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大谷翔平「目標設定シート」に記された「運の引き寄せ」思考
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2018.05.24 16:00 最終更新日:2018.05.24 16:00
ーー全米に”二刀流フィーバー” を巻き起こしている大谷。そんな彼を15歳のころから見つづけたライターの佐々木亨氏が、スーパースターへ駆け上がった怪物のすべてを「本人の言葉」とともに語った。
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大谷家はご両親、兄、姉の5人家族。きょうだい3人がものすごく仲がよいというわけではなかったようですが、家族が自然とリビングに集まる環境で育ち、ご両親が愛情を持って見守っていた印象があります。
彼の人に愛される性格は、幼少期に培われたのでしょう。ご両親の記憶では、ほとんど?ったことがないそうですが、唯一、父親の徹さんが?ったのは、大谷が大事にしていた『ハリー・ポッター』の本にちょっと傷がついたとき。
「誰がやったんだ」と泣く大谷に、徹さんが「そんな小さなことで怒るんじゃない」と?った。もっとも大谷本人は、「まったく覚えていない」と笑ってました。
■「寝ることは得意ですね」
野球を始めたのは小学3年に上がる直前でしたが、徹さんが送り迎えした車の中ではいつも寝ていたそうです。帰宅してもソファですぐ寝てしまう。夕飯を食べずに翌朝まで寝てしまうこともしばしばあったようです。まさに「寝る子は育つ」を地でいくような子供。今もそれは変わっていません(笑)。
■「同年齢の子が同じ実力なら僕でない子を使うと思う」
徹さんは大谷の小学校時代は所属チームの監督を、シニア時代はコーチを務めていたので、大谷にとっては父であり指導者でもあった。
「息子である自分が試合に出るためには、圧倒的な実力がなければいけない。だからこそ、やることはやっていました」と言っていましたね。
小学校時代に野球ノートをつけていて、徹さんからのアドバイス、自身の反省などが書かれていました。よく書いていたのは、徹さんの3つの教え。
(1)大きな声を出して元気よくプレーする。
(2)キャッチボールを一生懸命練習する。
(3)一生懸命走る。
これは、今も意識していると言っていました。日ハム時代、大差で負けている試合で、きわどい内野ゴロで一塁にヘッドスライディングをした。栗山英樹監督は「危険だ」と怒ったんですが、これこそ徹さんの教えを今でも守っている証拠ですね。
■「目標を160kmに設定したらその球速は出せない」
花巻東高の佐々木洋監督は、入部した生徒に「目標設定シート」を書かせます。大谷は「160キロ」と書いた。じつは、ウエイトルームの天井に別の紙に書いたものが貼ってあって、そこには「163キロ」と。
その真意を尋ねたら、「160キロを目指したら158キロくらいで終わってしまう可能性があるので、目標数値は高めにしました」と。これには佐々木監督も驚いていました。
■「先入観は可能を不可能にする」
佐々木監督は言葉を大切にされる方。印象的だったのが「先入観は可能を不可能にする」という言葉です。160キロの球を投げるイメージがなければ、絶対にそこまで辿り着かない。自分で限界を作ったら、可能性を伸ばすことはできないという教えです。
大谷はこの言葉に心を打たれ、「誰もやっていないことをやるんだ」「非常識な発想でいくんだ」「道を自分で切り開いていくんだ」という意識を高校時代から持っていたんです。
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目標設定シートに書かれた「運」という言葉。ここに、大谷の「ちゃんとした人間に、ちゃんとした結果が出てほしい=運を引き寄せる、との考えが詰まっています」と佐々木氏は言うのだ。
ささきとおる
1974年岩手県生まれ 雑誌編集者を経て独立し、スポーツライターに。おもに野球をフィールドに活動するなかで、大谷翔平選手の取材を花巻東高校時代の15歳から続けている。著書の『道ひらく、海わたる大谷翔平の素顔』(扶桑社)が発売中
(週刊FLASH 2018年5月8・15日号)