■走り出すだけでファンから歓声が沸き起こる
ドイツで陽気な性格を評価されているといえば、板倉滉だ。板倉を取材したドイツ人記者が明かす。
「あいつおかしいんだぜ。『ドイツの好きなところは?』って聞いたら『サウナだ』って言うんだ。『だって、男も女も全裸なんだ。最高だよ』って。おもしろすぎるだろ」
本当に板倉がドイツ式混浴サウナを愛しているか真偽は不明だが、こんな「持ちネタ」でドイツ人を楽しませることができる明るさの持ち主であることは間違いない。
今季、期限付きで所属していたシャルケでは、東京五輪後の加入ながらあっという間にレギュラーポジションを獲得した。CBでもボランチでもプレーし、得点も挙げた。周囲を動かせるし、自分も動く。足元もあり、サイズもある。来季1部での戦いが楽しみな選手だ。
その板倉と同じ神奈川県川崎市のさぎぬまSCで小学生時代にプレーしていたのが、ともに今季欧州に舞台を移した田中碧と三笘薫だ。
ドイツ2部のデュッセルドルフでプレーする田中は、ボランチでのプレーに少し苦戦した。地元メディアから「シュートを打つわけでもなければ守備に強いわけでもない」と、叩かれた時期もあった。だが、地道にチームやドイツ2部のサッカーに適応、着実に出場機会を増やし「日本にいるときより自由に、感覚的にプレーできている気がします。そのぶん攻撃も効果的にできている」と口にするまでになった。
W杯に出場できるかまだわからないとしつつも「ドイツやスペインのような国に勝つためにやっている。まわりになんと言われようが、内容ではなく結果にこだわれば勝てる」と強く言い切る。この男は、自分たちが “死のグループ” を突破することを微塵も疑っていない。
ちなみに、田中は徹底した自己管理で知られる。サプリメントで栄養補給をおこない、ドイツでは肉ではなく、サーモンを好んで食べるそうだ。
3人を比べると、もっとも真面目に見えるのが三笘だ。三笘はプレミアリーグのブライトンに移籍後、ベルギー1部のサンジロワーズに期限付き移籍した。1部に昇格したばかりだったサンジロワーズ に来季のEL出場権をもたらす原動力となった。日本代表では、後半途中出場で試合に変化をもたらす高速ドリブルが持ち味だが、サンジロワーズではウイングバック。いわゆる5バックのいちばん外側の一枚で攻守に奮闘した。
ベルギーでの生活にも苦労したようで「最初はそんなに楽しくなかった」と言いつつも、途中から町田浩樹が加入したことで「だいぶん助かった」と明かした。
W杯の組み合わせを見た三笘は「ふだんなかなか対戦できる相手じゃないので、日本にとっても素晴らしい試合になると思いますし、歴史を作るには素晴らしい相手だと思います」と語った。「歴史を作る」とは、もちろん “死のグループ” で2強を倒し、世界中をあっと言わせるという意味だ。スペイン、ドイツをも蹴散らす高速ドリブルを見せてほしい。
そして、ベルギーリーグでアシスト王にもなった、ゲンクの伊東純也を忘れてはならない。ゴールは、伊東のサイドからの仕掛けから生まれる。フォワードが不調であっても、何度でもチャンスを供給する。サイドに少しでもスペースがあれば、伊東が高速で走り出す。ボールを持っていても、裏抜けでも、走り出すだけで歓声が沸き起こるのは、それがチャンスになると、ファンもわかっているからだ。
日本代表においても同様で、攻撃はいわば「戦術=伊東」である。伊東がどうプレーするか、それ自体が日本代表の攻撃の鍵を握っている。
ブラジル戦に向けて代表メンバーは少々入れ替わったが、「基本的には変わっていないので、自分自身がうまくやれればいいかな」とどこ吹く風。W杯ではドイツ、スペインと対戦するが「やっぱりレベルは高いと思いますが、スカウティングしていないのでうまく言えないです。まあ、しっかり対策してやれればいいかな」と、余裕の表情だ。
ブラジル、ドイツ、スペインといった強豪から大金星を挙げ、 “欧州組7戦士” はビッグクラブへと駆け上がっていけるかーー。
写真・渡辺航滋、ロイター/アフロ
取材&文・了戒美子