東京五輪が1年後に迫るなか、8月25日に「世界柔道」が日本武道館で幕を開ける。本番と同じ会場でおこなわれる、五輪の前哨戦。その激戦を見逃すわけにはいかない。
そこで、2000年シドニー五輪100キロ超級決勝で “世紀の大誤審” に泣いた、元男子日本代表監督・篠原信一氏(46)に見どころを聞くと、「個人戦だけで金は8つ獲れる」と威勢のいい宣言が飛び出した!
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「見どころは世界中の選手が、目の色を変えて挑んでくること。ほかの国際大会、たとえば『柔道グランプリ』や『柔道グランドスラム』と違って、世界柔道で優勝すれば、世界王者の称号が与えられるからな。ここで勝てば、東京五輪を前に、海外のライバルにプレッシャーもかけられる」
もうひとつ、階級によっては、複数の日本人選手が出場することも見どころだ。
「ここでの成績が、東京五輪代表の “選考レース” にかなり影響してくることは間違いないな。たとえば、2人が出場する男子66kg級。阿部一二三は2018年世界柔道覇者だけど、直近の直接対決2戦では丸山城志郎が勝っている。
こういう選手たちは、世界の前に『日本のライバル』との、もうひとつの戦いがあるわけだ。それだけに阿部は燃えるし、丸山も『また返り討ちに』という思いが強いな。
ほかにも男子60kg級、女子52kg級、女子78kg超級でも、日本人同士のこうした戦いが繰り広げられるね」
今回の個人戦日本代表18人のうち、リオ五輪経験者は男子3人、女子は1人のみだが……。
「むしろ男女とも過去最強のメンバーが揃った。前回の世界柔道覇者が、男女合わせて7人。そのほかのメンバーも実績を残しているだけに、最低でも、全階級でメダルは獲れる。
男子66kg級など、日本選手2人で金銀を独占しそうな階級もあって、8階級で金メダルが獲れるとみている」
度重なるルール改正で、2018年からは「有効」が廃止、ポイントは「技あり」と「一本」だけになった。篠原氏は、それを生かして「絶対に勝て!」と吼える。
「これで、以前は『有効』だったものが『技あり』と判定されることも出てくる。肩が半分しか畳につかなくても、『技あり』 だから、選手はラッキーだと思ってるやろな。
なにより、しっかり組んで技を仕掛けることが重要になるから、日本には絶対に有利!」
以下で、篠原氏が金メダルを確実視する選手たちを紹介する。
【篠原信一が「絶対金」と断言する選手たち】
●阿部一二三(22)/男子66kg級
「技のキレ、多彩さもあり、見ていて楽しい柔道をする。丸山には連敗中なので、どういった対策を練ってくるかも見どころのひとつ」(篠原、以下同)
●丸山城志郎(26)/男子66kg級
「阿部に連勝したことで、自信を深めている。おそらく決勝はこの2人の戦いで、勝ったほうが東京五輪に近づくのは間違いない」
●阿部詩(19)/女子52kg級
「女子ではいちばん期待する選手。もともと素晴らしい素質の持ち主だが、前回の世界柔道で世界王者になり、どう成長したかを見たい」
●大野将平(27)/男子73kg級
「リオ五輪も金メダルで、正直この階級では断トツ。各国は『打倒・大野』でくるでしょうが、それでも優勝は間違いないでしょう」
●新井千鶴(25)/女子70kg級
「昨年の世界柔道を制したことで、大きく成長。怪我などのアクシデントがない限り、世界柔道連覇は間違いない」
●ウルフアロン(23)/男子100kg級
「全日本選手権(無差別級)の覇者。手強い選手が多い階級ですが、いまいちばんのっている男。スタミナも抜群」
●朝比奈沙羅(22)/女子78kg超級
「身長176cmと、女子重量級では待望の高身長。得意技は『払腰』『支釣込足』と、パワー柔道が持ち味。同階級の素根輝は、好ライバル」
●芳田司(23)/女子57kg級
「世界柔道は2017年が銀、2018年が金。グランドスラムでも多くの大会で優勝している。増地克之・女子代表監督が非常に期待する1人」
●高藤直寿(26)/男子60kg級
「リオ五輪では残念ながら銅メダルに終わったが、世界柔道では三度の優勝。“天才肌” で、『巴投』『肩車』などの大技も繰り出す」
●永山竜樹(23)/男子60kg級
「若いころから高藤をライバル視し、これまで幾度も熱戦を繰り広げてきた。内股で一本勝ちした経験あり。得意技は『背負投』」
(週刊FLASH 2019年9月3日号)