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松坂大輔、小遣いは100万円、クックパッドで自炊…親友カメラマンが語る “怪物” の素顔
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2021.10.29 06:00 最終更新日:2021.10.29 06:00
「本当は投げたくなかったんですね。今の自分の体の状態でどこまで投げられるかってのもありましたし。これ以上、ダメな姿を見せたくないと……。(中略)でも、どうしようもない姿かもしれませんが、最後の最後、全部をさらけ出して見てもらおうと思いました」
日米通算170勝をあげた松坂大輔が、10月19日の引退試合を経て、23年間のプロ生活に別れを告げた。
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冒頭の言葉どおり、かつては150kmをゆうに超える剛速球で打者をねじ伏せた姿は、そこにはなかった。5球投じたなか、最速は118km。それでも松坂は、最後まで速球にこだわった。
「普通はボロボロになった姿はファンに見せたくないはず。それでも大輔は投げた。自分の今をさらした。涙が自然と流れましたね」と語るのは、長年にわたって松坂を撮り続けたカメラマンのジジ氏だ。
2人の付き合いは、松坂のプロ入り後、初の春季キャンプから始まった。
「当時、すでにスターだったんだけど、すれたところや驕った部分がまったく見えず、普通の高校生といった感じ。で、そのとき撮影した写真を後日、渡しに行ったんだけど、すごく喜んでくれてね。それからは現場で会うたびに、大輔のほうから声をかけてくれるようになったんだ」
その後も親交が続き、食事を共にする仲となった。
「彼の魅力はギャップだね。普段は無邪気なんだけど、いざマウンドに上がるとスイッチが入るんだろうね。まさに豹変していた。こいつは将来化けるな、とんでもないところまで駆け上っていくな、と感じた。
そうそう、グラウンドを離れると “限定品” に弱い一面があった(笑)。
2009年ごろに乗っていたフェラーリーもそうだし、時計もそう。『時計を買いたい!』ということで僕の知り合いの時計店に連れていったんだけど、気に入った時計の値段が何と4500万円。さすがにかなり迷っていたね。なぜなら、奥さんからもらう小遣いは月100万円。愛車のフェラーリを下取りに出しても足りなかったから(笑)。人が持っていないものを欲しがった。人と同じじゃ嫌なんだろうね」
当時の松坂はレッドソックスでチャンピオンリングも手にしたが、満足な活躍を見せたのは2年ほど。残りの期間は、怪我との戦いが続いていた。
「帰国してソフトバンクに入ったとき、久々に会ったんだけど、肘にメスを入れていたし、速球のスピードも落ち、キレもなかった。
でも、いちばん驚いたのは表情だった。大型契約を結んだけど投げられなかった。心ないファンからは『給料泥棒!』とさえ呼ばれていたよ。弱音は吐かなかったんだけど、表情がまるで別人。つねに神妙な顔をしていたんだね。
このころは子供の教育のために家族をボストンに残し、彼は福岡に単身赴任していた。今まで家のことなんかやったことがない男が一人暮らしはきつかったと思うね。外にもあまり出ず、クックパッドを見ながら食事を作っていたくらいだから。日米でトップに立った男がここまで落ちてしまうのかと」
それだけに中日に移籍した2018年の勝利は嬉しかったと言う。
「僕は競技を問わず、いろいろなスターと言われる選手を撮ってきた。でも、球界で言うなら大輔は、イチローや松井秀喜と並んで真のスーパースターだった。イチローと松井は衰えから引退した。でも、大輔は怪我がもと。そこが2人と少し違うし、心残りもあったと思う。でも、少し休んで、大輔しかできない次の道に進んでほしい」
引退試合の次の日、ジジ氏は松坂に連絡を入れた。労いの言葉もそこそこに、松坂からは意外な言葉が発せられた。
「ジジさん、来春のキャンプを各地を回りますからよろしく!」
マウンドを降りた “怪物” がどこで活躍してくれるのか、楽しみだ。