
W杯北中米大会のオランダ戦で同点となるゴールを決めた中村敬斗(写真・JMPA)
「オランダ戦が終わったあと、敬斗に『W杯で絶対に点を取りますという約束を守ってくれてありがとう』とLINEしたんです。敬斗からは『ありがとうございます。必ずグループステージ突破を決めます』と返事がきました。本人もめちゃくちゃ嬉しかったみたいです。私も本当に感慨深くて嬉しくて。もう涙が出ました」
こう喜びを語るのは、W杯サッカー日本代表の中村敬斗(Sランス)が中学1年から5年間所属した三菱養和サッカースクールの生方修司コーチだ。
6月14日(日本時間15日)、日本はアメリカのダラスでおこなわれたW杯の初戦で強豪オランダに2対2と引き分け、早朝の日本は歓喜と興奮に包まれた。中村は久保建英(ソシエダ)からパスを受けると、ファーサイドへ打つと見せかけて、ニアサイドへ右足を振り抜き、日本の初得点となる同点ゴールを奪った。ペナルティーエリア左は、中村が最も得意とする“敬斗ゾーン”と呼ばれるエリア。生方コーチは中学生だった彼が何度もこの位置からシュートを打つ姿を見てきた。
「グラウンドにあるシュート板に向かって、左からのカットインでシュートの練習をよくやっていました。ゴールが空いているときはキーパーを立たせてリアルなシチュエーションを作ったり、同じような形でコーンを置いてガードを立たせて打ったり。とにかくいつまでも練習をしているので、『朝になるぞ』とよく怒りました(笑)。あのころの敬斗の姿と今の姿が重なって……。しかもW杯初出場、初スタメンで日本の初得点ですからね。嬉しいを通り越して、早朝から近所迷惑なぐらい絶叫していました(笑)」
生方コーチには忘れられない“中村からのプレゼント”がある。それは彼がガンバ大阪に入団後の2019年、Jリーグの「YBCルヴァンカップ」でニューヒーロー賞を受賞したときのことだ。副賞だったヤマザキビスケット社製品1年分を、三菱養和サッカースクールに届けてくれた。
「スクールの子供たちで分けたんですが、本当にみんな喜んでいました。とにかく敬斗のその気持ちが嬉しかったですね。今スクールに通っている子供たちも、自分たちの先輩がW杯で得点したのを見て、すごく驚いて興奮していました。練習の前はその話で盛り上がっていましたね。敬斗には養和の良き先輩としてますます活躍してほしいです」
中村にとっても、同クラブで過ごした日々は特別なようだ。生方コーチはこんな話をしてくれた。
「敬斗は今でも、モチベーションを上げたいとき、気持ちを奮い立たせたいときに養和で戦った2015年の高円宮杯の動画やVTRを見ているんですよ。敬斗は養和のジュニアユース時代がいちばん楽しかったって言ってくれるんです」
当時を思い出しながら懐かしそうに話す生方コーチに、今後のチュニジア戦、スウェーデン戦について聞いた。
「オランダは相当レベルが高くて、優勝候補じゃないかなと思いながら試合を観ていました。あれだけ体格がいいディフェンダーを相手にゴールを決めた意義は大きい。敬斗はこういうときに乗ると止まらなくなるというか、もう完全に(得点を取る)スイッチが入っちゃってると思います。森保監督が今後どういう使い方をするかはわからないですが、ストライカー的な感じで点を取るか、チャンスメーカー的にアシストをするか。どちらにしても点に絡む仕事は、これからどんどんやるんじゃないかと思います。
敬斗から『養和に銅像を建ててくれ』と言われているんで、得点王でも獲ったら考えようかと思います(笑)」
三菱養和のグラウンドから飛び立った中村は憧れのW杯の舞台で輝き、スクールに通う子供たちに夢を届ける。
写真・JMPA
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