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大谷翔平「外角克服」「逆方向への長打」「ファーストストライク打率向上」3年の全打席データ解析でわかった「3つの進化」
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2023.06.28 06:00 最終更新日:2023.06.28 06:00
週間MVPに選ばれ、ア・リーグ最多得票でオールスターに3年連続で出場することが決定。それでも驚かないほど、大谷翔平(28)の今季の活躍には目を見張る。昨季も、MVP級の打撃成績を残した彼だが、さらに進化したのはどの部分なのか。スポーツのデータ解析の先がけである、データスタジアム社の野球アナリスト・小林展久氏が解説する。
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進化(1)外角球の打率上昇
3年間のコース別打率を見てもわかるとおり、じつは大谷は昨季までの2年間、内角は得意にしていたものの、外角の打率は2割5分にも至らなかった。
「一方、今季は内角の打率を維持しつつ、外角の打率が約1割上がっています。また外角では、昨季はシングルヒットがほとんどでしたが、今季は打率が3割を超えて、長打も出ている点が決定的に異なります」(小林氏、以下同)
さらに、少々のボール球でも積極的に打ちにいき、安打にしているのが今季の特徴だ。
「ゾーン別打率では、ボール球の打率が昨季の.164から.230にアップし(外角に限れば.170から.244にアップ)、“悪球”でも仕留めています。バットを1インチ(2.54cm)長くしたことも、いい結果につながっていると思います」
進化(2)逆方向への長打増
いまやメジャーを代表する左打者となった大谷。今季は、逆方向への打球に顕著な進化が見られるという。
「特徴は、逆方向へのゴロがほとんどないという点。打球の割合を見ると、今季はゴロが8.9%に対し、フライ・ライナーは91.1%。それだけ、逆方向へ長打になりやすい打球が増えていることを示しています。月別に見ると、4月は逆方向への打球にあまり角度がつかず、なかなか長打にならなかった。5月に入って打球に角度がつくようになったものの、打ち上げすぎて内野フライが4月の2本から5本に増えた。6月はまだ3分の2を終えたところですが、内野フライが3本なのに対し、外野フライは10本で、長打が増えています」
小林氏が驚かされたのが、6月14日のレンジャーズ戦で、スミスから放った一発だ。
「138.1mの特大弾でした。通常、打球は引っ張ったほうが飛びますが、右打者が引っ張ったとしても140m級はなかなか打てない。それを流して打てるのが大谷選手で、今季は飛距離の伸びも目覚ましい。当然、本塁打の増加につながります。大谷選手のこの一発は今季最長で、2位のオルソン(ブレーブス)に約9m差をつけ、頭ひとつ抜けています」
進化(3)ファーストストライク打率約5割
今季の大谷は、本塁打数だけでなく、打率部門でもトップ10を維持している。そこにもまた、大きな進化があった。
「全打席に占める三振の割合が、2021年は29.6%、2022年は24.2%、2023年はここまで21.5%と良化傾向にあります。この理由は、打ち損じが減っていることだと思います。0ストライク時にスイングして、ファウルを除く打球になる確率が35.2%に上昇。つまり、そのぶん三振につながる2ストライクカウントになっていないわけです」
さらに、ファーストストライク(打者に最初に投じるストライク)の打率は5割近くある。
「ファーストストライクは、決め球の割合が増えがちな2ストライクよりも的を絞りやすく、空振りしてもリスクが低い狙い球。今季はその打率が約5割で、すでに9本塁打を放っている。2021年は、けっこう見逃していました。相手が警戒して、ボールゾーンに投げてくるという読みもあったのでしょう。あまりスイングせず、しても打ち損じが多かったため、打数は83にとどまった。それに対し、今季はすでに63打数で、ファーストストライクをとらえる確実性も上がっています」
小林氏は、今季の大谷は2021年と2022年の特徴を合わせた打撃をしていると指摘する。
「大谷選手は2021年に46本塁打を放って、長距離砲として覚醒しました。2022年は、本塁打数こそ前年ほどではありませんでしたが、三振をせずに率を上げていく打撃を志向しました。今季は、その2年間のいわばハイブリッドですね。本塁打数は両リーグ通じてトップですし、打率も3割近い。正直、言葉では表現できないほど無限の可能性がある選手。今後も、本塁打の数をどんどん増やしそうです」
強打者で高打率。まさに無敵状態だ。
引用・Baseball Savant データ解説・データスタジアム ※データは日本時間6月23日時点