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安治川親方の部屋開きに密着! 浮世絵が描かれた豪華4階建て“こだわり”は「稽古場チェックモニター」
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2023.06.29 06:00 最終更新日:2023.06.29 19:39
大相撲に、新しい部屋が誕生した。元関脇・安美錦の安治川親方(44)が興した「安治川部屋」だ。
安美錦は1996年、親類にあたる元横綱・旭富士が師匠を務める安治川部屋に入門。部屋はその後、師匠の「伊勢ヶ濱」襲名にともない、伊勢ヶ濱部屋となった。屈指の“業師”として長い現役生活を送った安美錦は、2019年7月に引退し、年寄「安治川」を襲名。伊勢ヶ濱部屋付の親方となっていたが、2022年12月に独立した。
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独立後は、江東区千田のビルを仮の宿舎として使用していたが、このほど同区石島に新しい建物が完成。6月16日に土俵祭りをおこない、18日には後援者や地域の人たちを招いて、部屋開きとお披露目会が開催された。
建物は4階建て。1階に稽古場があり、2階に力士の生活スペースと厨房。3階には応接室。3階の一部と4階が、親方一家の住居となっている。また、部屋に関取が誕生したときのためにと、個室も用意されている。
「いい部屋ができたと思います。自分が入門した『安治川部屋』の名を受け継がせていただいて感謝していますし、新たな一歩を踏み出せて、いまはワクワクしています」
そう語る安治川親方に、新しい部屋の“こだわり”を聞いた。
「1階の稽古場には、大きなモニター(写真11 右上の矢印)を設置しました。カメラで撮影したものをすぐに再生できるようになっていて、いまの動きはどうだったかなど、その場ですぐに確認することができます。動き方などを口で説明するよりも、実際に目で見たほうが、理解も早くなって効率的です。いまの若い世代は、そういうことに慣れていますからね」
新弟子は相撲経験がなくてもかまわない
2階の厨房も広々として、非常に使い勝手がよさそうだ。
「料理をするのも修業のひとつですから、楽しく充実した食生活が送れるようにと考えました。近所には広大な木場公園や美術館もあり、稽古を終えてリラックスできるいい環境だと思います」
階段横の壁や2階の生活スペースの襖には、相撲の歴史を感じられる浮世絵や錦絵などが描かれている。
「毎日、こういったものを目にすることで、自然と相撲の文化を感じることができると思うんですよ。長い歴史があり、私たちはその文化を後世に引き継いでいく立場。そういうなかに自分はいるんだということを、力士たちには感じてもらいたいと思います。
相撲部屋というのは、強くなる場であると同時に、人間として成長していく場であってほしい。そこがいちばんの“こだわり”です」
引退後、コロナ禍によってなかなか断髪式を開催できないなか、安治川親方は早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程で学んだ。
「早稲田で学んだことが、部屋作りにも生かされている」と、親方は語る。
また、地域交流にも力を入れていきたいという。
「相撲部屋は、その地域に根づいているのが本来の姿だと思います。地域の方々の理解や協力がないとやっていけません。お披露目会には朝から多くのお客さんに来ていただきましたが、近隣の方々に手伝っていただいて、本当にありがたいと思っています。
ここ石島という場所は、下町の風情が色濃く残る街で、人情味にあふれています。子供たちが生まれたとき、この付近に住んでいたこともあり、以前からお世話になっている人たちもいます。そこでいい土地を紹介してもらい、不思議な縁を感じています。力士たちも、地域の方々とふれあうことで、より人間として成長することができると思います」
現在、安治川部屋に所属する力士は4人。親方の甥にあたる安櫻(あんざくら・18・序二段)。ラグビー経験者の安強羅(あごうら・23・序二段)。青森の強豪校・三本木農業恵拓高出身で全国大会個人8強の実績があり、五月場所で初土俵を踏んだ安大翔(あんおおしょう・18)。
そして、ウクライナ出身のヤブグシシン・ダニーロ(19)は、名古屋場所の新弟子検査を受検予定で、すでに安青錦(あおにしき)という四股名が決まっている。そして、五月場所で初土俵を踏んだ呼出の安希隆(あきたか・16)も、部屋の一員だ。
「安櫻は2022年十一月場所、安強羅は2023年一月場所で初土俵ですから、まだまだこれから。いっぱい稽古をして、新しい稽古場にどんどん汗を染み込ませてほしい。
いまの時代、新弟子を探すのはなかなか難しいですが、安強羅のように相撲経験がなくてもいいと、私は思っています。野球だろうがサッカーだろうが、そこから相撲の世界に入ってきて強くなることは可能です。体が小さくたっていい。私だって入門時は、体重が100kgあるかどうかの体です。どんどんチャレンジしにきてほしい」
好角家たちを魅了した、角界きっての個性派が、どんな力士を育てていくのか楽しみにしたい。
写真・久保貴弘