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試合を見せろ!サッカー女子が牽引するイラン・サウジの社会変革

スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2018.07.04 07:00 最終更新日:2018.07.04 07:21

試合を見せろ!サッカー女子が牽引するイラン・サウジの社会変革

 

 ロシアで開幕中のワールドカップは、日本チームの活躍以外にも見どころが満載だ。

 

 たとえば、アメリカから敵視され、外交的にも経済的にも苦しいイラン。6月20日、イランはスペインと対戦した。その実況中継が見られるということで、首都テヘランのアザディ・スタジアムにはイランの国旗を持った男女が大勢押しかけることに。

 

 

 実は、過去40年にわたり、イランでは女性が男性と一緒にスポーツ観戦することは禁止されていた。今回、初めて「家族席」を設けることで、女性ファンにも観戦が許された。

 

「待ってました!」と数千人の女性が殺到したのだが、「場内設備の不備」という理由で、警察によって入場を拒否されてしまう。

 

 納得しないのは熱狂的なサッカー女子たちだ。全員がスタジアムの入り口で抗議の座り込みに突入。騒ぎを聞きつけた女性たちが多数応援に駆け付け、「イランチームを応援させろ」と大合唱した。

 

 これにはイランの内務大臣も圧倒され、警察に指示を出し、希望者全員をスタジアム内に入れさせ、一件落着。イランの女性たちが勝利の雄叫びを上げたのは想像に難くない。

 

 同じ頃、サウジアラビアでは初めて女性に運転免許証が交付された。それまで世界で唯一、女性に車の運転を認めてこなかったのだが、若き皇太子の民主化の一環で女性でも運転可能になった。

 

 とはいえ、海外で運転免許を取得した女性に限られているため、初日に交付を受けたのはたった10人。それまで女性の権利拡大を求め、運転免許取得の活動を展開してきた女性たちは、逆に警察に拘束されてしまった。

 

 サウジアラビアは世界で最も厳格にイスラム教の教義を守っているお国柄。音楽会やスポーツ観戦にもいまだ女性は入れない。映画館ですら、今年になって初めて開放されたほどだ。

 

 そんなサウジでも、ようやくスポーツ競技場の「家族席」に女性が入れるようになった。

 

 イランでもサウジでも社会を変えていくには女性の力が欠かせない。そのきっかけを作っているのがワールドカップであり、オリンピックなのだ。スポーツの持つ力の大きさを、改めて感じる。(国際政治経済学者・浜田和幸)

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