スポーツ
「W杯をしのぐ」賞金総額となったクラブW杯、世界的名将も警告鳴らす“選手の負傷”生む過密スケジュール問題

7月8日におこなわれた『FIFAクラブW杯2025』準決勝で勝利し、決勝に駒を進めたチェルシーFC(写真・アフロ)
6月15日から米国で開催された『FIFAクラブW杯2025』は、7月14日の決勝で1カ月に及んだ激戦の幕を閉じる。決勝はパリ・サンジェルマンFCとレアル・マドリードの勝者と、すでに決勝進出を決めたチェルシーFCのカードとなっている。
同大会は2000年に初開催され、2005年以降は2023年まで毎年単位で開催されてきたが、2025年から4年に一度の大会としてリニューアルされ、参加クラブは7から32と大幅に増えた。そして、同時に大会自体が大幅にスケールアップし、2022年のクラブW杯では賞金総額が15億円程度だったことに対し、2025年大会は約1500億円と、実に100倍の規模となっている。
賞金の内訳は、グループリーグでの1分けに対して約1億5000万円が支払われ、勝利なら約3億円となっている。浦和レッズは3戦全敗となり、パフォーマンスに応じた賞金を手にできなかったが、それでもAFC加盟クラブに支払われる出場賞金の約14億3000万円を獲得している。選手はともかく、クラブとして出場したい理由はここにある。
【関連記事:サッカーイラン代表「12日戦争」で北中米W杯出場に暗雲…史上初の「3カ国共催大会」中止の可能性も】
勝ち上がるたびに賞金は高くなり、もし優勝ともなればグループリーグで得た賞金に加え、決勝進出の賞金約45億円、優勝ボーナス約60億円を含めれば、最大で約176億円を手にする可能性がある。2022年カタールW杯の賞金総額は約616億円、優勝したアルゼンチンは約58億8000万円を得たが、ともにクラブW杯の額には遠く及ばない。一部で「W杯をしのぐ大会」と呼ばれる所以は、そこにある。
その一方で、大会開催に警鐘を鳴らす世界的名将が多数いることも事実だ。リヴァプールで2023-24シーズンまで指揮し、遠藤航を見出したことでも知られるユルゲン・クロップ氏もそのひとりだ。現在は『レッドブル』グループのグローバルサッカー部門責任者を務めている。
「クロップ氏が出場を反対する最大の理由は、選手にとって大事な休養期間を削られてしまうからです。欧州のトッププロともなると、リーグ戦、国内カップ戦、欧州チャンピオンズリーグに代表戦もあるので、年間70~80試合をこなします。2024年には、南米と欧州の最強国を決めるコパ・アメリカと欧州選手権がありました。そこに2025年はクラブW杯。2026年は北中米ワールドカップが開催されます。欧州各国リーグは、8月中旬には開幕を迎えるため、これらの大会に出場した選手は、ほとんど休みなしとなってしまいます。
クロップ氏は選手の健康面について懸念しており、ドイツ紙『ヴェルト・アム・ゾンターク』では、クラブW杯について『重要なのは試合そのもので、周囲のことは関係ない。だからこそ、クラブW杯はその点でサッカー史上最悪のアイデアなんだ。日々の業務にまったくかかわったことがない、あるいはもはやまったくかかわらない人たちが、何か思いついただけだ』と言及しています」(サッカーライター)
クロップ氏の心配が現実のものとなったのは、クラブW杯準々決勝でのことだった。バイエルン・ミュンヘンのジャマル・ムシアラがパリ・サンジェルマンのGKジャンルイジ・ドンナルンマと接触。ムシアラの左足首はあらぬ方向に曲がり、すぐさま担架が運び込まれた。折れ曲がった左足首を見たドンナルンマは、頭を抱えて涙を流すしかなかった。検査の結果、ムシアラの左足首は脱臼にともなう腓骨骨折と診断された。すぐさま手術を受けたものの、復帰は早くても11月以降になる見通しだ。
ムシアラの怪我は、北中米W杯で復活を目指すドイツ代表にとっても深刻な痛手となった。過密な試合スケジュールによって、このような不運が続かないといいが……。