スポーツ
小林陵侑 ジャンプ週間総合優勝の快挙!飄々とした性格を“悔しがり”に変えたのはレジェンド・葛西紀明だった
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2022.01.07 16:10 最終更新日:2022.01.14 19:22
洋服とヒップホップが好きな25歳の若者が、歴史に残る大快挙を成し遂げた。
1月7日(日本時間)におこなわれたスキージャンプ男子W杯個人第13戦(オーストリア・ビショフスホーフェン)を終えた小林陵侑。ジャンプ週間4戦のうち3勝し、総合優勝を果たしたのだ。
ジャンプ週間は、五輪や世界選手権に並ぶ権威のある大会だ。自身を含め、4戦完全優勝は過去に3人しか成し得ていない。前人未到の2度めの4連勝こそ逃したが、今の小林は絶好調だ。
【関連記事:写写丸が見た「平昌五輪」ジャンプ小林陵侑が韓国でモテモテ】
今季は6勝を挙げ、日本人男子の最多勝利数の記録を25に更新。北京五輪(2月4日開幕)での金メダル獲得へ弾みをつけた。スポーツライターの関谷智紀氏が語る。
「北京五輪のジャンプ会場は、これまでW杯の舞台になったことがなく、すべての選手にとって初挑戦です。しかし今季の小林選手は、ジャンプ台のクセへの対応力がずば抜けています。悪条件でも大ジャンプを連発しており、どんな台でも勝てる状態です」
そんな小林が高校卒業後、土屋ホームへの入社を決めたのは、五輪に8大会連続で出場し、2014年のソチ五輪で銀メダルを獲得した “レジェンド” 葛西紀明(49)の存在があったからだ。同社スキー部の担当者が語る。
「葛西は、高校時代の陵侑のジャンプを見て『世界の強い選手と飛び方が似ている』と可能性を感じていました。陵侑も大学には進まず、葛西の所属する土屋ホームに入りたいと希望していたようです」
入社翌年の2016年、小林はW杯のデビュー戦でいきなり7位に入賞。だが、翌2016-2017年シーズンはW杯全試合にフル出場するが、一度も30位以内に入れなかった。
「個人ランキングは、30位以内に付与されるポイントの合計で決まります。陵侑は飄々とした性格で、葛西の目にはその結果にあまり悔しがっていないと映ったようです。葛西は、小林をあえて『ノーポイント』とイジることで、奮起を促していました。そのうち、陵侑の練習に取り組む姿勢が変わってきました」(同前)
元スキージャンプ選手の千葉勝利氏は、このころの小林の姿をよく覚えている。
「私は全日本スキー連盟Jr.チーフコーチを務めたあと、札幌市内で飲食店を開業しています。陵侑がW杯で苦戦していた20歳のころ、店を拠り所にしてくれていた時期がありましてね。『この競技を国内でもっと発展させたい。自分が率先して結果を出さないと』と話していました」
もっとも、小林には天性のセンスがあった。
「2016-2017年シーズンのあと、葛西が小林にジャンプの踏み切りの際、後ろにスリップしづらいコツを教えたことがありました。普通は、数年がかりで滑走面への力の伝え方を習得できるかどうかなのに、陵侑は3回くらい飛んだらできてしまったというのです」(前出・担当者)
2018-2019年シーズンは13勝を挙げ、欧州勢以外で初のW杯個人総合優勝とジャンプ週間の完全優勝を達成した。
そして今、葛西も成し得なかった五輪での金メダルが完全に射程圏内に入ってきた。
「個人戦での優勝確率は80%以上でしょう。北京でも、彼の決め台詞『ぶっ飛んでいきましょう!』が流行語大賞になるくらいの大ジャンプが見られるはずです」(関谷氏)
K点超えの大飛行で、ジャンプ週間総合優勝を飾った小林。北京では、メダルの色でも師・葛西の到達点を超えようとしている。