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日ハム・新庄監督の“常識外”采配を阪神「亀新フィーバー」相方が語る「若手を一軍に上げてすぐ使う」型にはまらなさ

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記事投稿日:2025.09.17 19:21 最終更新日:2025.09.17 19:21
出典元: SmartFLASH
著者: 『FLASH』編集部
日ハム・新庄監督の“常識外”采配を阪神「亀新フィーバー」相方が語る「若手を一軍に上げてすぐ使う」型にはまらなさ

新庄監督について熱く語る亀山つとむ氏

 

 シーズン終盤、パ・リーグで首位ソフトバンクに肉薄し、逆転Vを狙う新庄剛志監督。しばしば“奇策”と評されながら勝利をもぎ取る采配の魅力について、阪神時代から新庄監督をよく知る亀山つとむ氏が解説する。

 

 亀山氏は、入団時から着けていた背番号67から00に変更した1992年を境に、一軍に定着。この年、自己最高となる131試合出場で140安打を放ち、オールスター出場、ゴールデングラブ賞を獲得するなど大活躍した。新庄監督との外野手コンビは、“亀新フィーバー”を巻き起こし、球界の注目の的になった。

 

「彼は、外野守備に誰よりも強いこだわりを持っていましたね。誰よりも守備範囲は広く、誰よりもうまく捕り、誰よりも多く本塁で刺す。そういう“欲”を持っている選手でした」

 

 新庄監督には、野球に対する独特の美学がある、と感じていたという。

 

 

「彼は努力する姿を見せないし、『努力してますよ』とも絶対に言わない。僕もですが、それらが見えてしまうと格好悪いと思ってましたから。サラッとするのがプロ、という考えでした。たとえばキャンプ中、彼は夜中に宴会場でバットを振っていました。でも、僕らが先にやっていたら、彼は振らずに帰っていく。振っている姿を見られたくないんです。もちろんほかの場所で振っていて、その証拠に1〜2時間後に彼が部屋に帰ってきたとき、汗だくでしたよ。

 

 彼は『ジーンズが穿けなくなるから、下半身の筋トレはしない』と言って、たたかれたことがあったでしょ。でもね、下半身のトレーニングはしてたんです。下半身が太くならないトレーニング法もある。筋肉を大きくしないで強くする方法です。でないと、あれだけの守備範囲を保てませんよ」

 

 コンビで人気を得たことにより、2人はグラウンド外でも行動をともにすることが多かった。

 

「カラオケボックスとかはよく行きました。個室なので、人目を気にしなくて済みますから。飲みに行っても、個室となると余計にお金がかかるので、カラオケボックスで遊ぶことが多かったですね。

 

 東京に遠征に行っても、意外に東京の人は声をかけてこないので楽でした。関西はたいへんでしたよ。どこを歩いていても何か言われます。負けた次の日はとくにたいへんで、道を歩いていただけでも『お前ら、歩いている場合か、道を』と。こっちも『いやいや、道は歩くやろ』と」

 

 キャンプや遠征先でも同様だった。

 

「性格が几帳面なんですよ。風呂上がりは1時間くらい、クシで頭髪をすいている。サラサラヘアを作るために(笑)。ホテルでの夕食はバイキングでしたが、普通はご飯とおかずを最初に持ってくるけど、彼はまずケーキからでした(笑)。メチャクチャな甘党で、コーヒーにも砂糖を5〜6杯入れてました。

 

 食事に関しては少食で、好き嫌いも結構あった。北海道にいるのに甲殻類アレルギーだし、お寿司屋さんに行っても昔は鰻、穴子、玉子……それぐらいしか食べなかった。それじゃあ『寿司屋じゃねえよ』と言ったことがありますもん。いまは、ちょっとイカが食べられるようになったとか。

 

 彼が滞在していたバリ島を尋ねたときに『ご飯は大丈夫なん?』て聞いたら、『大丈夫です。ナシゴレンとミーゴレンばかり食べてます』と言ってました。それでもあの体型を維持できる“不思議ちゃん”なんです。そうそう、入団時、腹はみごとに割れていましたが、腹筋ができませんでした(笑)」

 

 そんな新庄監督は、選手時代に指揮官としての片鱗はあったのか。

 

「いやいや、あれを管理できる球団があるんか、と思ってましたから(笑)。日本球界では難しいと。普通の野球人と価値観が違う。阪神に残っていれば1億円もらえたのに、残らずに2000〜3000万円でメジャーに行ったやつですから(実際は5年12億円の阪神より、メッツの最低保証額2200万円を選んだ)。みんな年俸が上がるからメジャーに行くのに、アイツだけはメジャーでやってみたいから行った。そこも含めて、いちばん男前かもしれませんね」

 

 将来を見越して、メジャーに行ったと?

