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なぜ日本では「右の大砲」が育ちにくいのか?スポーツ 2019.03.31

 

 近年MLBでトレンドとなり、日本にも広まりつつあるFBR(Fly Ball Revolution:フライボール革命)。日本でFBRを取り入れ、理想の打撃に近づきつつあるのがソフトバンクの主砲・柳田悠岐である。

 

 代名詞のフルスイングから広角に鋭い打球を打ち分け、高打率と長打、四球、さらには走塁までを高い次元で両立し、今や誰もが認める日本最強の打者である。MLBでも間違いなく通用するだろう。

 

 

 柳田は元々、打球が上がるタイプではなくドライブ回転がかかりやすかったが、打球の鋭さや逆方向への伸び方は当初から非凡なものがあった。トリプルスリーを達成した後はシフトの網に引っかかるなどして若干成績を落としたが、フライを意識して打球を上げるようになると、ホームランがまた増えだした。

 

 そして2018年は打撃の理想形、ただフライを打ち上げるのではなくセンター返しのライナーを中心としたスタイルとなっていた。

 

「フライボール革命」を実践するためにはアッパースイングが有効だが、日本ではダウンスイング信仰が強く、アッパースイングは「邪道」と思われがちだ。それにはいくつか理由がある。

 

 まずは、「打撃の神様」川上哲治の指導である。川上氏が少年野球教室でダウンスイングを熱心に指導する映像が残っている。また、現ソフトバンク会長の王貞治氏は現役時代、日本刀を持って天井からぶら下げた紙の短冊を、ダウンスイングで素振りし続けた。その鬼気迫る表情は映像に収められており、人々の脳裏に鮮明に刻まれている。

 

 しかし、実際に試合中の川上や王のスイングを映像で見ると、ダウンスイングではない。

 

 王のホームランは最下部から17度の角度でスイングしており、理想の角度である19度と近い。王の一本足打法はアッパー傾向が強くなり「すぎて」しまうため、それを矯正するために日本刀でダウンスイングの練習をしていたそうだ。打者としても監督としても頂点に立った彼らのイメージが、必要以上に独り歩きしてしまったのではないだろうか。

 

 また、日本の少年野球では軟式のボールが採用されており、ダウンスイングで叩きつければ大きくバウンドする。守備の未熟な少年野球かつ土のグラウンドでは、「転がせば何かが起こる」のも確かで、一発を狙うよりコツコツと当てていけという日本的な思考ともマッチして、ダウンスイング信仰が浸透していったものと思われる。

 

 日本では綺麗なストレートを良しとする文化があり、ホップするようなボールを投げる投手が多いから、打者には上から叩くイメージも必要なのだろう。日本だけでなく、実はアメリカの選手もかつては「ゴロを狙っていけ」と指導されていたそうだ。

 

 そもそも、ダウン/レベル/アッパースイングという区分け自体が不毛である。

 

 実際のスイングを見ると、バットの軌道の切り取る場所次第でいくらでも変わる。理想的なスイング軌道はナイキのロゴのような軌道を描くため、トップから最下部まではダウンスイングで、最下部近辺ではレベルスイングとなり、それ以降からフォローにかけてはほぼアッパーとなる。どこを切り取るかによるだけの形式論からは早めに脱却することだ。


 
 日本の異常な「ダウンスイング信仰」とともに深刻なのが「逆方向信仰」だ。バッティングで最も打球速度が出るのはボールを引っ張った時だし、最高のチームバッティングはホームランである。そればかり意識すると打撃は粗くなるため、逆方向への逆らわないバッティングも必要なのだ。

 

 しかし、日本では過度なスモールベースボール信仰や技術信仰、結果論からの過剰なチームバッティングを求められるあまり、逆方向への打撃を目指しすぎた結果として多くの打者が本来の打撃を崩している。特に右打者は深刻である。

 

 走者が一塁や二塁にいる場面において、左打者の場合は引っ張って長打を狙うことと、最低限セカンドゴロを転がして進塁打を狙うことは相反しない。そのため、左のプルヒッターは「チームバッティングができる」と評価され、バッティングを矯正されにくい。

 

 また、野球は三塁がライトから離れているため、ランナーが一塁にいる際にライト前ヒットを打てば三塁まで進めることができる。そのため、同じ打球でもライト方向へ飛ばすと高く評価されやすいのである。

 

 だが、右打者はそうはいかない。思い切り引っ張った打球がサードやショートの正面に飛んだ時は左打者の場合よりも併殺になりやすい。引っ張った結果アウトになると、なぜ逆方向に打たないのかと咎められる。

 

 日本のアマチュア野球はトーナメント制がほとんどで、「絶対に負けられない戦い」が続くため、基本的に野球に余裕がない。そのため、過度にチームバッティングが求められ、打ちにいった結果としてアウトになることを許されない雰囲気が強い。

 

 この短期決戦のメンタリティは日本の長所でも短所でもあり、土壇場で信じられないような逆転劇を生む一方、長期戦において大局観を欠いて短期的な結果を重視しすぎ、打撃力の芽をつ摘むことも少なくない。日本で「右の大砲」が育ちにくいのは、こうした要素も大きいだろう。

 

 

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