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「最高です!」ヒーローインタビューはなぜつまらないのか?中田翔、ますだおかだ増田、元NHKアナに聞くアスリートが「本音」を失った理由

スポーツ 記事投稿日:2026.03.29 06:00 最終更新日:2026.03.29 06:00

「最高です!」ヒーローインタビューはなぜつまらないのか?中田翔、ますだおかだ増田、元NHKアナに聞くアスリートが「本音」を失った理由

中田翔は、「ファンのおかげです」という言葉は本心だと言う(写真・長谷川 新)

ますだおかだ増田は、「ヒーローインタビューはチャンスだと思います」と語る(写真・木村哲夫)

 

アスリートの話は、本当はおもしろい!

 

 だが、お立ち台では、聞き手と語り手の決まりきった受け答えに終始してしまいがちだ。優勝争いのさなか、インタビューの練習をしていたという徳勝龍はこう話す。

 

「あのときは13日めくらいから、風呂の中で考えていました。用意して実際に言えたのは『自分なんかが……』だけですけどね。でも、ふだんは取組に集中しているので、インタビューにまで気がまわらないです。だから、『一番一番に集中して頑張ります』とか同じパターンになってしまうんでしょうね」

 

 典型的なヒーローインタビューは「今のお気持ちは」から始まり、「ファンの皆さんにメッセージをお願いします」で締めるパターンだろう。中田はどう考えていたのか。

 

「『ファンの皆さんのおかげです』という言葉は本心ですよ。苦しいときでも、移動の空港などで『中田、下向くな!』と声をかけにきてくれて、強く心に響いた経験がある。その声援に応えないと俺は情けないなと思ったし、プロ野球選手としてカッコよくありたいと感じました」

 

 一方で、同じ質問の連続にはうんざりしていた。

 

「日本ハムのとき、お立ち台に上がらなくても、いつもベンチ裏で囲み取材を受けていました。『今日の内容はどうでした?』と毎日聞かれると、面倒くせえなと思うんですよ。『毎回同じ質問するなら、昨日のコメントをそのまま使っとけば』と言ってました。だから、違う角度の質問が来ると、選手側のテンションも変わるかもしれないですね」

 

 SNSの誕生も、インタビューのルーティン化を加速させていると増田は指摘する。炎上の危険性をはらむマイナス面だけでなく、アスリート自らが発信できるプラス面があるからだ。

 

「僕自身、取材してくれるから答えるけど、本音の部分では、自分の言葉で直接伝えたほうが誤解されにくいと感じています。スポーツ選手も『本心はSNSで発表しよう』という気持ちになっても仕方ないと思います」(増田)

 

 既存マスコミが「オールドメディア」と揶揄されるなかで、ヒーローインタビューの価値はどこにあるのか。取材される立場から、増田が語る。

 

「意外な視点の質問を投げかけられると、自分の頭で考えようとします。『よく見ているな』と感じれば、ほかで話していないエピソードを思わず披露する場合もあります」

 

 山本はこう考えている。

 

「試合中、選手は心の中で自分と対話しながら決定を下していますよね。その中身を言葉で説明してくれると、『だからあのプレーが生まれたんだ』と競技への理解が深まる。でも、自分でさえ気づいていない場合や、言語化できないときもある。

 

 それを引き出すためには、聞き手が試合や練習をよく見て、選手の心に潜んでいる『本当は言いたいこと』を質問できるといいですよね。なかなか難しいんですけどね。風船の膨らんだところにピンを刺せば、中から紙吹雪が出てくるんです」

 

 本当は“言葉”を持っているのに、気づかれていない選手は無数にいる。番組で、阪神の首脳陣や選手に話を聞く機会の多い増田はこう話す。

 

「現役時代、鳥谷(敬)さんはお立ち台で話すことがいつもだいたい同じで、『再放送ちゃうかな?』って思うほど。でも、引退したらめちゃくちゃ興味深い話をしてくれる。岡田(彰布)さんも選手のころは、饒舌なイメージはなかったですよね。

 

 お二人のように、まだ“見つかっていない”選手はいると思います。先日、お話を聞いた大竹耕太郎投手はおもしろかったですよ。幼少期から『みんなが右なら、僕は左に行きます』というタイプだったそうです。だから、あんなスローボールを投げるんやと思ったし、これから大竹さんの言葉に注目したいですね」

 

 中田はお立ち台の重要性をこう位置づける。

 

「ヒーローインタビューで話題になると、興味のない人が見るきっかけになりますよね。今、“いちファン”として言えばね、言葉だったり人間味だったり、競技以外の要素でも惹きつけてもらいたいなと思いますね。僕みたいな悪い意味での盛り上げ方はしなくていいから」

 

 聞き手がルーティンにとらわれない質問を繰り出し、アスリートが本音や意外な素顔を明かす。そして、メディアやファンが揚げ足を取らなくなれば、ヒーローインタビューはさらに興味深いものになるだろう。

 

※文中敬称略、名前・所属チームなどは当時のもの

 

取材/文・岡野 誠
1978年生まれ 「NEWSポストセブン」に執筆した「検証 松木安太郎氏『いいボールだ!』は本当にいいボールか?」が第26回「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」デジタル賞に。著書に『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記 1979-2018』(青弓社)

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出典元: 週刊FLASH 2026年4月7日号

著者: 『FLASH』編集部

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