 

「う〜ん、アメリカで勉強したんだろうけど、『勉強しに行きました』とは絶対に言わない。僕も取材で向こうに行って、彼に『英語は?』と聞いたら『なんで僕が英語を覚えなきゃいけないんですか。僕としゃべりたかったら、向こうが日本語を覚えるべきでしょ』と。まあ、そう言いながら勉強していたかもしれませんね。両国のいいところをうまくミックスできるくらいの年数だったんじゃないですかね」

 

 今季、史上最速で優勝を決めた阪神。猛虎軍団を率いる藤川球児監督と、新庄監督には共通点があるという。

 

「藤川監督は選手を機嫌よく持ち上げているけど、一方でコーチには厳しいらしいんです。だから、『お前らがちゃんとやらないと、俺らが言われる』と、コーチサイドは選手たちと積極的にコミュニケーションを取ろうとするんです。その結果、首脳陣と選手がいい関係を築けている。新庄日ハムもそれに近いと思いますね」

 

 新庄監督は、二軍から上げた若手を積極的に使う。

 

「新庄監督も藤川監督も、どんどん人を入れ替えるでしょ。若い選手を一軍に上げてすぐに試合で使う。しかも、『今日、打てなかったら(二軍に)落とすからな』ではなく、『30試合は使うから』と時間を与えて、その間に何とかせえ、という方針。これなら選手も腹をくくれます。たとえば、9月9日のソフトバンク戦で、今川優馬君を一軍に上げて即、使い、彼も結果を出した。そういうことを新庄監督は平気でできる。僕らのときは上げてもすぐには使ってもらえなかった。調子がいいから上げられたはずなのに、まずはベンチ。でも、使われずに5試合、10試合が経過して久々に出場したら、もう調子は落ちているわけです。それで打てないと『二軍に行け』ですから。何ごとも、できたてホヤホヤがいちばんおいしいのに。新庄監督ってエリートに思われがちだけど、出発点はドラフト5位入団です。だから、地道にがんばっている選手が好きだと思いますよ」

 

 コーチ未経験であり、MLB経験者という点も、新庄監督と藤川監督に共通している。

 

「2人とも、型にはまった野球をしない。メジャーテイストを入れつつ、臨機応変という感じがします。選手がのびのびプレーする印象はありますが、新庄監督も怒るときは厳しめに言いますよね。清宮(幸太郎内野手)が帰塁ミスでアウトになったとき、微妙なタイミングでしたが新庄監督は『リクエストは問題外』とスパッと切ったでしょ。ふだんは怒らないけど、怒らせたらシャレにならないぞと、選手はわかっています」

 

 亀山氏にとって、今季の新庄采配で印象に残っているものは?

 

「交流戦の横浜DeNA戦で、山崎福也(さちや)投手の打順を6番にしたことですかね。パ・リーグはDH制があって、ふだん打席に立っていない投手を6番に据えるなんてありえない。コーチ経験がないことで、逆に球界の常識じゃないことを正々堂々とできます。でも、山崎が打てば6番は正解だし、実際、打ちましたからね。おもしろいもので、常識で考えると6番・山崎は『なめるなよ』と野手に思われるのが普通。でも、逆に6番に入れることで『お前たち(野手陣)が情けないということだよ』と刺激になる。もちろん、次も山崎を6番に入れるなんてことはなかった。その辺のさじ加減が絶妙なんです」

 

 藤川監督同様、コーチ陣への要求は細かいという。

 

「キャンプや交流戦のときに聞いたんですが、山田勝彦コーチや八木裕コーチには、たとえばオーダーに関して細かく要求が出されるというんです。そういうところはいっさい見せないじゃないですか。彼は現役時代からよく言ってましたが、『白鳥は優雅に泳いでいますが、水面下では足を一生懸命、かいている。その姿を見せる必要はないですよね』と。ファンは『今日は何してくれるんだろう』と期待しますよ。2025年のオールスターで電飾のサングラスが話題になり、『(選手より)お前が目立つんじゃねえよ』の声もありましたが、いろんなことをつねに考えてますね」

 

 2025年で、新庄監督は日ハムとの契約が切れるが。

 

「優勝しなかったら辞める、優勝したら辞めると、いろんな意見がありますが、わかりませんね。ただひとつ、はっきりしているのは、日ハムの次の監督は誰でもやりにくいということ。あそこまで人気が出る人はいない。さらにその上を行くとなったら、ダルビッシュと大谷翔平しかいないですもん。新庄監督は勝ってるし、人を集めている。先ほど『あれを管理できる球団はない』と言いましたが、ありましたね。日ハムという球団が。その点は、素直に謝っておきました(笑)」

 

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