
小城桂馬被告
国際的に活躍していたバトントワリングチーム「GENESIS」に所属する10代の生徒に、わいせつな行為をしたとして、2024年4月29日、チームの元指導者、小城(こじょう)桂馬(けいま)被告が、強制わいせつの疑いで京都府警察本部に逮捕された。翌年12月15日、京都地裁は小城被告に懲役6年の実刑判決を言い渡している。
「小城被告は立命館大学時代、『バトントワリング部の星』と呼ばれるほどの実力者でした。事件が起こったのは、2023年の冬のこと。小城被告は事件発覚後、海外に “逃亡” しており、警察庁は外務省に、小城被告のパスポート返納を命令するように依頼していました。結局、その返納期限直前に帰国した彼を逮捕した形です」(社会部記者)
本誌は事件当時、バトントワリング関係者らに取材し、被害の実態と、小城被告が逮捕されて、なお苦しむ被害者Aさんの様子を報じてきた。
「じつはAさんは、2025年1月の地方大会から競技に復帰されています。それだけ聞くと以前の元気な状態に戻ったという印象を持つかもしれませんが、ご両親の話によると、競技に復帰したからといって、体調がもとに戻ったというわけではないのです」
こう語るのは、被害者をよく知るバトントワリング関係者だ。Aさんは今、どのような状況にあるのか。
「突然じんましんが出たり、夜中に目が覚めて眠れなくなってしまうことがあり、いまだに通院が欠かせない症状が続いているようです。ご両親が言うには、『おそらく元の体にはもどらないだろう』とのことです」
それでも競技復帰を果たせたのは、時間の経過とともに、症状が出た際の対処の仕方が徐々にわかってきたからだという。
深刻な性被害の後遺症。日本バトン協会は、そうしたAさんの症状を認識しているのだろうか。協会関係者が明かす。
「小城被告が逮捕された2024年、バトントワリングの世界組織であるWBTF(世界バトントワリング連合)から、小城被告が所属していたチーム『GENESIS』の代表・稲垣正司氏に、処分が出されました。内容は、世界大会に関係する選手の指導禁止です。
しかし、協会はこの処分の一部しか公にせず、稲垣さんの名前も明らかにしませんでした」
さらに、今回の処分の裏で、協会はある “アピール” をおこなっていた。本誌は、2025年6月に、日本バトン協会が日本スポーツ協会に送った文章を独自に入手した。そこには、このような文言が記されている。
《当協会構成員である選手について、競技活動復帰と国際大会出場に関するご報告をさせていただきます。》
《当該選手は、2023年に発生した事案により、一時的に大会出場を含む選手活動の継続が困難な状況にありました。しかしながら選手自身のたゆまぬ努力と、関係各位のご理解・ご協力のもと、競技不活動への復帰を果たしております。》
《現在は本選手の競技活動には一切支障がない状況となっております》
つまりAさんが、「競技活動には一切支障がない状況」となったため、競技活動に復帰することができた、という報告だ。しかし、前述のとおり、Aさんの体調は全回復とは言いがたい状況にある。しかも、この文言は被害者の両親に一切知らされていなかったというのだ。
「Aさんのご両親は、後にこれを見た瞬間、『競技に復帰できたからといって、私らに連絡もなく、すべてが解決して “一件落着” と言わんばかりの報告をするとは、何を考えているのか』と激怒していました。
そもそも協会は、Aさんの復帰にはほぼ関わっておらず、そのことも両親の怒りを買ったようです」(前出・バトントワリング関係者)
さらにショッキングな “事件” も起きた。前出の協会関係者が続ける。
「選手や協会の関係者が大勢集まる会合があったのですが、協会の幹部の一人が『私は、ハラスメント被害を受けた、Aさんの競技復帰が何よりも嬉しい』と、本来秘匿すべき被害者の名前を暴露してしまったんです。
Aさんもその会合に出席していて、発言を目の前で聞いたそうで、被害の事実と被害者が自分だということを同時にばらされてしまった形になりました。
これには、Aさん本人だけでなくほかの出席者らも驚いていました。Aさんと仲のよい選手らが、会の終わりに励ましていました」
協会の問題意識の薄さが露呈してしまった事件といえるだろう。前出・バトントワリング関係者は、被害にあったAさん本人の今の心情についてこのように吐露する。
「ご両親に、Aさんがいま一番望まれていることはなんなのかとたずねると、 『普通にバトンがやりたいだけなんや』といつも言ってます」と返ってきました。
現在も地元で練習を続けるAさんですが、じつは練習場でもともと所属していた『GENESIS』のメンバーと練習がバッティングすることも多いようです。そこでは、稲垣さんとすれ違うこともあるといい、それをきっかけに体調を崩してしまうことも多いとか。
時には、Aさんが予約した後から、『GENESIS』が同じ練習場を予約することもあるといいます。こうした現状を、Aさんのご両親は何度も協会に相談しているそうですが、いまなお改善しておらず、不信が募るばかりのようです」
性加害問題に多く携わってきた、橋本智子弁護士は、これらの事例について私見を述べる。
「どれもひどい事例だと思いますが、大勢の前で被害者の名前を明かしてしまったことについては、本人の意に反した事情のアウティングとして、問題性が非常に高いと感じます。
今回の事件では、競技界におけるカリスマである指導者が加害者となりました。もとより、性犯罪は被害者が責められやすいという事情がありますが、今回の場合は、おそらくより一層その性質が強いものでしょう。
名前を明かしてしまった当人はわざとではないのかもしれませんが、Aさんが攻撃の対象となりやすい状況下での実名の暴露は、さらに被害者を追いつめることになってしまいかねません。
さらに、練習会場のバッティングは、どこまで協会の責任があるのかはさておき、チームや協会が配慮してしかるべき事案だと思います。被害者が体調を崩してしまうという状況を避ける努力をどこまでしたのか、チームや協会がどこまでその必要性を感じているのか、疑問です」
これらの事案について協会に見解を問うと、このような回答が返ってきた。
《本件につきましては、当協会としても重要な事案であると認識しており、これまで関係者とともに慎重に対応してまいりました。》
《本件は選手およびご家族のみならず、関係者および関係機関のプライバシーに関わる極めて重要な事項を含んでおります。》
そして、一部事実と異なる内容が含まれているとしながらも、《検討の結果、回答は差し控えるとの結論に達しました》という。
Aさんが「普通にバトンができる」ようになるには、まだまだ時間がかかるようだ。協会は、はたしてその背中を押せているのだろうか。
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