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アスレチックス・森井翔太郎 “高卒渡米”の成功者・マック鈴木氏が断言「ほかのマイナー選手より二歩三歩、リードしている」
「文武両道のうえに、投げては最速153km/h、打っては高校通算45本塁打。日米が注目した逸材でしたが、最初からNPBは眼中にありませんでした」(スポーツ紙デスク)
桐朋高3年の森井翔太郎選手が1月16日(日本時間)、MLBのアスレチックスとマイナー契約を結んだ。甲子園出場はなし、偏差値70超の進学校出身、投打二刀流と、驚く点は満載だが、いちばん驚かされたのが、契約金の150万ドル(約2億3600万円)。
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これとは別に「学業補助金」の名目で、25万ドル(約3900万円)もつけられているという。NPBが規定している新人選手の契約金の上限である「1億円プラス出来高5000万円」を大きく上回る金額だ。
「183cm、89kgと、特別に体が大きいわけではないが、体が強い印象があります。そこにアスレチックスは惚れ込んだと思いますが、同球団は『財布の紐が固い』といわれているだけに、ここまでの好条件を出したことに驚かされました。じつは、球団はオークランドからラスベガスに移転し、2028年に新球場が開業予定。そのときの目玉選手に、という思惑もあるのでしょう」(同前)
ただし、NPBを経験せずにMLBに挑戦した約120人のうち、メジャーの試合に出場できたのは、過去にマック鈴木氏(滝川第二高中退)、多田野数人氏(立教大卒)、田澤純一(社会人野球)と3選手しかいない。しかも全員、投手だ。厳しい環境のなかで勝ち抜いたひとり、マック鈴木氏にその厳しさを聞いた。
「習慣が違う未知の世界に飛び込んだわけで、元からいる選手と比べてかなり遅れていました。ただ森井くんの場合は、あれだけの契約をしているので、マイナーで成績を残さないと上がれない選手よりは、二歩三歩、リードはしている。これは契約の強みですよ」
ただし、厳しい世界に変わりはない。
「そもそも、NPBで指名されない選手がメジャーに昇格するのは奇跡に等しい。大谷翔平選手クラスの、身体能力の高い選手が中南米から大勢、来ていますし、アメリカで150km/h投げても、アベレージ以下。
マイナーでも、アップ程度で投げて150km/hを出す投手がごろごろいるような世界。多田野くんも田澤くんも、日本ではドラフト1位候補。もともとちゃんと実力のある選手だったわけです」
野手が通用しない理由は?
「特殊能力が長けていないと厳しい。動くボールを遠くに飛ばせるとか、めちゃくちゃ足が速いとか、守備が絶妙にうまいとか。そういう光るものがひとつでもないと。満遍なくうまい人がトライしても難しい。日本人は満遍なくうまい人が多いから、チームとしては強いんですけどね」
アメリカでは“教えすぎない指導”が有名だが、練習施設もかなり充実しているという。
「アメリカでは日本ほど長時間の練習はありません。短い時間のなかで、自分が納得できる練習をする。足りないぶんを居残って補充していく、みたいな感覚がアメリカにはあります。また、毎日、試合がありますから、実戦から成長していける環境がある。施設に関しても、トレーナールームやウエイトルームが充実していて、早めに球場に足を運びたくなるんです」
アスレチックスは、どのような育成法を描いているのか。
「育成に時間がかかるのが投手。2025年は球数制限だったり、何イニングまでと決めていくはず。キャンプが終わってもアリゾナに残って、ルーキーリーグに参加させると思う。その間に習慣や英語などを覚えさせ、打者と投手のバランスをどうやってやっていくか、模索していくのでしょう」
最後に、マイナー契約にもかかわらず、NPBを大幅に上回る契約金について聞くと……。
「為替の関係で約2億3000万円になっていますが、それほど高いと思わないですね。それと、大谷選手の影響で二刀流というのが魅力的なんでしょう。2人分と考えれば安いと思っているのでは。また、日本で1億円でも、円安の影響で世界の価値からすると6000~7000万円しかない。アメリカで契約金をもらい銀行口座を開いて、学校まで行けて、アメリカに住む権利までもらえる。視野の広い保護者なら『メジャーに行きなさい』となるでしょう(笑)」
森井の新たな契約の形態が確立したことで、今後、有望な高卒選手の流出が増える可能性が高まる。それは、NPBの衰退につながる危険性もはらんでいる。