
FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長(写真・アフロ)
「政治とスポーツは切り離されるべき」
国際サッカー連盟(FIFA)が長年、掲げてきたこの原則が、いま大きく揺らいでいる──。
発端は、北中米W杯ラウンド32での、ボスニア・ヘルツェゴビナと米国の一戦。米代表FWのフォラリン・バログンが、DFタリク・ムハレモビッチの足を踏んでしまい、一発退場となった。これに対して、ドナルド・トランプ米大統領は「あれはファウルですらない」と真っ向から異議を唱えた。驚くべきは、その先である。トランプ大統領はFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長へ直接、連絡を取り、処分の見直しを求めたのだ。
「7月6日、FIFAは、バログンの出場停止処分を1年間、サスペンデット(猶予)すると発表したんです。VARで危険なファウルと判断され、FIFA規律委員会は1試合の出場停止、4万ドルの罰金を科していたにもかかわらずです。バグロンは次のベルギー戦に出場しましたが、アメリカは1-4で敗れました。もちろん、FIFAはトランプ氏の要請との因果関係を認めていませんが、今回の一件は物議を醸しています」(スポーツ紙記者)
英紙『The Guardian』は、この一件を「歓迎されない不適切な介入」と断じ、「米国開催のワールドカップの信頼を傷つける行為」と厳しく批判した。さらに同紙が問題視したのが、トランプ氏とインファンティーノ会長の“蜜月関係”である。
その象徴とされるのが、2025年末の組み合わせ抽選会だった。インファンティーノ会長は、自ら創設した「FIFA平和賞」の初代受賞者にトランプ大統領を選出。「世界平和への卓越した貢献」と理由を掲げたが、この人選は世界中で物議を醸した。今回、『The Guardian』は、この表彰を「FIFA史上、もっとも露骨な政治的アピールのひとつ」と振り返り、「インファンティーノ会長は世界サッカーの管理者というより、トランプ氏の友人として振る舞っているように見える」と辛辣に切り捨てている。
「インファンティーノ会長は2016年、FIFAの会長に就任しました。FIFAの拡大にもっとも成功した会長という評価もあります。しかし、トランプ大統領との関係は以前から懸念されていました。実際、スイス生まれのインファンティーノ会長は、長らくイタリアを居住地としていましたが、最近、トランプ大統領の自宅『マール・ア・ラーゴ』がある米フロリダ州に移住しています。また、FIFAはニューヨークに事務所を新たに開設することも決定しており、それはマンハッタンのトランプタワー内と発表されています」(同前)
FIFAはこれまで「政治から独立した組織」であることを繰り返し強調してきた。しかし今回の騒動は、その看板に自ら泥を塗ったと言われても仕方がないものといわれている。W杯という世界最大の祭典がおこなわれているなか、サッカー界はいま「権力」と「公正」の間でもっとも重い宿題を突きつけられている。
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