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「最高です!」ヒーローインタビューはなぜつまらないのか?中田翔、ますだおかだ増田、元NHKアナに聞くアスリートが「本音」を失った理由

スポーツ 記事投稿日:2026.03.29 06:00 最終更新日:2026.03.29 06:00

「最高です!」ヒーローインタビューはなぜつまらないのか?中田翔、ますだおかだ増田、元NHKアナに聞くアスリートが「本音」を失った理由

中田翔は、「ファンのおかげです」という言葉は本心だと言う(写真・長谷川 新)

 

 近年、アスリートのインタビューの受け答えが「似た言い回し」ばかりになってしまったと嘆くファンは少なくない。一方で、「自分の言葉」を持つアスリートのひと言が、記憶に深く残ることもある。その違いはどこにあるのか。競技史に残る言葉を残した選手や名実況者、熱狂的ファンと考える。「消えた本音」と「ヒーローインタビューの現在地」――。

 

「最高です」「ファンの皆さんのおかげです」「応援よろしくお願いします」

 

 アスリートのヒーローインタビューでは、常套句が繰り返される。そのなかに、異端児がいた。日本ハム時代の2019年、直前の打者が2人続けて敬遠された後、サヨナラ満塁ホーマーを放ち、お立ち台で「舐めてんのかなと思いまして」と本音をぶちまけた中田翔(36)である。

 

「まあ、純粋に舐めてんのかなと思いましたし。俺、バカだから言っちゃう。普通は炎上が頭をよぎるでしょ。一時期、猫をかぶっていたら、ちょっとした発言で炎上したんですよ。『だったら素でよくね? 面倒くせえし』と方向転換しました。不思議なことに、僕が真面目ぶってると『最近あいつ、おもしろくねえな』とブツブツ始まるんですよ」

 

 現在、中田のように本音を堂々と述べる選手はほぼ絶滅しているが、昭和のプロ野球では珍しくなかった。

 

 日本シリーズという大舞台では “球界の盟主” が挑発されていた。1973年の第1戦で完投勝利を収めた南海の江本孟紀は「巨人打線は(パ・リーグ2位の)阪急に比べると、だいぶ楽ですよ。怖さがないもの」と言い放ち、1987年には西武の工藤公康が勝てば日本一の第6戦の前日、「巨人? (パ・リーグ2位の)阪急から機動力を取って粘りをなくしたチーム」と報道陣に語っている。

 

“ビッグマウス”の潮流は、平成に入った1989年を境に止まる。日本シリーズで近鉄が巨人に3連勝。お立ち台に上がった加藤哲郎は「なんてことなかったですね」などと平然と話した。翌日の新聞には「今の巨人ならロッテのほうが強い」などのコメントが掲載され、いつの間にか「巨人は(パ・リーグ最下位の)ロッテより弱い」という表現が流布していった。

 

 加藤の発言を機に、巨人は4連勝で大逆転の日本一に輝いた。これ以降、野球界では「挑発は損」という認識が生まれ、いわゆる“ビッグマウス” が激減していった。ネットやSNSの出現もあり、その流れはもとに戻らないだろう。熱狂的な阪神ファンで、球団OBとも仲のいいますだおかだの増田(56)が話す。

 

「アスリートに10聞いて、4返ってきたら十分だと思います。以前なら6、7ぐらい話してくれていたはずです。今は、違うニュアンスで拡散されるリスクがある。だったら、言わないでおこうと考える人も当然いますよね」

 

 そんな時代に、なぜ中田は炎上を恐れず、本音を言えたのか。

 

「どう振る舞おうが、敵は絶対にいる。1000人が応援してくれたら、2000人のアンチがいますよ。これは、どの選手も同じだと思います。その人たちにもヘコヘコして、仲間に取り入れる必要はない。敵なら、敵としてやり合おうよという話になってくる」

 

 ビッグマウスのみならず、意外な一面が見えるとファンは喜ぶ。2013年8月17日のソフトバンク戦(帯広)、中田がルーキーの大谷翔平とお立ち台に上がると、こんなやり取りがあった。

 

アナ ライトスタンドのなかには、一昨日から大谷選手を待っていた方がいらっしゃいます。

 

大谷 本当にありがたいですし、そういう方の前で1本でも多くヒットが打ててよかったかなと思います。

 

アナ 中田選手、帯広のファンは明日も大きな一発を期待しています。明日に向けて意気込みをお願いします。

 

中田 ……僕のために待ってくれていた人はいないですかね?

 

 球場は爆笑に包まれた。

 

「まあ、パフォーマンスが7〜8割ですけど、そんな気持ちも2〜3割あったかな。とにかくね、思ったことを言ってしまう。でも、『中田選手、人間味があって好きです。たまにおバカなこと言っちゃうけど、私は好きです』というファンの方がすごく多かったんですよ。だから、素を出してよかったなと」

 

 ヒーローインタビューで素顔をさらけ出して、ファンが増える例はほかにもある。2001年6月21日、阪神の広澤克実は甲子園でのお立ち台で「次、サヨナラヒットを打ったら『六甲おろし』歌います」と宣言。巨人戦で決勝ホーマーを放った2カ月後、公約を実現した。

 

「正直、広澤さんにはヤクルトや巨人の選手というイメージがありました。でも、あの瞬間、阪神ファンが受け入れましたよね。FAやトレードで加入した選手にとって、ヒーローインタビューはチャンスだと思います」(増田)

 

 楽天から阪神にFA入団した2011年、藤井彰人は新井貴浩とともにお立ち台に登場。新井が「(チームメイトが)『さすが男前』と言ってました」と振ると、藤井は「顔しか取柄がないですけど、頑張ります」とファンの笑いを誘った。

 

「翌日も猛打賞で呼ばれて、『バッティングのほうは顔ほど自信ないですけど』と言ったんですよ。それまでも、僕らのラジオ番組のネタコーナーに、藤井さんのルックスいじりを送ってくるリスナーはいましたけど、すべてカットしていた。でも、あのひと言で解禁されました」(増田)

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出典元: 週刊FLASH 2026年4月7日号

著者: 『FLASH』編集部

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