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愛媛・川之江高校をベスト4に導いた鎌倉健さん「1回戦は足が震えていました」…甲子園の“番狂わせ”ドラマ<四国編>
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2022.08.13 06:00 最終更新日:2022.08.13 06:00
その大会のときにだけ、鮮烈に輝く高校。念願の初勝利のあと、今では「強豪」に名を連ねる高校。甲子園では、しばしばそんな “ジャイアントキリング” が起こる。あなたの故郷の奇跡を追体験しよう。
◎<愛媛>川之江 6−5 浦和学院・埼玉/2002年2回戦
「愛媛には松山商、今治西、宇和島東など強豪校がたくさんあります。でも僕は、地元の仲間と甲子園に行きたかったんです」
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2002年夏、県立である川之江高校を4強に導いたサイドスローが、日本ハムでも活躍した鎌倉健さんだ。
「1回戦は足が震えていましたが、2回戦は、胸を借りるつもりで臨むしかありませんでした。相手はセンバツ優勝校の報徳学園(兵庫)と、同じく優勝候補である浦和学院の勝者でしたから」
2回戦は浦和学院と対戦。自身のソロ本塁打で一時追いつくが、7回表に一挙4点を失い、1−5と突き放された。
「5回は三者三振に抑えられたのですが、投球が単調になると簡単に捕まってしまいました。なんとか取り返したかった」
8回裏には鎌倉が口火を切る4連打などで同点とし、9回裏1死一、三塁、三番藤原が相手投手・須永英輝(後に日本ハム)の初球をとらえ、センター前へのサヨナラヒットとなった。
プロでは2005年に7勝も、怪我で2007年に引退。現在は兵庫県の「ヤング東加古川レッドアローズ」で小学生を指導する。
「メンバーで気持ちを合わせれば、僕らでも甲子園を掴み取ることができた。子供たちにもいろんなことを学んでほしいです」
◎<徳島>新野 4−3 明徳義塾・高知/1996年2回戦
夏初出場となった新野は、県大会でも見せた大逆転劇 “ミラクル新野” を甲子園でも発揮した。1回戦の日大山形戦では完封勝利を収め、迎えた2回戦は強豪・明徳義塾と対戦。6回まで0−3と追う展開の新野は、7回表に2死満塁のチャンスを作り、連打を浴びせ3点を奪い同点に。9回には先頭の福良徹(後に広島)が内野安打で出塁すると、ヒットエンドランと犠飛で決勝点を奪った。
◎<高知>土佐 3−0 浪華商・大阪/1953年準々決勝
県内トップの名門私立高校が、1953年に夏の甲子園初出場。初戦15得点を挙げ、金沢泉丘(石川)を倒し、そのままの勢いで迎えた準々決勝(この年は23校が出場し、土佐は2回戦から登場)は、春夏通じ16度めの出場となる浪華商との対戦となったが、堅守で浪華商打線を封じ込め、準決勝へ進出。その後、強豪・中京商(現・中京大中京)も破り、初出場ながら決勝に進出。松山商に僅差で敗れた。
◎<香川>丸亀 1−0 平安・京都/1990年3回戦
1990年時点で夏の甲子園26回めの出場で、1回戦では優勝候補の関東一高(東京)を下した平安。対する丸亀は、42年ぶり2度めの出場を果たした、県内トップクラスの進学校だ。下馬評では平安が圧倒的優位とされるなか、延長14回までもつれた雨天の投手戦を制した。
ストレートの球速で勝負するタイプではないことを自覚するエースの福家武さんは、冷静に相手を見ていた。
「かなりゆっくりと重心を落とすフォームにして、リリースの瞬間まで相手のバッターのタイミングが合っているかを見ながら投げていました。タイミングが合ってるときは、さらにゆっくりしたフォームにしたり、コントロールを重視して少し球速を抑える代わりに、大事な局面だけ力を入れるとか、そういうところに気を使って投げていました」
現在は大手企業に勤務する福家さん。頭脳的な投球で168球を投じたが「18回まで投げるつもりでいた」という。
「僕自身は一球一球、次の展開を考えながら投げられていたし、お客さんも沸いてくれるしで、とにかくマウンドでは楽しかった。香川の放送局で20年近く高校野球の解説をさせてもらえたのは、この試合のおかげです」
都道府県別に夏の甲子園の “番狂わせ試合” を選んでくれたのは、『高校野球100年史』(東京堂出版)の著書を持つ野球史研究家・森岡浩氏(61)だ。
「私が考えた選考基準は、(1)3回戦までで(2)過去50年以内の試合ということです。準決勝や決勝に勝ち進んでいる高校は十分に強くて、すでに “番狂わせ” とはいえませんからね。ですが、たとえば京都や高知などは、甲子園に出場できる高校が限られているうえに、たまに出てくる公立高校は、すぐ負けてしまうことが多いんです。そういった都道府県は、泣く泣く(1)と(2)、どちらかの基準を緩めました」
森岡氏の忘れられない “どんでん返し” 試合は、宇都宮学園×東海大相模だそう。異論は大歓迎。あなたの一番は?