悲しみに打ちひしがれてコートで流した涙が、喜びの涙に変わった。
6月8日(現地時間)、テニスの4大大会・全仏オープン混合ダブルスで、加藤未唯(28)がティム・プッツ(35・ドイツ)とのペアで初優勝を果たした。
加藤はわずか4日前、女子ダブルス3回戦に出場したが、第2セットの途中で相手側のコートに戻したボールがボールガールの頭を直撃。大会側はこれを危険な行為とみなして失格とし、ポイントと賞金を没収されてしまっていた。
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「ロッカールームに引き上げても泣き止まず、心配したコーチがコンビを組んだ選手に『外に連れ出してほしい』と頼んだほど。その日の夜は食事もできず、ほとんど寝られなかったそうです。
その後、加藤は失格を不服として大会側を提訴。テニス界を揺るがす騒動の渦中の人となりましたが、逆境をはねのけて快挙を成し遂げました」(現地記者)
身長156センチと小柄な加藤。大型化が進むなかでの彼女の優勝は、異例のことだという。
「近年のテニス界は、大坂なおみ選手のように、女子でも180センチ以上の選手がザラにいます。加藤の身長は、シングルで戦ううえでは致命的なハンデ。
でも、ダブルスならペアを組む選手が大柄であれば、それほどの不利にはなりません。しかも、彼女には低身長を補って余りあるフットワークのよさと粘り強さがあります」(テニスライター)
彼女を優勝に導いた「粘り強さ」は、プロデビュー前から彼女の自負する強みだった。
〈自分の強みはフットワーク。少しくらい振られても食らいついていきます〉
この鼻っ柱の強さが伺える発言は、2013年当時、早稲田大学のテニスコートで練習に励んでいた18歳の加藤自身が答えたものだ。実は彼女、本誌の「新星美女アスリート」特集に笑顔で登場していた。テニスを始めたのは小学2年生のとき。きっかけをこう振り返っている。
〈陸上部の顧問の先生にスノーボードかテニスをやったらどうだと言われて、そのまま地元のテニスクラブに入会しました。スノーボードにしなかったのは、冬しかできないし、怪我が怖かったから(笑)〉
“消去法” からテニスを始めたという加藤だが、2012年には全日本ジュニアU-18女王に輝くなど、着々と実績を積み重ねていた。そんなアマ時代の彼女は、意外にもオタク気質だったようで……。
〈趣味は映画鑑賞と読書で、好きな作家は東野圭吾さんです。好きな男性のタイプは優しい人ですね(笑)。じつはAKB48の前田敦子さんの大ファンで、握手会にも参加したことがあるんですよ〉
あれから10年――。混合ダブルス優勝後のスピーチで、審判に執拗に抗議したペアに向け、「またどこかで再戦して、いい試合ができればと思っています」と語り、拍手喝さいを受けた加藤。AKBオタクの “新星美女” が、世界のヒロインへ――。次の大舞台は、7月のウィンブルドンだ。
取材協力・石内雅也