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大谷翔平「WBC奇跡の優勝」の舞台裏を日本代表公式カメラマンが明かす「チームメイトを感激させた親愛のハグ」

スポーツ 投稿日:2023.06.16 06:00FLASH編集部

大谷翔平「WBC奇跡の優勝」の舞台裏を日本代表公式カメラマンが明かす「チームメイトを感激させた親愛のハグ」

優勝の瞬間、帽子とグラブを投げ、喜びを爆発させた大谷(写真・Koji Watanabe-SAMURAI JAPAN/Getty Images)

 

 WBCの歓喜から、早2カ月以上が過ぎた。その余韻もあってか、プロ野球の試合には多くのファンが詰めかけ、熱戦の後押しをしている。

 

 また、6月2日からは「侍ジャパン」のWBCにおける激闘を振り返る完全密着ドキュメンタリー映画『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』が全国各地で封切られた。

 

 今回、アメリカの写真通信社Getty Images社を通じて日本代表のオフィシャルカメラマンを務めた渡辺航滋氏に、WBCでの日本代表の活躍の舞台裏、ファインダー越しに見た大谷翔平(28)のすごさを明かしてもらった。

 

 

「大谷選手は、小久保裕紀氏が監督を務めた2015年のWBSCプレミア12でも撮影しているんですが、今回、練習中にTシャツ姿になったところを見たら、腕の太さ、肩まわりのデカさに度肝を抜かれました。これが、メジャー仕様の肉体なんだと。8年前とは桁違いでしたね」

 

 さらに驚かされたのは、体の大きさだけではなかった。

 

「プレミア12の大会期間中の大谷選手は、笑顔を絶やさない、おとなしい青年という感じでした。試合中も、準々決勝のプエルトリコ戦で前田健太投手が投げているとき、ベンチでチームメイトに『マエケンさんはよくこんな大舞台で、ふだんどおりの投球ができるよなあ』と、感心していたくらいなんです。

 

 先輩選手が多かったこともあって、遠慮もあったと思いますが……。ところが今回、代表メンバーたちにあいさつする際に、進んで熱烈なハグをするじゃないですか。8年前の姿からは想像もできないし、やはりメジャーでの多国籍選手とのふれ合いの経験が変えたんでしょうね。

 

 アメリカでは、自己主張しなければ生きていけません。『大谷翔平はこういう人間なんだ!』と、周囲にアピールしなければいけないんです。合流最初の打撃練習で、名古屋のバンテリンドームの3階席にぶち込みましたが、あれも『これが大谷だ!』という自己主張の証しです。

 

 アメリカに渡って、彼はパフォーマーにもなっていた。試合中継を観た方は感じたと思いますが、ド派手なジェスチャーを何度もしていましたし、練習中もチームメイトとグータッチしたり、指差ししてウインクしたりと、ボディランゲージで盛り上がっていましたから。もう、完全な米国人になっていましたね(笑)」

 

 侍ジャパンといえば、超一流の野球選手だけが参加を許される集団。そのトップの選手たちでさえ、最初は大谷と遠慮がちに接していたという。そんなとき、仲介役を務めたのが近藤健介(29)だった。

 

「2人は日本ハム時代にバッテリーを組んでいたこともあり、いまでも仲がいいんです。大谷選手は代表合宿初日にロッカールームに来て、近藤選手とふざけあったり、ツーショット写真を撮ったりしていました。

 

 その光景を見ていたヌートバー選手や若手選手たちも、大谷選手の人柄にふれて距離感が一気に縮まりましたね」

 

「俺らがあこがれているのは米国選手じゃなくて……」

 

 もうひとりのレジェンド、ダルビッシュ有(36)の存在は、本当に大きかったという。

 

「ダルビッシュ投手は、変化球をとことん追求していてYouTubeで流していましたが、代表の投手たちもそれを観ていたんです。宮崎の合宿中、連日、彼のまわりを“生徒たち”が囲んでいました。日ハム時代を知る白井一幸ヘッドコーチも『大人になったなぁ』と驚いていたし、山本由伸投手は『ダルさんは投手として必要なすべてを持っている』と衝撃を受けていました。ただ、みんなの面倒ばかり見ていたため、自分の調整が遅れてしまったことは残念でした」

 

 日本ラウンドを全勝した侍戦士たちは、準決勝のメキシコ戦を不振だった村上宗隆(23)のサヨナラ打で制し、最高の形で決勝に進む。そしてアメリカとの一戦は、大谷の言葉で始まった。

 

「あこがれるのをやめましょう。あこがれてしまったら超えられないので」

 

 2023年の流行語大賞間違いなしのこのひと言には、余談があった。米国の錚々たるメンバーを警戒した大谷の名文句だったが、ある若手選手は「俺らがいちばんあこがれているのは、米国のスーパースターじゃなくて、大谷さんなんだけどなぁ」と、笑っていたという。

 

 そして、星条旗を持ったトラウトを先頭に、米国ナインがライト側から入場してくると、球場のボルテージは一気に上がった。ところがである。

 

「レフト側から、大谷選手が日の丸を肩に担いで、威風堂々と入って来た姿が、ぜんぜん負けていないんです。『これは勝てる!』と。じつは米国入りして、大谷選手とダルビッシュ投手の目つきやテンションが、それまでとまったく違っていたんです。

 

『本当の勝負はここから』という覚悟がみなぎっていて、ここまで変われるのかと驚きました。僕はサッカーのW杯や欧州リーグの試合をよく撮影に行くのですが、大谷選手の姿を見て、メッシ選手を思い出しました。

 

 ファンはホーム、アウェー関係なく、彼のプレーだけは見逃してはいけない、と見入ってしまうんです。大谷選手も同じで、マイアミは完全アウェーでしたが、彼の打席や投球のときだけは、観客は固唾をのんで見守る。メッシ級のオーラを感じ、唯一無二の存在だとあらためて思いました」

 

 そして日本は、第2回大会以来のV奪回に成功した。

 

「6月4日に、栗山英樹監督が映画公開の記念イベントで出席された際に、『大会2カ月前のメンバー選考発表会のときに、翔平から(日本は)勝つんですよねって、直接、言われたんだよ。そのときから、勝つことに執念を燃やしていた』と明かしていました」

 

“恩師との誓い”が、奇跡の優勝のシナリオの始まりだったのだ。

( 週刊FLASH 2023年6月27日号 )

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