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「楽天」快進撃で判明した「2番打者こそ最強」論

スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2017.04.29 06:00 最終更新日:2017.04.29 06:00

「楽天」快進撃で判明した「2番打者こそ最強」論

『「最強2番」のマイク・トラウト。写真:AFLO』

 

 足が速く、バントなどの犠牲的精神をいとわない。それが、日本では一般的な2番打者のイメージだろう。だが今年、そんな2番のイメージが変わりつつある。楽天とDeNAが、小技よりも打撃に長けた選手を2番に置いているのだ。あの大谷翔平も一度、2番としてスタメンに名を連ねた。

 

 今季、DeNAの2番を多くまかされる梶谷隆幸は、昨年キャリアハイの18本塁打を打っている。また、楽天は長打力をウリにするペゲーロを起用したことで得点力がアップ。彼の豪打が、楽天快進撃の原動力だ。

 

 この2チームに共通しているのが、序盤から得点を奪って優位に進めていこうという姿勢だ。楽天の梨田昌孝監督(63)は、「打点を稼げる打者に、少しでも多く打席を回すことが目的。しかも、ペゲーロには一発がある」と、「大砲」を2番に起用した理由を語る。

 

 こうした「2番最強論」は、米国に萌芽がある。MLB評論家の福島良一氏が解説する。

 

「最初に注目されたのは1996年。マリナーズのアレックス・ロドリゲスが21歳と、史上4番めの若さで首位打者を獲得、打順が2番で大いに話題になった。他球団にも広まったのは、21世紀に入ってから。2004年ヤンキースが日本での開幕を迎えたとき、2番は松井秀喜でした」

 

 ただ、チーム有数の強打者を2番に置くというのは、打順の繫がりの意味でもったいない気がするが……。野球データ分析会社「DELTA」の岡田友輔氏が、その根拠を語る。

 

「日本の場合、打順がひとつ下がると年間で約15打席ほど減っていくというデータがあります。たとえば、2番と5番での差になると、2016年のデータで44打席。一般的な感覚どおりに、2番より5番に優秀な打者を置き1シーズン戦うと、単純計算で『両者の力の差』×44打席の損失が出ます。2番を含め、上位に優秀な打者を配置する策は、こうした損失の回避に繫がります」

 

 加えて、2番打者はお膳立てだけでなく、自らチャンスを拡大したり、走者を返す打力も必要だ、と指摘する。

 

「2番という打順は、初回を除けばそれなりにランナーが溜まった状況で回る。2番に打力があれば、アウトのリスクを負う『繫ぎ』を挟まずに、そこで勝負ができます」

 

 メジャー最高の選手と称されるマイク・トラウトをはじめ、まだまだメジャー主導の感はあるが、じつはメジャーよりも早く、「恐怖の2番打者」と呼ばれた男が日本にも存在した。

 

 1994年、当時ダイエーの山本和範(59)は打率.317、11本塁打、62打点の好成績を残した。打席数も509を数えたが、送りバントはわずか1。強打者であるとともに、「バントをしない2番」と恐れられた。山本氏が言う。

 

「日本シリーズなど、1点の重みが違う短期決戦では判断が難しい。でも、僕は2番が打ちにいくことはいいことだと思います。決まったようにバントをしていてはお客さんも『やっぱりな』となる。そこで打てば喜んでくれますしね。それに、2番の重要性がわかる監督は今後、強打者を起用してくるはずです」
(週刊FLASH 2017年5月9日、16日号)

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