九月場所を2日後に控えた9月6日、先場所で10度めの優勝を果たした横綱・照ノ富士の休場が発表された。膝痛や慢性的な腰痛に加え、持病の糖尿病のため体重が10キロほど落ちたとされ、休場は致し方ないものだった。元横綱で評論家の花田虎上氏は、今場所をどう見ているのか。
「先場所は相撲内容は悪いなりに優勝しましたから、出場すれば照ノ富士が優勝候補の一番手と見ていたのですが……」
だが、照ノ富士に加え、貴景勝も大関から陥落したことで、“本命なき九月場所”となっているようだ。では、照ノ富士に変わって優勝候補の一番手に推したいのは?
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「関脇の大の里ですね。先場所、照ノ富士に最初に土をつけたのが彼で、非常にうまく取りました。右を差したのに右をおとりとして、横綱が右から巻き返してきた寸前に手を離して逆に突き落とした。
あれは運動神経がよくないとできません。相撲の基本とは違うことをやるんですからね。僕らならできますが(笑)、彼もそれができるので『これはたいしたものだな』と感じています。
じつはこれまで、彼は何が強いかわからなかったんです。彼の出身校である日体大の監督は僕の先輩なので『何が強いのか』と聞いても、ニヤニヤ笑うだけで言わない。それが何かが、先場所わかったんですね。大きいのに運動神経がいいなと。
また、彼は石川県出身なので、先場所前は能登半島地震の関係で、いろいろな行事に駆り出されて疲れていた。出だしの4日までが、1勝3敗だったことが物語っています。でもそれを経験したことで、本人も師匠もどこまでで止めなければいけないか、ということがわかったと思います。そこを調整して今場所に臨むでしょう。
あれだけの素質があるので、サボったりすることもあると思うんです。天狗になるかどうかは本人次第ですが、強くなれば注意する人がどんどん減っていきますから。それはどの社会でも一緒で、自分をどう律するかが課題だと思うんですよね。ただ今場所に関しては、優勝の本命と言ってもいいと思います」
大関・琴櫻も推したい一人だという。
「彼には生まれ持った素質というか、体の大きさがありますからね。また、先場所の千秋楽で横綱に勝ったことが、いちばん糧になってるんじゃないですかね。あとは前に出ること。体が大きくて恵まれているので、後ろに下がって抱え込むような感じで相撲を取っているんですが、やはり前に出ることがいちばん大事だと思いますね。
前に出るということは、非常に苦しいこと。それを貫けるか、ということですね。逆に、下がることは楽ですから。そして、今後のためにも早く初優勝することです」
相撲巧者の2人として、小結の平戸海と東前頭七枚目の若隆景の名前を挙げた。
「先場所、小結で10番勝った平戸海がいい相撲を取ってますね。彼はとにかく左を早く差そうとする。これは、彼が好きだという千代の富士さんのまねをしているんですが、プラスアルファで自分の体に合う相撲を取り始めた。今、だんだん身についてきている段階なので、相撲が好きな方はそこを観ていただけるとおもしろいのかな、と思いますね。
もう一人は、右膝前十字靭帯損傷の大怪我で幕下まで落ちた若隆景ですね。長期休場でしたが、気持ちを切らさずに再度幕内まで上がってきた。先場所も十四枚目で11勝4敗の好成績。番付も七枚目まで上がってきたので、今場所は楽しみですね」
“本命なき秋場所”を制するのは、どの力士か――。
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