
ラウンド32でレッドカードとなったアメリカ代表のフォラリン・バログン(写真・アフロ)
北中米W杯は7月6日(日本時間7日)、ラウンド16がおこなわれ、ベルギーがアメリカを4-1で下し、8強入りを果たした。2018年ロシア大会の3位以上を狙うベルギーと、2002年日韓共催大会以来のベスト8入りを目指すアメリカの一戦となったが、勝負以前に注目されたことがあった。
ラウンド32でボスニア・ヘルツェゴビナを下したアメリカだが、試合中にエースのフォラリン・バログンがDFタリク・ムハレモビッチの足を踏んでしまい一発退場。当然、次戦のベルギー戦は出場停止処分となったのだが……。
「国際サッカー連盟(FIFA)は、相手の足を踏みつける反則にはとくに厳しい目を向けており、踏みつけた時点で退場は当然のこと。複数試合の出場停止になる可能性もあるのです。
当初はファウルを取られなかったのですが、VARが介入したところ、踏みつけるシーンがハッキリと映っていました。競り合いのなかでのことで故意には見えませんでしたが、VARに加え、主審が直接判断。アメリカは猛抗議しましたが、判定が覆るわけがありませんでした」(サッカーライター)
ところが、ベルギー戦を明日に控えた7月5日(同6日)、その判定が覆る。FIFAは、バログンに対する1試合の出場停止処分を1年間保留すると発表し、一転して同選手はラウンド16のベルギー戦に出場できるようになった。
この驚きの発表を受けて、アメリカのドナルド・トランプ大統領は「FIFAが正しい判断を下し、大きな不正を是正してくれたことに感謝する!」と言及。さほどサッカーに興味のない大統領の投稿だけに、「権力の行使では」と大きな注目を集めた。
さらに事を複雑にしたのが、トランプ大統領がFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長に電話をかけ、バログンの出場停止処分について再検討を求めたということだ。
「双方とも出場停止処分の回避を要請したこと、受理したことは否定していますが、電話があったことは認めています。話し合いがあったことは想像にかたくありません。
なぜなら、インファンティーノ会長は、トランプ大統領に『FIFA平和賞』を授与するなど昵懇(じっこん)の仲ですから。しかもFIFAの事務所はトランプタワーにあります。“密室” での話し合いで、アメリカはエースの起用が可能になったわけです」(同前)
W杯への政治介入や忖度は厳しく制限されているが、過去には同様な “事件” があった。1982年スペイン大会のフランス対クウェート戦でのことだった。
「フランスが3-1とリードして迎えた後半35分でした。フランスのMFアラン・ジレスが4点めを決めましたが、クウェートの選手たちが猛抗議を始めました。
というのも、ジレスが蹴り込む直前、スタンドでホイッスルを吹いた観客がいた。その笛を主審が吹いたものとクウェートの選手たちは勘違いし、一瞬、プレーを止めたのです。もちろんプレーを止めたクウェートの選手たちの過失であり、得点は認められるべきでした。今のようにVARで確認できる時代でもありませんでしたから。
ところが、選手以上にこの判定に納得いかない “御仁” がいたのです。スタジアムの貴賓室で試合を見ていたクウェートサッカー協会の会長で、同国の王族であるシェイク・ファハド王子です。
王子は制止を振り切ってピッチに入って猛抗議。そればかりか、判定が覆らないと見るや、選手を引き揚げさせようとしたのです。この前代未聞の行動に、主審はフランスのゴールを取り消すしかありませんでした。まさに、権力者に屈した瞬間でした。
試合は3対1から再開され、フランスが正真正銘の4点めを決めて終わりました」(専門誌記者)
ただ、試合を終えたFIFAはいつもどおりの威厳を取り戻したのか、王子の圧力に屈して判定を覆した主審に資格停止処分、ファハド王子に警告、そしてクウェートサッカー協会には罰金という厳重な処分が下された。
トランプ大統領が、もし出場停止処分撤回に圧力をかけたのだとしたら、ファハド王子同様、厳重な処分が下されてしかるべきだろう。
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