スポーツスポーツ

大谷翔平 DHベストナイン山崎武司氏が教える“専門ルーティン”「プレーオフ第一打席の入り方がカギ」

スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2024.10.05 21:00 最終更新日:2024.10.05 21:00

大谷翔平 DHベストナイン山崎武司氏が教える“専門ルーティン”「プレーオフ第一打席の入り方がカギ」

大谷翔平(写真・AP/アフロ)

 

 日本時間10月6日、大谷翔平が待ち焦がれた「ヒリヒリする戦い」であるポストシーズン(PS)が幕を開ける。ドジャースは、本拠地ドジャースタジアムでダルビッシュ有松井裕樹が所属するパドレスを迎え撃つ。

 

 試合を翌日に控えた5日、記者会見に臨んだ大谷は自信満々だった。初の大舞台での緊張を聞かれた際は「NO」と通訳を介さず英語で即答。さらに「小さい頃からプレーしたいと思っていた。楽しみの方が大きいですかね」と心身ともに充実感をあらわにしていた。

 

 それはそうだろう。惜しくも2012年のM・カブレラ以来の三冠王は逃したが、前人未到の「50-50」を達成したほか、ナ・リーグ8冠王に輝いた。右ひじのリハビリ中ということを完全に忘れさせる成績だった。

 

 本来なら、ここまでの数字を残したのであれば、シーズンMVPは「当確」といった報道があってもおかしくないが、その話は聞こえてこない。

 

「守備につかず、打つだけのDHだったことが関係しています。過去にも打撃3部門で素晴らしい成績をあげながら『守っていない』ことを理由にMVPを獲得できなかった選手はいます。DHはどうしても、打って、守っての選手より低く見られる傾向は、いまだにあります」(現地記者)

 

 

 確かに、DHには「打つだけ」と安易に見る傾向がなかったわけではない。日本球界でベテランの域に足を踏み入れたとき、初めてDH専従になり、自身2度めのホームラン王に輝きながら、DHへの偏見とも戦ってきた山﨑武司氏(55)が、「DH論」を語る。山﨑氏は2009年にDHでベストナインにも選ばれている。

 

「確かに守ってから打席に入る野手と、DH専門とを比べた場合、疲労度的にはDHのほうが楽ですよ。僕が本格的にDHとなったのは2005年に楽天に行ってからですが、最初は『守らんでええから楽や』と舐めていましたから(笑)。でも、やり始めてから、その考えは間違いだったとすぐに気づいた。とにかくやることが多いんです」

 

 山﨑氏は第1打席を大切にした。試合の展開に大きく作用する後半の打席にいい印象をもって入るためにも、最初が肝心と考えていたからだ。その意味でも本拠地・仙台の試合は難しかったという。

 

「普通の野手のように守ってから打席に入れば一球一球に集中しているし、少しではあるけど、そのたびに動いているんです。緊張もしています。そうすると自然に汗もかくし、それから打席に入ると体を動かしやすい。

 

 でもDHの場合はそうはいかない。味方が守っている間にアップをするわけですが、仙台の春先はまだまだ気温が低いんです。なので多めのアップをするんですが、寒いので汗が出にくい。第1打席が大事だと感じていたんで、汗をかくためにいろんなことをしました。ユニホームを着たままロッカー横にあるサウナに入ったりしたのですが、無理に汗を出しているのですぐに身体が冷える。厚着して打席に入ったこともありましたが、モコモコしてこれもダメ。結局、ティーバッティングなど多めに取り入れて、ようやく感じを掴みました」

 

 そうしたルーティンをファンは知らないし、周囲は「打つだけ」「打って当たり前」と見る向きが多かったという。

 

「楽天でのある年、いい成績を残したので自信満々で契約交渉の席に着きました。でもフロントの評価は思ったほどでなく、期待した額には程遠かった。それで理由を聞くと『DHだからねぇ。守っていないから、守備の評価がない』と。もう頭にきてね。『何言ってんすか!』と大声を出したことまでは覚えていますが、そのあとに興奮していたこともあって、何を言ったのかは定かではありません。でも、要求額は満額で勝ち取りました(笑)」

 

 こうしたDHへの偏見は、当然メジャーにもあり、だからこそいまだにDH専従でMVP受賞者がいないのかもしれない。だが、今季の大谷の活躍が「変えてくれる」と山﨑氏は期待する。

 

「地球上で誰一人やったことのない『50-50』に代表されるように、今季の彼の活躍は特筆ものです。当然MVPに値しますよ。日本みたいに『前例がない』は、アメリカでは関係ないと思っていたのですが、最近は向こうでも賛否が分かれているので、どうなるか注目しています」

 

 当然ポストシーズンへの期待も高まる。

 

「僕自身がそうであったように、第1打席の入り方が鍵になると思う。ド軍の本拠地ロスは温暖で、シーズン中はアップを強めにしなくても汗は出ていたでしょう。でも、10月に入ると朝晩は冷えるので、そこは気をつけたほうがいい。気温が下がると3、4打席目は体が自然と硬くなってしまいます。そこを注意してほしい。あとは、ルーティンをしっかり守って試合に臨んでほしい。そうすれば、おのずと結果はついてきますよ。“大谷ルール”に代表されるように、メジャー自体が大谷に動かされている感じですからね」

 

 まるで山﨑氏の助言が届いたかのように、大谷は前日会見で「(PSは)初めてなので、WBCとは違う。第1打席を大事に入りたい」と気を引き締めた。個人の成績同様、チームとしても“有終の美”を飾れるか――。

( SmartFLASH )

続きを見る

今、あなたにおすすめの記事

スポーツ一覧をもっと見る