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村上宗隆「令和の三冠王」へ…川上哲治、前田智徳、松中信彦ら左の強打者を輩出する熊本は “剣豪” の精神が生きている

スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2022.09.13 17:38 最終更新日:2022.09.13 17:43

村上宗隆「令和の三冠王」へ…川上哲治、前田智徳、松中信彦ら左の強打者を輩出する熊本は “剣豪” の精神が生きている

村上宗隆(写真・時事通信)

 

 ヤクルトの四番、村上宗隆(22)の三冠王が現実味を帯びてきた。

 

 9月12日の試合終了時点で、53本塁打(2位と17本差)、128打点(2位と46点差)、打率.333(2位と1分2厘差)とタイトルを射程内に収めている。

 

 村上の三冠王が実現すれば、2004年に松中信彦氏(当時ダイエー)が獲得して以来18年ぶりとなる。また、1982年に落合博満氏(当時ロッテ)が28歳で打ち立てた史上最年少記録を更新することになる。

 

 

 村上は、今夏の甲子園に出場し、弟・慶太が4番を務めた熊本・九州学院の出身。熊本からはこれまで数々の強打者が輩出されており、巨人で活躍し、“打撃の神様” と呼ばれた川上哲治氏、直近の三冠王の松中氏も同郷だ。

 

 昭和から現代まで野球を見続けているスポーツジャーナリスト・二宮清純氏が、熊本の “秘密” について語る。

 

「熊本は、右の秋山幸二(元西武)も好打者として印象に残っていますが、なんと言っても優れた左打者が多いですよね。まずは川上さん、近年では前田智徳(元広島)、松中でしょう。村上を加えてこの4人が傑出しています。

 

 川上さんの代名詞は “弾丸ライナー” で、『ボールが止まって見える』という名言を残しています。今の村上もその心境ではないでしょうか。

 

 前田はあの落合さんが天才と認め、ケガさえなければ、もっと記録を伸ばしていたでしょう。相手のウイニングショットを一振りで仕留める打撃は凄味すら感じさせました」

 

 熊本の “土壌” にはどんな特徴があるのか?

 

「熊本には川上さんや前田の取材でよく行きましたが、あそこは昔から武道が盛んです。剣道も強いですし、柔道家も金メダリストの山下泰裕さんや上村春樹さんなどが有名ですよね。野球のバッティングに関しても武道の精神があるような気がします。

 

 前田をはじめ、熊本出身者には、兵法書『五輪書』を著した宮本武蔵のイメージが重なります。“剣豪” といいますか、そういうタイプの打者が多いと感じます。

 

 松中も“剣豪” に連なる打者ですが、彼の場合はもうちょっと懐が深かった感じです。長打も打てるし、シングルヒットも打てる。だから三冠王を獲りました。村上は、前田と松中のいいところを合わせてさらにパワーアップしたような打者ですね。

 

 村上はプロに入ってから、先輩の青木(宣親)のすすめでヨガをやり始めたと聞きます。実際に彼はすごく体が柔らかい。打つときの構えではスタンスが広いので、安定感があります。

 

 股関節が柔軟だということは、ヨガのトレーニングも生きているのでしょう。武道では下腹部の『臍下丹田』に力を入れることを重視するように、ヨガでも体幹や重心をつねに意識します。だから、両者には共通性があると思います」

 

 村上には何を期待する?

 

「三冠王獲得はかなり可能性が高いと思います。MVPにもなるでしょうね。注目すべきは王(貞治)さんの本塁打記録55本を超えて、バレンティン(元ヤクルト)が持っているNPB最多の60本にどれだけ迫れるかですね。村上は5打席連続ホームランなど固め打ちをしますので、60本の可能性はあるんじゃないでしょうか。

 

 たしかに長打を狙うと打率に影響しますが、村上の場合やはり相手が勝負を避けますから、フォアボールが多くなりますよね。そうすると打率はそんなに下がりません。3打数1安打でも333ですから。“史上最年少の三冠王” は有力だと思います。

 

 チームが優勝を決めたあとの、記録だけがかかった試合でどれだけ伸ばせるか。かつては王さんの55本に並ぼうとすると、外国人に対して敬遠したりすることがありました。でも村上の場合は日本中が期待していますから、無意味な敬遠はやりづらいと思いますね」

 

 村上本人も発言しているとされるが、やはり “メジャー行き” はあるのか?

 

「いずれ行くでしょうね。本当に何十年に1人の逸材です。もともと入ったときからいい選手だと思っていましたが、ここまでの打者になるというのは誰も想像していなかったんじゃないでしょうか。ヨガをやり始めたのは5年後、10年後を見据えてのことでしょう。

 

 ヤクルトには山田哲人みたいにずっとチームに骨をうずめるという選手もいますし、青木のようにメジャーから戻ってきた選手もいます。きっと青木からはアメリカの話を聞いているでしょう。村上はある意味、いい先輩に恵まれた。

 

 ヤクルトは “老壮青” というのでしょうか、ベテランの青木、中堅の山田、そして若手の村上など、チームのバランスが非常にいい。

 

 連覇というのは本当に難しく、仮に今季実現すればノムさん(故・野村克也元監督)の監督時代以来2回めですが、今は村上という “不動の軸” がある。しばらくヤクルトの黄金期は続くかもしれませんね」

 

 稀代の主砲にはNPB記録を塗り替えるとともに、将来は “侍の四番” として海外へ羽ばたいてほしい。

( SmartFLASH )

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