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「セ・パ交流戦」開始によるパ・リーグ大躍進はマーケティングの勝利/5月6日の話

スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2021.05.06 06:00 最終更新日:2021.05.06 06:00

「セ・パ交流戦」開始によるパ・リーグ大躍進はマーケティングの勝利/5月6日の話

交流戦を前に握手するヤクルト・宮本慎也(右)と千葉ロッテ・清水直行

 

 2005年5月6日、日本球界初となる「セ・パ交流戦」が開催された。

 

 プロ野球ファンにとって当たり前の存在となった「セ・パ交流戦」だが、もとをたどれば、当時のオリックス・ブルーウェーブと近鉄バファローズの合併構想を端に発する「プロ野球再編問題」の副産物として誕生したものだった。

 

 

 経営危機からの挽回を目指し、球団合併やリーグ再編に突き進んだ当時の球団経営陣と、日本プロ野球選手会は真っ向から対立。日本プロ野球史上初となるストライキにまで発展したこの騒動は、プロ野球ファンからの信頼を損なうことになる。

 

 プロ野球に詳しいノンフィクション作家・長谷川晶一氏に話を聞いた。

 

「2004年の球界再編騒動をきっかけに、ファンをないがしろにしながら殿様商売をつづけてきたプロ野球界に、『もっとファンを大切にしないといけない』という風潮が生まれました。その起爆剤として、交流戦の開催が実現したのだと思います」

 

 ファンからの信頼回復とプロ野球界のさらなる発展を目指して生まれたセ・パ交流戦と、その開催によって距離を縮めたセ・パ両リーグ。しかし、それ以前のプロ野球を振り返ると、セ・リーグとパ・リーグの間には、いまでは考えられないような「格差」があった。

 

「もはや死語になっていますが、かつては『人気のセ、実力のパ』という言葉が普通に使われていました。昭和のプロ野球で活躍されたOBの方たちに取材をすると、1970年代、1980年代は両リーグの格差が如実にあって、セ・リーグ優位の時代がずっと続いていたと仰っしゃります。その理由としては、やはりジャイアンツ人気がすごかったということです。

 

 当時、巨人戦は全国で中継されていましたが、パ・リーグの試合は、ほとんどテレビ中継がありませんでした。そうなるとやっぱり、子供たちとか地方にいる人たちは『巨人の選手は知っているけれど、パ・リーグの選手は知らない』という状況になりますよね。

 

 巨人中心だったマスコミによってさらに巨人は人気を集め、ひいてはセ・リーグの人気につながったのは間違いないと思います」(前出・長谷川氏)

 

 球界再編問題を乗り越え、セ・パ交流戦の開催を迎えた日本球界は、新たな一歩を踏みだす。かつてはテレビにも映らず、球場にファンを呼び込むにも一苦労だったパ・リーグも、地道な努力を実らせ、多くのプロ野球ファンを魅了するリーグとなった。

 

「僕は、セ・リーグに比べてパ・リーグのほうが上の立ち位置にいると思います。去年・おととしの日本シリーズで、ソフトバンクと巨人が試合をしました。結果は、ソフトバンクが2年連続で巨人を下し、日本一になりました。巨人は1勝もできなかった。世間の評価もそうでしょうが、パ・リーグの方が実力的に上なんです」(同)

 

 パ・リーグ優位の背景には、フロントによる改革も根強い。

 

「現在のパ・リーグを見ればわかると思うのですが、パ・リーグの本拠地は全国まんべんなく散らばっています。セ・リーグに対してパ・リーグ独自の活路を見出すには、地方に進出して地域密着化を図ることだったのでしょう。たとえば、日ハムはもともと東京のチームでしたが、北海道に本拠地を移しました。また、球界再編騒動の末に誕生した楽天は東北を選びました。東北6県にファンを作ろうとしたのです。

 

 物販もそうですが、いわゆる『マーケティングの勝利』でもあると思うんですね。パ・リーグのチームは、それぞれの地域で地域密着を図るべく、さまざまな努力をし、その成果を如実に発揮してきた。グラウンド内では選手たちが実力を発揮し、グランドの外では、フロントが高い経営能力をふるっています」(同)

 

 長谷川氏は、セ・パ交流戦がプロ野球ファンに与えた影響についてこう語る。

 

「交流戦が始める以前は、(巨人ファンの場合は)日本シリーズでしか巨人対パ・リーグを観ることができなかった。しかし、交流戦が誕生したことで、たとえば、巨人対西武となれば、西武戦も観ているわけです。ファンの視野や関心を広くするという意味で、交流戦が果たした役割は大きいと思います」(同)

 

 今年で17年目を迎えるセ・パ交流戦。昨年は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中止となったため、2年ぶりの開催となる。セ・リーグとパ・リーグ。それぞれの歴史とプライドが、今年もぶつかり合う。

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