「いつも坂本に要求しているのは『3000本安打を目指せ!』ということです。彼の反応? 『無理です』と(笑)」
巨人・坂本勇人(30)について、こう語るのは野球評論家の井端弘和氏(44)だ。史上2番めの若さで1500本安打を達成した坂本が、いまの調子を維持できれば、3000本安打も夢ではない。
今季は打撃3部門でいずれもセ・リーグ上位。6月4日には、約4年ぶりに巨人軍の四番打者も務めた。守備も、「12球団の遊撃手で唯一、余裕を持ってプレーしている」と井端氏が絶賛するほど、安定している。
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「坂本自身も今季の打撃が好調な理由を、『いいリズムが守備からきている』と語っている」(巨人担当記者)
その守備の恩師が、井端氏だ。かつては同じ遊撃手としてチームメイト。2018年までは、巨人の内野守備走塁コーチとして坂本を支えた。今回、2人の関係性を象徴する「事件」を、井端氏が初めて打ち明けた。
「僕が巨人に移籍したばかりの2014年のオープン戦で、坂本から『グラブについて悩んでいる』と打ち明けられたんです。それで、中日時代に使っていたグラブを『試しに使ってみるか?』と渡しました。
その試合の初回でゴロをさばいてベンチに帰ってくると『いいっすね』と気に入った様子。そのまま返してくれなくてね(笑)。以来、彼は自分のグラブとして使い続けているんです」
一流選手の野球道具が、いわば “強奪” された事件だが、「自分のはまだほかに替えがあったので」と井端氏は言う。それよりも気にしていたのは、グラブの網の中心部にあった、井端氏の中日在籍時の背番号「6」の刺繍だ。
「僕の中日時代の背番号が刺繍されていたグラブを、巨人で坂本が使うのはどうかと思ったら、奇しくも坂本も同じ背番号。不思議な縁を感じましたね」(井端氏、以下同)
その結果が今季の打撃絶好調に繋がっているとなれば、“強奪事件” を「今なら許す」となって当然だろう。
井端氏はゴールデングラブ賞を7度獲得した名手。坂本が、そのグラブを使いはじめて、今年で6年めを迎えた。
「それだけ使えば当然、傷んできます。でも紐を替えたり、破れた箇所はミシンで縫ったりと、大事にしてくれてる。オイルを入れて革が柔らかくなりすぎるのを防ぐため、長年、彼は遠征時にも簡易冷蔵庫を球場に持ち込み、攻撃時には冷やしているんです。
そこまでケアしているのは嬉しいんですが、この間、さすがに『そろそろ替えろよ』と言いました(笑)」
いまやグラブは坂本の「体の一部」となった。だが、恩師から継承したのは、それだけではない。井端氏が続ける。
「中日時代に見ていた彼の守備は、『つねにバタバタしている』ということ。捕球、送球で上半身にものすごく力が入っていたからです。守備は、いかに上半身の力を抜くかが私の極意。
そこで、『上半身の力が抜けた状態でのエラーならしかたないよ』とアドバイスしたんです。そのことを理解してから、彼の守備は格段に上達しました」
ユニホームの袖にある「C」は、2015年から務めるキャプテンの印。セ・リーグ最速で20本塁打に到達した打撃と、守備でチームを引っ張る巨人の大黒柱は、今日も恩師の言葉を胸にグラウンドを駆け回る。
(週刊FLASH 2019年6月25日号)