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日大アメフト部「悪質タックル」コーチが日雇い派遣師に転身

スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2019.08.07 06:00 最終更新日:2019.08.07 06:00

日大アメフト部「悪質タックル」コーチが日雇い派遣師に転身

 

「××さん、ナンバー〇〇-〇〇の車に乗ってください!」

 

 8月上旬のある暑い朝、ひときわガタイのいい男の、テキパキした指示が飛んでいた。会社前で運転手に指示を出すその男は、労働者たちとにこやかに談笑していた。

 

 時間は、朝6時30分。関西のとある事業所に、続々と集結するトラックやワゴン車。男の指示に従い、労働者たちが車に乗り込み、現場へ向かう。男は建築・土木・解体現場に労働者を派遣する “番頭” 役のようだ。

 

 

 日大アメフト部のコーチだった井上奨氏(30)は、日雇い労働者の人材派遣などを手がける企業で、「派遣師」として華麗なる転身を遂げていたのだ。井上氏に声をかけると、笑みを浮かべてこう答えた。

 

「ちょっと待っててください。これからみんなを、車に乗せていかんとあかんので。また戻ってきますから」

 

 みずからワゴン車のハンドルを握り、現場へと消えていく。30分後、言葉どおりに戻ってくると、「暑いですね。待たせてすいません」と、記者を気遣いながら、語り始めた。

 

「日大を解雇されて、去年の9月に地元の関西に戻ったんです。これからどうしようかと考えていたとき、『もう1回、うちでイチからやり直さへんか』と、いま勤めている会社に誘っていただいたんです」

 

 この日をさかのぼること2週間前、スーツにネクタイを締めた井上氏の姿が、東京地検立川支部にあった。

 

 関東学生アメリカンフットボール連盟は、“悪質タックル” を指示したとして、内田正人・前日大監督(63)と井上氏を除名。日大も第三者委員会の報告を受けて、2人を懲戒解雇した。

 

 一方、警視庁は2019年2月、タックルをした宮川泰介選手に対して、「2人が傷害を意図する指示をした事実は認められない」との捜査結果を、東京地検立川支部に送付している。

 

 2つの正反対の “処分” が出ているわけだ。司法担当記者が、この事情を解説する。

 

「じつは第三者委のヒアリングと、その後の警視庁の聞き取りで、食い違う点が多く、まだ検察の捜査が続いている。だが最終的には、2人は不起訴処分とされる見込みだ」

 

 地検立川支部で直撃したときは、多くを語らなかった井上氏。だが今回、率直な気持ちを明かしてくれた。

 

「第三者委は2時間、連盟は3時間。たった1回、ヒアリングに呼ばれただけ。警察の聞き取りは、1カ月間毎日、丸1日やる。携帯の中身まで調べられて、しんどかった。でも、それぐらい徹底的にやってくれないと。人の人生を決めることなんですから」

 

 内田前監督とは、いまでも連絡を取り合っている。

 

「たまに『おーい元気か?』と電話がかかってきます。『〇〇(選手名)はどうしてる?』と聞いてきますが、『監督、もう僕もフェニックス(日大アメフト部)じゃないんで』と返しています。本当に短い会話です(笑)」

 

 労働者に指示を出し、現場をまわすさまは、まるでアメフトで指揮を執る姿のようだ。

 

--アメフトへの未練は?

 

「検察の処分も決まっていない状態で、フットボールについて、軽々しく言えません。現場の労働って、本当にしんどい。だから、僕のキャラクターでそれを忘れさせたい。いまは第二の人生という気持ち。こう見えて僕まだ30歳なんで(笑)」


(週刊FLASH 2019年8月20・27日号)

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