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WBC “史上最強” 侍ジャパン、中国戦で見えた「牽制」の穴…ボークの基準が命取りにも
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2023.03.14 14:37 最終更新日:2023.03.14 14:53
WBCの1次ラウンドで、日本代表は4戦全勝。スコアを見ればいずれも相手チームを圧倒しており、「史上最強の日本代表」という評価に見合った戦いぶりだった。
ただ、今後の日本代表にとって不安を感じる場面も多少はあった。その一つが初戦となった中国戦、源田壮亮選手が一塁で相手牽制球に刺された場面である。
2回裏の日本の攻撃、1死からセカンドへの内野安打で出塁した源田選手は、中国の先発左腕、王翔選手の牽制でタッチアウト。初回に王選手の3四球などによる押し出しで1点は先制したものの、この2回は得点をあげられず重苦しい序盤戦となった。
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国際試合の難しさを感じた場面だった。いうまでもないが、源田選手は昨年までNPB6シーズンで通算盗塁数は155。2021年は24盗塁で盗塁王のタイトルを獲得している。そのような走塁の名手が牽制でアウトになってしまったのはなぜなのか。
もちろん、データの少ない対戦相手なので、牽制についてもデータがほとんどなかったのかもしれない。その一方で、NPBにおけるボークの基準が他国と異なることも、理由になるのではないかと感じた。
ふだんからMLBの試合などをよく見ているファンの方はご存じだと思うが、日本はボークの基準が他国に比べて厳しいと言われている。逆にアメリカでは緩いと感じる。
1990年代~2000年代にニューヨーク・ヤンキースなどで活躍した左腕のアンディ・ペティット選手(MLB通算256勝。背番号46はヤンキースの永久欠番。1996~2009年に5度の世界一に輝いたチームの黄金時代を支えた4選手である、いわゆる “コア・フォー” の1人)は、一塁への牽制を武器としていてピックオフ(牽制)は彼の代名詞にもなっていた。しかし、当時、元NPBの投手に言わせれば「日本ならボーク」とのことだった。
左投手の一塁牽制というのは本来、右足を一塁ベース方向に踏み出さなければならないとされているが、ペティット選手の場合はかなり本塁寄りに踏み出していた。それでもボークを取られずにアウトの山を築いていたのだ。
そのほかにも、たとえばセットポジションの際、「グローブを体の前で一度止める」ということについても定義が異なるようだ。日本ではかなりしっかり止めないとボークを取られてしまうが、アメリカではそうではない。
私は代理人としてNPBにやって来る外国人の投手を何人も担当したが、この点で苦労する選手も多かった。彼らのなかにはアメリカだけでなく、中南米のウィンターリーグでプレーした経験がある選手もいたが、「日本がもっとも厳しい」という評価だった。
今回、源田選手がアウトになった牽制は、左投手が軸足(左足)をプレートから外して素早く牽制するというもので、ボークの基準の違いはあまり関係なかったかもしれない。
しかしながら、ボークの基準が厳しいNPBでプレーしている選手と比べて、海外の選手はボークを取られるリスクが低いため、ふだんから牽制のバリエーションも豊富になっている。それに慣れていない日本の野手にとって、とくに走塁を武器にする野手にとっては、厳しい戦いになるだろう。
仮に今後の試合で、NPBならボークになるようなギリギリの牽制でアウトになるケースがあったとしても、選手個人を責めるのは酷ではないかと思う。
準々決勝からは負けたら終わりのトーナメントであるうえ、対戦相手も強豪国が続く。1点を争う緊迫した試合のなかで、日本の武器である走力がどこまで発揮されるのか、注目したい。
(文・小島一貴)
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