
MLBのワールドシリーズでMVPを獲得した山本由伸(写真・アフロ)
「MVPはヨシノブ・ヤマモトです!」
トロント・ロジャーセンターに居残ったドジャースファン、ナイン、関係者らの「ヤマ!ヤマ!ヤマ!」のコールがこだまするなか、応えるようにMVPトロフィーを持ち上げようとした山本由伸。しかし、同僚キケ・ヘルナンデスの力を借りなければ持ち上げることはできなかった。それほど疲れていたのだ──。
11月1日(日本時間2日)、ドジャースはワールドシリーズ(WS)第7戦でブルージェイズを破り、球団史上初の2連覇を遂げた。大谷翔平の活躍もさることながら、MVPに輝いた山本の活躍も “異次元” のものだった。WSの7戦中、3試合に登板して3勝0敗、防御率1.02。メジャー史に名を刻んだその投球は、まさに「魂の235球」だった。
いくら短期決戦とはいえ、球数制限を重視するMLBにおいて、今回の降板は異例尽くしだった。先発完投して中1日で肩を作ったり、先発して6回を投げ切った翌日に抑えに登場するなど、常識から完全に逸脱した起用法だった。
身長196cm、体重100kgが「MLBにおける右のパワーピッチャーの平均的体格」と言われるなか、身長178cm、体重80kgの山本はどうしても “弱々しく” 映る。なぜ山本はその肉体で、誰もマネできない快投が可能だったのか。
「山本は第6戦で先発し、6回96球を投げてシリーズ3勝めをあげました。試合後、山本はオリックス時代から体のケアをお願いしていた矢田修トレーナーに、これで投げ納めとばかりに『1年間、ありがとうございました』とあいさつしているんです。
ところが、矢田さんは『明日、ブルペンで投球できるくらいには持っていこうか』と信じられない言葉を返した。山本は半信半疑だったようですが、翌日『練習してみたらすごく感覚がよくて、本当に気づいたらマウンドにいました。のせられました』と試合後に語り、笑いを誘いました。
矢田さんも『ふつうの運動論から言うと考えにくいと思うんですけど、昨日より今日のほうが(状態が)いい。おかしいですよね』と驚きの表情を浮かべていました。その状態を可能にしているのが、筋肉の柔らかさのようです」(現地記者)
じつは4年前、本誌は山本本人に独特の練習法を聞いていた。
「僕はいっさい筋トレはやらないです。これはトレーニングを教わっている先生が、あまりウエイトトレーニングをすすめていないからです」(以下「」内は山本)
大谷のように、デッドリフトで225kgを持ち上げるようなトレーニングはしていない。その代わり、やり投げやブリッジなど独特の練習をルーティンとしていた。
「やり投げは、しっかり全身で投げてやることを主眼に置いてやっています。ボールとかだと小細工といいますか、腕だけで投げてしまったり、変な癖がついてしまったりするので。それをなくすためにやっています。
ブリッジも体全体をしっかり使えるためのトレーニングですね。じつは、こういったトレーニングは最初、周囲はみんな反対したんです。でも、僕はいいと思ってやっていたし、続けたことで結果も出たのです」
また、WSでも話題となった「連投」についても話を聞いていた。偶然にもインタビュー前日、120球以上を投げての完投勝利を飾っていたからだ。
「今日の体調は、『ちょっと疲れたな』という感じはあります。あとは多少の筋肉痛ですね。ただ、以前は100球以上を投げると、ひじの張りは1週間ほど続くことがありました。
でも、いいと思ったトレーニングをやり続けたおかげで、それもなくなりました。ただし、連投は難しいです。だから、大谷さんがエンゼルスで先発して100球以上投げ、翌日にDHで出ていることに関しては、『ヤバい』というか。
自分に当てはめるとしたら、全然想像がつかないですね。ほんともう、『よくわかりません』となりますよ、すごすぎて(笑)」
最後に「MLBへの思いは?」と聞くと、「う~ん、いろいろな事情があると思うので。まあ、そのときどうなるのか、いまは想像もつきませんね。西? 東? 暖かいところがいいですね」と答えてくれたが、その言葉どおり、西海岸のロサンゼルスに居を構えることとなった。
このインタビューから4年。山本の肉体は劇的な進化を遂げ、連投も可能なものになっていた。
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