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高木美帆、念願の金メダル…大谷翔平・羽生結弦と同じ「94年組」勝利の秘密はゆとり教育

スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2022.02.18 21:20 最終更新日:2022.02.18 23:21

高木美帆、念願の金メダル…大谷翔平・羽生結弦と同じ「94年組」勝利の秘密はゆとり教育

写真・JMPA

 

 2月17日におこなわれたスピードスケート女子1000mで、高木美帆(27)が1分13秒19の五輪新記録をマークし、悲願の金メダルを獲得した。

 

 女子500m、女子1500m、チームパシュートで獲得した3つの銀メダルに次いで、4つめのメダルを手に入れた高木。これで、五輪通算メダル数は7となり、日本女子選手として五輪通算の最多メダル数を更新した。

 

 

 1994年に北海道で生まれた高木は、兄と姉の影響で5歳からスケートを始めた。一気に才能を開花させると、ISU(国際スケート連盟)ワールドカップや世界オールラウンド選手権などの国際舞台で経験を積み、平昌オリンピック(2018)で3つのメダルを獲得。名実ともに日本スケート界のエースとなった。

 

 スポーツジャーナリストが、次のように語る。

 

「高木選手が生まれた1994年は、大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手をはじめ、今大会でも注目を集めたフィギュアスケートの羽生結弦選手、水泳では世界水泳で4つの金メダルをもつ瀬戸大也選手やリオ五輪(2016)で金メダルの萩野公介選手など、多くの一流アスリートが生まれた年として知られています。

 

 彼ら『94年組』は、実は “ゆとり世代” ど真ん中です。ゆとり世代とは、おおよそ1987年から2004年生まれを指す言葉です。膨大なカリキュラムを教える “詰め込み教育” から一転して、学習時間を減らし、余裕ある学習指導要項が採用された世代です。

 

 今ではゆとり教育から脱ゆとり教育に移行していますが、『94年組』は、小学校2年生から義務教育が終了するまで、すべてをゆとり教育のなかで過ごしたのです」

 

 なぜ、高木ら、ゆとり世代のアスリートたちは、これほどまで大きな実績を残すことができるのか。かつて文部科学省で、ゆとり教育の導入を推進した寺脇研氏に話を聞いた。

 

「ゆとり教育が始まるまで、学校のことよりスケートや野球に力を入れると、マイナスな意味で人とズレているという意識が社会全体にありました。こういった意識が、ゆとり教育が導入されてから変わったんです」と寺脇氏は語る。

 

「ゆとり世代より前の人たちは、みんな同じで、平等であればいいと考えていた。つまり、それまでの日本の教育は、みんなを同じ鋳型に当てはめるという考え方だったんです。

 

 ゆとり教育を導入した当時、文科省は『興味・関心・能力・適正』という言葉を使いました。ゆとり世代になって初めて、興味や関心、能力、適正が人によって違うことが理解されるようになったのです」

 

 寺脇氏は、ゆとり世代の活躍の背景にあるポイントは3つあると話す。

 

(1)学校が完全週休2日制になった

 

 今でこそ当たり前となった「土曜日休み」。実は、これもゆとり教育が実現したものだ。それまでは小中高ともに第2土曜日と第4土曜日が休みだったが、2002年から完全週休2日制が導入された。これにより、なにかに集中する時間が確保されたという。

 

「ゆとり教育の、『それぞれのいいところを伸ばす』という考え方が浸透し、ひとつのことに打ち込む生き方が許される社会になったと感じます。

 

 1994年生まれということは、2001年頃に小学校に入学しています。2002年からは完全週休2日制になって、土曜日が休みとなりました。土日を自分の才能を伸ばすための時間として使えるようになったんです。

 

 普通の会社だと、その世代はまだ若手社員です。でも、スポーツや芸術の世界であれば、若い人でも勝負できる。高木選手にしても大谷選手にしても、学校にはちゃんと通ったでしょうが、土日は自分の種目に打ち込むことができたんだと思います」

 

(2)世界で活躍する日本人選手が間近に

 

「94年組」が幼い頃、世界で多くの日本人アスリートが活躍しはじめた。1994年には、三浦知良がイタリアのサッカークラブに移籍。1995年には野茂英雄が大リーグ・ドジャースでプレーした。小学校に入学すると、イチロー(当時マリナーズ)が空前の活躍をみせるなど、「94年組」は世界の日本人アスリートを間近で観てきた世代だという。

 

「たとえば、大リーグの試合を毎日リアルタイムで観られるようになったのは、ゆとり世代からです。もしその10年前だったら、大リーグで活躍している日本人がいたとしても、プレー姿をリアルタイムで観ることはできなかったはず。

 

 衛星放送が普及して、リアルで世界とつながれるようになった結果、ゆとり世代の人は世界で活躍するアスリートを目標にできるようになったのです。

 

 教育面でも、日本のことばかり考えるのではなく、世界と自分がつながっていることを考えさせるようになった。外国とつながる意識を教え込んだことで、世界的な大舞台で活躍できる選手が出てきたんだと思います」

 

(3)SNSの普及で生まれた横のつながり

 

 SNSの普及も、ゆとり世代が活躍する大きな要因だ。「94年組」は、高校生の頃からスマートフォンを使い、TwitterやFacebook、InstagramなどのSNSに触れてきた。

 

「ゆとり世代のアスリートの特徴として、自分の好きなことに打ち込める環境があることと、広い視野を持っていることがあげられます。

 

 昔だったら、野球をやっている子供がサッカーを観ることはなかった。でも今は違う。ゆとり教育には、能力を伸ばして自分の才能を開花させるだけでなく、視野を広げて、いろんな世界を観ましょうというメッセージが込められています。

 

 SNSの普及で、あらゆる競技者と横のつながりをもち、切磋琢磨しながらスポーツに打ち込めるようになりました。同じ競技のライバルだけでなく、他の競技のエリート選手ともつながれる、絶好の環境が生まれたんです」

 

 寺脇氏は、ゆとり世代のアスリートたちの言葉にも注目している。

 

「これまでもスポーツで活躍する人はたくさんいましたが、昔の人は談話、つまりコメントがとてもつまらなかった。それに比べ、ゆとり世代のアスリートはみんなコメントがうまい。

 

 自己表現力とコミュニケーション能力を高めることも、ゆとり教育の大きな願いのひとつだったんです。

 

 自分のいまの気持ちをどうやって表現するか。これまでの努力の過程をどうやって表現するか。表現力に関して、ゆとり世代のアスリートたちは非常に長けていると思います」

 

 批判も多いゆとり教育だが、今のメダルラッシュを生んだのも確かなのだ。

 

( SmartFLASH )

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