさんにとって『こだわりのある数字』とそうでないものがあると思いますが、彼自身は『数字を目標にすると、そこに達したあとの気持ちの持ちようが難しくなる。お金を目標にしても同じこと。でも、面白いからやるという姿勢で取り組めば、そこに限界はない』と語っています。これは彼なりにメンタルを維持していく上での工夫だと思います」
記録が達成された当時、現地で取材をおこなっていた小西さんが、こんなエピソードを教えてくれた。
「張本さんは、記録がイチローさんに抜かれる瞬間を現地で観ていました。観戦姿を映し出されたんじゃないかな。立ち上がって拍手をしていた記憶がありますね」
記録を抜かれた張本は、日本プロ野球史上初となる3000本安打を達成している。安打数のほかにも、プロ野球史上唯一の通算500本塁打300盗塁をマークするなど歴代屈指の名選手として知られ、1990年には野球殿堂入りを果たした。
「イチローさんは1軍に定着しだした1994年、当時のシーズン安打記録となる210本のヒットを打ったんです。その翌年、東京ドームで張本さんに声をかけられたみたいなんですが、そのときに『俺の記録を超えるのはお前だけだ!』と言われたと聞いています」
記録を作ったイチローと、記録を抜かれた張本。両者を取材した経験を踏まえて、小西さんは次のように語る。
「広島への原爆投下でお姉様を亡くし、決して裕福ではない生活のなかで、『お母さんを苦労から解放させたい』という目標をもってキャリアを築いてきた張本さん。『俺たちの時代は野球がダメになったら生活もダメになる』とおっしゃっていて、厳しい時代を生き抜いてきたプライドを感じます。
一方でイチローさんは、野球は『趣味に近いもの』であると語っています。数字に対する考え方も、彼なりのアプローチでしょう。この2人をみると『昭和と平成のコントラスト』を実感します」
記録を更新してから10年経った2019年3月21日、東京ドームでおこなわれたマリナーズ対アスレチックス戦の試合終了後、イチローは現役引退を表明した。
日米通算安打はついに「4367」に達し、「プロ野球における通算安打世界記録」としてギネスに認定されている。ほかにも「シーズン安打記録(262本、2004年)」や「10年連続シーズン200安打(2001〜2010年)」など、多くの金字塔を打ち立てた。