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【大相撲職人たちの匠の技】(4)ちゃんこ作りに綱打ち……雑務はお任せの「世話人」
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2016.03.21 16:02 最終更新日:2016.03.22 15:11
まさに、相撲界での“裏方の裏方”とも呼べる存在が世話人だ。現役時に幕下や十両経験が長く、年寄名跡(みょうせき)を得ることはできないが、引退後も相撲協会に残って、おもに雑務を担当する。文字どおり世話を焼く“頼れるおじさん衆”である。定員は13名(現在14名在籍)、定年は65歳。
また、同じように引退力士が協会に残り、若手の指導や雑務をこなす「若者頭(わかいものがしら)」という役もある(定員は8名)。
仕事の範囲は幅広い。白法山さん(びゃくほうやま、60歳、春日山部屋)は、1971年に初土俵、15年間の力士生活を送った後、世話人となった。
「とにかくなんでもやるよ。場所中の案内係や警備、巡業ではテントを張ってちゃんこを作ったり、関係者に配る力士の手形も作る。支度部屋で、『ゴミはちゃんとゴミ箱に捨てろよ』なんて注意したりね」
こう話している間も、若手力士の顔を見れば、「ちゃんと四股(しこ)踏んでるか。上に上がれないぞ」「脚の怪我どうなんだ? ちゃんと医者行ってるか?」と声をかける。
用具の運搬・保管から支度部屋の管理、若手の指導まで、文字どおり世話を焼く人なのだ。部屋の親方とは違い、もう少しフランクな存在だろうか。
また、横綱のいる部屋、一門にとって綱打ちは大事な行事。年に3回、国技館での本場所前に、新しい綱が打たれるのが恒例だ。汗だくになり、手取り足取り若手力士を指導しながら中心的に働く。
「早く引退してゆっくりしたいよ(笑)」と言いながら、また若手を見つけ「おい、稽古してるか?」と声をかける。ファンにもあまり知られることのない存在だが、この世話焼きの“頼れるおじさん”たちがいないと、相撲界はうまく回らない。
(週刊FLASH 2015年11月24日号)